【2021年度労働保険年度更新】2020年度からの変更点&申告書作成チェックリストを公開

5月も下旬を迎え、今年も労働保険年度更新の時期がやってきました。労働保険の適用を受ける事業場においては毎年のこととなる年度更新ですが、年度ごとに変更点があったり、久しぶりの手続きのため忘れてしまっていたりするため、改めてポイントを確認しておくと良いでしょう。
今号では、2020年度からの変更点と、申告書の作成時に確認しておきたいポイントをまとめてご紹介します。

2021年度労働保険年度更新 2020年度からの変更点をチェック

その1. 年度更新申告書が「脱ハンコ」
労務関連書類の「脱ハンコ」を盛り込んだ改正労働基準法施行規則の施行に伴い、2021年4月1日以降届出分については労働保険関係の各様式の押印欄が削除されています。これを受け、2021年度の年度更新申告書からも押印欄が削除されていますので、ご確認ください

その2. 労働保険年度更新期間は「延長なし」の原則通り
2020年度の労働保険年度更新では、新型コロナウイルス感染症の影響に鑑み、労働保険料及び一般拠出金の概算保険料及び確定保険料に係る申告書の提出及び納付が「2020年8月31日」まで延長されました。
この点、2021年度労働保険年度更新では、このような延長措置は講じられない予定です(2021年5月19日現在)。2021年度労働保険年度更新の申告納付期限は、原則通り「6月1日(火)から7月12日(月)まで」となります

その3. 保険料率は前年度据え置き
雇用保険料率、労災保険料率共に、令和2年度から変更はありません
参考:
厚生労働省「令和3年度の労災保険率について ~令和2年度から変更ありません~
厚生労働省「令和3年度の雇用保険料率

まずは確認、「確定保険料・一般拠出金 算定基礎賃金集計表」の書き方チェック項目

労働保険の年度更新は、前年度保険料確定の基礎となる「算定基礎賃金集計表」の作成から始まります。賃金台帳を元に、各労働者の雇用保険被保険者資格を確認しながら集計を進めましょう。

□ 年度途中の退職者の賃金に漏れはありませんか?

□ アルバイト・パートタイマー等の臨時労働者の賃金を正しく集計に含めていますか?
→「労災保険及び一般拠出金」は常用労働者すべて、「雇用保険」は被保険者のみが対象です

□ 代表者や役員(被保険者とならない)の賃金を除いていますか
→代表者や役員報酬のみが支払われている役員は対象外です
兼務役員については、役員報酬以外の労働者としての賃金部分のみ算定賃金に含めます
参考:厚生労働省「令和3年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方_労働保険対象者の範囲

□ 2017年1月1日から雇用保険の適用拡大対象となった65歳以上の労働者の賃金を算定賃金に計上していますか?

□ 保険料算定期間中(2020年4月1日~2021年3月 31日)に支払が確定した賃金を算入していますか
→実際の支払いは2021年4月1日以降となる賃金でも、2020年度中に確定したものは含みます

□ 算定基礎に含めるべき賃金の範囲は適切ですか?
→通常の賃金はもちろん、賞与や手当等、労働の対償として支払うものすべてで、税金や社会保険料等を控除する前の支払総額を含めます
休業手当は賃金に含まれ、休業補償は賃金から除きます

賃金とするもの、しないものの範囲は下記よりご確認ください
参考:
厚生労働省「令和3年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方_労働保険対象者賃金の範囲
打刻ファースト「【新型コロナウイルス】「休業手当」と「休業補償」の違いとは?事業主と従業員が押さえるべきポイントをそれぞれ解説

いよいよ年度更新申告書作成!書き方のポイントは?

「確定保険料・一般拠出金 算定基礎賃金集計表」を正しく作成できたら、年度更新申告書の作成に入ります。集計表から転記する内容、ご自身で算出して記入する内容それぞれについて、以下のチェックポイントをご確認ください。

□ 労働局から送られてきた申告書に印字されている内容に誤りはありませんか?
・労働保険番号
・業種番号
→「各種区分」欄の4ケタの「業種」番号の上2ケタをもとに労災保険率表で確認
・労災保険料率
→メリット制適用の場合「労災保険率決定通知書」と同じ料率
・雇用保険料率
・申告済概算保険料額
・領収済通知書(納付書)の住所・氏名等

!! 事業主の氏名又は名称及び住所、事業の種類、事業の行われる場所に変更がある場合は、「労働保険名称、所在地変更届」の提出が必要になります !!

□ 「常時使用労働者数」(④欄)「雇用保険被保険者数」(⑤欄)を記入していますか
→常時使用労働者数
2020年度の各月末(賃金締切日がある場合は月末直前の賃金締切日)の使用労働者数の合計÷12
→雇用保険被保険者数
2020年度の各月の被保険者数の合計÷12
※小数点以下を切り捨てた結果、「0」となる場合には「1」とします

□ 賃金総額(⑧⑫欄)は千円未満切り捨て、保険料額・拠出金額(⑩⑭欄)は一円未満切り捨てになっていますか

□ 一般拠出金の拠出金算定基礎額(⑧(ヘ))は、労災保険の確定保険料算定基礎額(⑧(ロ))と同額になっていますか

□ 概算保険料の保険料算定基礎額の見込み額(⑫)は、確定保険料の保険料算定基礎額(⑧)と一致していますか
→ただし、2021年度賃金総額の見込み額が以下のいずれかとなる場合には、実際の見込額を記入します
・ 前年度と比較し2倍を上回る場合
・ 2分の1を下回る場合

□ 概算保険料を延納する場合、基準額に誤りはありませんか
→概算保険料総額が40万円以上(労災保険又は雇用保険のどちらか一方のみ成立している場合20万円以上)の場合、3回に分けて納付できます
※確定保険料の不足分と概算保険料総額を合算して40万円以上となる場合は、延納できません
概算保険料のみで40万円以上である必要があります

□ 延納の場合、申請欄(⑰)に納付回数を記入していますか

□ 概算保険料を延納する場合、3で割った余りを第1期分に加算していますか(㉒(イ))

□ 「法人番号」欄(㉛欄)を記入していますか(空欄の場合)
→個人事業主は13桁すべてに「0」を記入します

□ 「事業主」欄を記入していますか

□ 領収済通知書(納付書)の納付額の前に、「円(Yの横棒は一本)」マークを記入していますか
→一般的な「¥」ではなく、Yの横棒は一本です

□ 申告書の内容に誤りはありませんか
→領収済通知書の納付額の誤りは訂正できません(新しいものを入手します)
→領収済通知書以外の箇所の誤りは、訂正後の数字がわかるように訂正すれば問題ありません
訂正印は不要です

なお、申告書の書き方については、労働者全員が雇用保険の被保険者の場合には「一段書き」にてご対応いただくよう、マニュアルに記載がありますのでご注意ください。

参考:厚生労働省「令和3年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方_申告書の書き方

2020年度概算保険料等の納付が猶予されている場合の申告書作成

2020年度に、新型コロナウイルス感染症等の影響による労働保険料等の納付に係る猶予が認められた事業場においては、2021年度労働保険年度更新申告書について以下の記載方法をご参照ください。

参考:厚生労働省「令和2年度に労働保険料等の特例猶予の許可を受けた事業主の皆様へ

昨年に引き続き、依然として長引く新型コロナウイルス感染症による影響、労働保険年度更新について「どうしても手が回らない!」「対応が難しい」という場合は、社会保険労務士にご相談ください。煩わしいお手続はすべて社労士にお任せいただき、会社が本業に専念できる環境を実現しましょう!

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