自社の働き方改革を推進する中で、新たな労働時間制として裁量労働制を導入した、もしくは導入を検討中の会社も多いと思います。ところがこの裁量労働制、適切に運用されず未払残業代発生の温床と化している例が後を絶ちません。
働き方の改善のために導入した裁量労働制によって、むしろ労務リスクを抱えることになっては本末転倒。今一度、裁量労働制について正しく理解しましょう!
「裁量労働制で残業代削減」が難しい3つの理由
会社が裁量労働制を導入する目的の一つに、「残業代削減」があると思います。仕事のやり方を労働者個々の裁量に委ねることで業務効率化が図られ、結果として時間外労働の減少を狙えるというのが、裁量労働制本来の意図するところです。裁量労働制は、働いた時間に関係なく、あらかじめ取り決めた時間数労働したものとみなす制度ですから、労働者自身が前向きに業務改善を図ろうという動機づけにつながりやすいのです。
しかしながら、裁量労働制は制度自体が複雑であることから、現場においてはいつの間にか、「裁量労働制を導入すれば残業代を支払わなくても済む」と読み替えられてしまう例は決して少なくありません。裁量労働制が適切に導入されているかどうかのチェックポイントは、以前の記事よりご確認ください。
参考:打刻ファースト「【裁量労働制】正しく適用できていますか?見極めるために知っておきたいポイント5選」
裁量労働制は、労働者に対して、無条件に残業代を支払わなくても良くなる制度ではありません。
「裁量労働制=残業代削減」とはいかない3つの理由
✓ 裁量労働制によるみなし労働時間数が1日8時間を超える場合、もしくは休日労働、深夜労働が行われた場合には、残業代の支払いが必要
=「裁量労働制だから残業代支払不要」は誤解!
✓ そもそも対象業務が限定されているので、どんな労働者にも適用できるわけではない
=裁量労働制の効果(業務効率化=残業代抑制)が期待できるのは、一部の労働者のみ!
✓ 裁量労働制であっても勤怠管理が必須 =残業代算出の根拠は必ず残ります!
「休日や深夜にも就労実態があったが、今まで残業代を支払っていなかった」「勤怠管理なんてしていなかった」等の困った事例、意外と多いのではないでしょうか?放置しておけば、問題はますます拡大していくばかりです。社会保険労務士に相談の上、早急に軌道修正を図りましょう!
裁量労働制は「残業代支払い前提」が基本
裁量労働制を適正に運用する場合、固定残業代とセットで導入されるケースが大半です。そもそも裁量労働制の対象となる業務が、高度な専門性を伴うもの、会社全体の経営に関わるものに限定されていますから、労働者は実態として「1日8時間」の枠にとらわれず、相応の労働時間業務に従事しているでしょう。こうした状況を鑑みれば、業務遂行に必要な労働時間を検討し、恒常的に生じることとなる残業代については、固定額を毎月の給与に含めるやり方が合理的であるといえます。
この場合、「業務遂行に必要な労働時間を適正に見積もること」「割増賃金の時間単価を正しく設定すること」「休日・深夜労働については別途割増賃金を支払うこと」について、留意する必要があります。
裁量労働制にも「適切な勤怠管理」を
裁量労働制に関しては、「働き方を労働者の裁量に委ねる制度だから、そもそも勤怠管理は必要ない」と誤解されがちです。ところがすでに触れたとおり、適切な勤怠管理は、裁量労働制の対象者についても行わなければなりません。
第一に、労働者に対して「健康・福祉確保措置」を講じることは使用者の責任であり、これは裁量労働制の対象者についても例外ではありません。裁量労働制導入時の労使協定では、必ず「対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容」について規定することになっているので、その一環として「労働時間の把握」が必須であることは明らかです。
また、「休日・深夜労働については別途割増賃金を支払う」「労使協定で取り決めたみなし労働時間数と実態が乖離していないかに配慮する」等の必要があることから、使用者は常に適切な勤怠管理を講じなければなりません。
つまり、適切な勤怠管理は、裁量労働制の導入・運用においても“大前提”といえるのです。
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