新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえ、2022年度労災・雇用保険料率はどう変わる?

日本においては少しずつ収束に向かっている様にも感じられる、新型コロナウイルス感染拡大。もちろん、諸外国の状況に鑑みれば依然として予断を許さない状況が続きますが、国内では徐々に明るい兆しが見え始めているようにも思えますね。

さて、今号で解説するのは、「コロナ禍における労災申請や失業等給付の影響が、2022年度の労災・雇用保険料率にもたらす変化」について。現段階では見込みにとどまりますが、確定すれば2022年4月1日から施行されます。

コロナ労災多発事業所でも、メリット制適用による労災保険料率の引き上げはなしとされる見込み

労災保険制度では、通常、連続する3保険年度の間に労災事故が多発させる等の一定要件を満たした事業者について、保険料率を引き上げる措置を講じています(メリット制※)。2022年度に適用する労災保険料率に関しては2018~2020年度の労災発生状況が加味されますが、現行のメリット制をそのまま適用することとなれば、新型コロナウイルス感染による労働災害(コロナ労災)が多発した医療機関や高齢者施設を中心に影響が生じることが予想されます

※参考:厚生労働省「労働保険のメリット制について

コロナ労災に関しては、制度改正に向けて調整中

ただし、この点に関しては、緊急事態宣言下においても政府が医療・介護事業の継続を要請していたこと、加えて医療従事者・介護従事者の労災認定に際して「業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」旨の指針を示し幅広く労災適用としていた背景にも、十分に配慮すべきとの見方があります。こうした背景を踏まえ、厚生労働省は、コロナ労災に係る保険料引き上げは妥当ではない旨の見解を示し、コロナ労災に関しては、事業者の労災保険料負担軽減を図る特例措置を講じる方向で、制度改正に向けて調整されているとのことです

コロナ禍の雇用保険財政ひっ迫に伴い、雇用保険料率は引き上げの方向性

雇用保険料率については、2022年度より労使双方に適用される「失業等給付」分、及び雇用調整助成金の原資となり企業のみが負担する「雇用保険2事業」分の引き上げが予定されています。雇用保険料引き上げの背景には、コロナ特例が講じられた雇用調整助成金の支給決定額が4兆円を超えたこと、コロナ禍の雇用情勢悪化により失業等給付の申請件数が増加したこと、これらにより雇用保険の積立金がほぼ底をついたことが挙げられます。具体的にどの程度の負担増となるかは現在未定のため、打刻ファーストからは雇用保険料率決定後に改めてお伝えしたいと思います。

2022年に予定される雇用保険料率引き上げ、社会保険適用拡大がもたらすであろう影響

2022年には雇用保険料率の引き上げと社会保険適用拡大が控えていることになりますが、これら両方の影響を受ける現場においては、人事戦略の見直しに取り組むケースも出てくると思います。その際に留意したいのが、「目先の負担増に捉われないこと」です。一般的に、雇用に伴う労働・社会保険料負担についてはかねてより経営者の頭を悩ませるテーマであり、負担増が見込まれる場合、これを抑えるためにフルタイム雇用を減らす企業が増えてくるものです。しかしながら、長期的な観点から企業成長や人材の確保・育成に目を向けるなら、あえて保険適用となる正社員、フルタイムパート等を積極的に雇用するという可能性についても前向きに検討することも重要と言えるでしょう。コロナ禍という不安定な状況下で、従業員に安定した雇用を提供できることは、企業にとっての大きなアドバンテージとなる可能性があります。

関連記事:『従業員数101名以上の企業必見!2022年10月の社会保険適用拡大に備え、一年間で準備すべきこととは?

間もなく訪れる2022年。ウィズコロナ、アフターコロナの人事戦略は、あらゆる変化の波を上手く活かしながら取り組んでまいりましょう!

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