【労働保険年度更新】2022年度は「同一年度内の雇用保険料率変更」に伴う概算保険料算定に注意

来週からはいよいよ6月ということで、今年も労働保険年度更新の申告時期を迎えます。労働保険年度更新は毎年のことながら、年に一度の手続きのため手順を忘れてしまいがちであったり、毎年の変更点を正しく理解しておく必要があったり等、ご担当者様であれば実務上、何かと頭を悩ませることも多いのではないでしょうか?
今号では、2022年度労働保険年度更新における留意点と、申告書の作成時のチェックポイントを確認します。

年度の上期・下期で雇用保険料率が変更!概算保険料の算定方法

2022年度の労働保険年度更新では、年度途中に雇用保険料率が変更となることを踏まえて概算保険料を算定しなければなりません。雇用保険料部分の概算を計算する際には、年度の上期(4~9月)・下期(10~翌年3月)それぞれの賃金総額見込に、各期間に適用される雇用保険料率を掛け合わせ、これらを合算した額を算出することになります。
この時、上期・下期の賃金総額見込は以下の通り検討できるものとされました。

◎ 2022年度の賃金総額の見込額が、2021年度の賃金総額と比較して、2分の1以上2倍以下の額となる場合には、2021年度の賃金総額の2分の1の額を上期・下期の賃金総額とする

これを踏まえ、概算保険料の計算例をご確認いただくと、実務上の対応がぐんと分かりやすくなります。

  • 労災保険分
    78,083千円 × 3/1,000 = 234,249円
  • 雇用保険分
    78,083千円 ÷ 2 = 39,042千円(端数切り上げ)+ 39,041千円(端数切り捨て)
    39,042千円 × 9.5/1,000 =370,899円
    39,041千円 × 13.5/1,000 =527,053.5円
    370,899円 + 527,053.5円=897,952円(端数切り捨て)
  • 労働保険料
    234,249円(労災保険分)+ 897,952円(雇用保険分)= 1,132,201円

出典:厚生労働省「令和4年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方(P1~P29)

年度更新の下準備!「確定保険料・一般拠出金 算定基礎賃金集計表」の書き方チェック項目

ここからは、労働保険年度更新におけるチェックポイントを確認しましょう。
労働保険の年度更新は、前年度保険料確定の基礎となる「算定基礎賃金集計表」の作成から始まります。賃金台帳を元に、各労働者の雇用保険被保険者資格を確認しながら集計を進めましょう。

□ 年度途中の退職者の賃金に漏れはありませんか?
□ アルバイト・パートタイマー等の臨時労働者の賃金を正しく集計に含めていますか?
→「労災保険及び一般拠出金」は常用労働者すべて、「雇用保険」は被保険者のみが対象です
□ 代表者や役員(被保険者とならない)の賃金を除いていますか
→代表者や役員報酬のみが支払われている役員は対象外です
兼務役員については、役員報酬以外の労働者としての賃金部分のみ算定賃金に含めます
□ 65歳以上の労働者の賃金を算定賃金に計上していますか?
□ 保険料算定期間中(2021年4月1日~2022年3月31日)に支払が確定した賃金を算入していますか
→実際の支払いは2022年4月1日以降となる賃金でも、2021年度中に確定したものは含みます
□ 算定基礎に含めるべき賃金の範囲は適切ですか?
→通常の賃金はもちろん、賞与や手当等、労働の対償として支払うものすべてで、税金や社会保険料等を控除する前の支払総額を含めます
休業手当は賃金に含まれ、休業補償は賃金から除きます
賃金とするもの、しないものの範囲は下記よりご確認ください

いよいよ年度更新申告書作成!書き方のポイントは?

「確定保険料・一般拠出金 算定基礎賃金集計表」を正しく作成できたら、年度更新申告書の作成に入ります。集計表から転記する内容、ご自身で算出して記入する内容それぞれについて、以下のチェックポイントをご確認ください。

□ 労働局から送られてきた申告書に印字されている内容に誤りはありませんか?
・労働保険番号
・業種番号
→「各種区分」欄の4ケタの「業種」番号の上2ケタをもとに労災保険率表で確認
・労災保険料率
→メリット制適用の場合「労災保険率決定通知書」と同じ料率
※2022年度は年度途中で雇用保険率が変更される予定のため、申告書の概算・増加概算保険料算定内訳の⑬保険料率欄には、労災保険率のみが印字されている点に注意が必要です
・申告済概算保険料額
・領収済通知書(納付書)の住所・氏名等
 事業主の氏名又は名称及び住所、事業の種類、事業の行われる場所に変更がある場合は、「労働保険名称、所在地変更届」の提出が必要になります
□ 「常時使用労働者数」(④欄)「雇用保険被保険者数」(⑤欄)を記入していますか?
→常時使用労働者数
2021年度の各月末(賃金締切日がある場合は月末直前の賃金締切日)の使用労働者数の合計÷12
→雇用保険被保険者数
2021年度の各月の被保険者数の合計÷12
※小数点以下を切り捨てた結果、「0」となる場合には「1」とします
□ 賃金総額(⑧⑫欄)は千円未満切り捨て、保険料額・拠出金額(⑩⑭欄)は一円未満切り捨てになっていますか?
□ 一般拠出金の拠出金算定基礎額(⑧(ヘ))は、労災保険の確定保険料算定基礎額(⑧(ロ))と同額になっていますか?
□ 概算保険料を延納する場合、基準額に誤りはありませんか?
→概算保険料総額が40万円以上(労災保険又は雇用保険のどちらか一方のみ成立している場合20万円以上)の場合、3回に分けて納付できます
※確定保険料の不足分と概算保険料総額を合算して40万円以上となる場合は、延納できません
概算保険料のみで40万円以上である必要があります
□ 延納の場合、申請欄(⑰)に納付回数を記入していますか?
□ 概算保険料を延納する場合、3で割った余りを第1期分に加算していますか(㉒(イ))?
□ 「法人番号」欄(㉛欄)を記入していますか(空欄の場合)?
→個人事業主は13桁すべてに「0」を記入します
□ 「事業主」欄を記入していますか?
□ 領収済通知書(納付書)の納付額の前に、「円(Yの横棒は一本)」マークを記入していますか?
→一般的な「¥」ではなく、Yの横棒は一本です
□ 申告書の内容に誤りはありませんか?
→領収済通知書の納付額の誤りは訂正できません(新しいものを入手します)
→領収済通知書以外の箇所の誤りは、訂正後の数字がわかるように訂正すれば問題ありません
訂正印は不要です

特殊なケースは要確認

なお、現在労働者を雇用していないが今後雇用予定の場合や、事業廃止の場合等、特殊なケースの申告書の書き方については、厚生労働省「令和4年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」の様式例をご参照いただくと良いでしょう。年度更新代行のご依頼は、お気軽に社会保険労務士までご相談ください。

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