勤怠管理の一環として行う「従業員の位置情報取得」は法的に問題ない?

神奈川県迷惑行為防止条例の改正に際し、神奈川県警は、相手の承諾なくして行うGPS機器による位置情報取得や、所持物へのGPS機器を取り付け等の行為を規制対象に追加する方針を示しました。これに伴い、現状、勤怠管理の一環として従業員の位置情報取得を行っているケースにおいては、改めて運用ルールの見直しが必要となる可能性があります。

従業員の位置情報取得は「正当な理由」があれば問題なし

冒頭に挙げた神奈川県の事例に限らず、「位置情報取得」に関しては今後、幅広く規制対象となることが見込まれます。この点、従業員に対して会社が行う位置情報取得に関してはどうなのかというと、例外的に、「正当な理由」があれば認められると考えて良いでしょう。ここでいう「正当な理由」とは、具体的に、勤怠管理上の必要性、職務専念義務違反の防止、緊急時対応への備え、業務効率の改善等が想定されます。従業員側にしてみれば会社に位置情報を取得されることに肯定的なケースはあまりないかもしれませんが、かたや会社側には従業員に対して必要な管理を講じる権限があると考えるのが一般的です。

従業員の位置情報取得は「就業時間内」のみに

とはいえ、会社が無制限に従業員の位置情報を取得して良いかというと、そういうわけではありません。会社側による行き過ぎた管理や情報収集は、従業員のプライバシー侵害に該当する恐れがあります。位置情報把握等の管理を実施するにあたっては、会社として事前にルールを定めて従業員に周知し、適正に対応しなければなりません。
ルールを定める上でまず留意すべきは、就業時間外の従業員の位置情報を取得する行為は、正当な理由があるものではなく、プライバシー侵害となり得るという点です。判例でも、「早朝、深夜、休日、退職後のように、従業員に労務提供義務がない時間帯、期間において(中略)原告の居場所確認をすることは、特段の必要性のない限り許されない」として不法行為の成立が認められています(東京地判平成24年5月31日労判1056号19頁、東起行事件)。よって、会社が従業員に対して貸与する携帯電話がGPS機能を搭載していたとしても、就業時間外は携帯電話の電源を切らせるにする等の対応が必要となるでしょう。

位置情報取得に際して「目的」を明らかにする

併せて、会社が従業員の位置情報を取得する場合、従業員に対してはその目的や範囲を事前によく説明しておくことが大切です。正当な理由があるとはいえ、会社が当たり前に従業員の居場所を把握することに対して、抵抗感や不信感、反発心を抱く従業員は少なからずいます。労使間の信頼関係や従業員の士気にも関わりますので、各人から理解を得るための十分な説明は不可欠と言えるでしょう。

位置情報取得が可能な場合、「事業場外労働のみなし労働時間制」の適用外となる可能性があります

HRMOS勤怠 by IEYASUでも、打刻位置情報を取得する設定が可能です。この機能は主に、外回りが中心の従業員や直行直帰時の勤怠管理に対応するためのものですが、設定に先立ち、該当従業員に対してはあらかじめ説明しておくことは必須です。

関連:HRMOS勤怠 by IEYASU FAQ「Q. 打刻位置情報を取得する設定方法は?

なお、社外で業務に従事する従業員に対しては「事業場外みなし労働時間制」を適用し、細かな勤怠管理が行われていないケースを散見しますが、携帯電話に搭載されているGPS機能や勤怠管理システム等で位置確認やその時間を確認できる場合はみなし労働時間制の適用が困難となる点に注意が必要です。

関連記事:『その運用、違法かも!実は適用困難な「事業場外みなし労働時間制」の要件とは?

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