感染拡大の中で迎える新学期。子育て中の労働者の両立支援に活用可能な「両立支援等助成金(育児休業等支援コース 新型コロナウイルス感染症対応特例)」

全国各所で新学期が始まっていますが、子供の新型コロナウイルス感染急増を背景に、小学校等では休校や分散登校、短縮授業、在宅オンライン授業の実施に踏み切る自治体が数多く見受けられます。こうした流れを受け、企業においては子育て中の労働者の両立支援により一層配慮することが望まれます。

助成金を活用しながら、コロナ禍の両立支援体制を整える

子の休校等に対応する保護者を対象とした助成として、現在では「両立支援等助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))」という制度があります(2021年9月2日時点)

支給額は、「所定の特別有給休暇を取得させた労働者1人あたり5万円」、1事業主につき10人まで(上限50万円)。依然として長引く新型コロナウイルス感染拡大、これに伴う労働者支援策を検討する上では、積極的に活用したい助成金です。

要件は「両立支援のための制度設計」と「労働者への特別有給休暇付与実績」

「両立支援等助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))」は、新型コロナウイルス感染症に伴う子の小学校等の臨時休校、分散登校、短縮授業、在宅オンライン授業への対応のために出勤が難しい労働者(保護者)支援として、社内制度を整備し、特別有給休暇を取得させた事業主が受けられる助成金制度です。

「社内制度の整備」として、以下のいずれも実施しなければなりません

✓ 対象となる子どもの世話を行う必要がある労働者が、特別有給休暇(賃金が全額支払われるもの)を取得できる制度の規定化。
✓ 小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組みとして、次のいずれかの社内周知。
・テレワーク勤務
・短時間勤務制度
・フレックスタイムの制度
・始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
・ベビーシッター費用補助制度 等

 
これら両立支援のための制度を整えた上で、「労働者一人につき、特別有給休暇を4時間以上取得させる」ことが必要です。

対象となるのは、原則「小学生以下の子供」

本助成金は、「コロナに伴う臨時休業等をした小学校等に通う子供」の世話をする労働者(保護者)を対象労働者としてカウントできます。

「小学校等」とは、小学校、義務教育学校の前期課程、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園等が想定されていますが、障害のある子供については「高等学校相当を卒業するまで」が対象となります。

また、「臨時休校等」の範囲には、休校だけでなく、分散登校や短縮授業、在宅オンライン授業等が幅広く対象となり得ます。ただし、いずれも「新型コロナウイルス感染症に対応するため」に行われたものである必要があります。

原則として、感染予防のために自主的に休む例は対象とされませんが、基礎疾患を有する子供等、感染に伴う重症化リスクの高い場合で学校長が欠席を認めるケースは対象とされる可能性があります。

参考:厚生労働省「両立支援等助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))をご活用ください

コロナ禍で求められる「ピンチをチャンスに」の姿勢

今号で解説した「両立支援等助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))」ですが、企業における利用の少なさが問題視されています。この点に鑑み、今後、労働者(保護者)個人が申請できる賃金補填制度の新設が検討されているようです。

こうした動きに対し、「個人申請ができるようになるなら良かった」と考え、会社として制度整備に取り組まないというのは問題です。コロナ禍の労務管理上、「あらゆる情勢を踏まえ、会社が両立支援体制を整える」というスタンスが大前提であるべきですから、これに対応できない企業は信頼を失うことになります。一方、大変な状況下にあっても労働者支援に目を向けられる企業は、確実に労働者から支持されるはずです。

ピンチの時にこそ会社の真価が問われることに鑑み、最大限、取り組めることに目を向けてまいりましょう!

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事