【あなたは理解できてますか?】一度は確認しておきたい労働安全衛生法、その全容まとめ

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法は、その名の通り、労働者の安全や衛生を守るために定められた法律です。

使用者と労働者はお互い雇用契約関係にあるわけですが、労働者は労働を提供する義務、使用者は賃金を支払う義務を負っているというのが雇用契約の最も基本的な部分です。
しかし、使用者は労働者に賃金を支払えばどのように働かせてもよいということではありません。使用者は「労働者を安全かつ健康に配慮して労働に従事させる」という義務を雇用契約に際して付随的に負っていると法的には考えられています。

たとえば、「機械の整備をしっかり行って誤作動による怪我がないようにする」「落下の危険性がある場所には柵を設ける」「定期的に健康診断を実施する」「長時間労働による疲労を蓄積させないようにする」「パワハラやセクハラによる精神疾患を発生させないようにする」といったように、使用者は幅広い安全配慮義務を負っています。

そういった使用者の安全配慮義務の基本的な部分を定めた法律が労働安全衛生法なのです。

労働安全衛生法には何が定められているのか

労働安全衛生法の具体的内容に関しては、あまり知られていないかもしれません。
そこで、本稿では労働安全衛生法の章立てに沿って、各章で定められている内容を簡単にご紹介したいと思います。

第1章:総則(第1条~第5条)

労働安全衛生法は労働者の安全や健康を確保することを目的に定められたことや、それを実現するための責務を使用者は負っているのだということが記されています。学問的には掘り下げて考えなければならない重要な章ですが、実務上はここに書かれている理念をしっかり理解しておけば良いと思います。

第2章:労働災害防止計画(第6条~第9条)

厚生労働大臣は労働災害の防止のために必要な計画を策定し、それを公表および実施することを定めています。この章は行政側が行うべきことを定めた内容ですので、実務上は知識として知っておけば足りると思います。

第3章:安全衛生管理体制(第10条~第19条の3)

この章からが実務上も重要になってきます。

安全衛生管理体制とは、労働者50人以上が所属する事業所ごとに安全管理者や衛生管理者を選任する、安全衛生委員会を開催して事業所の安全や衛生について討議する、産業医を選任するといったよう、労働者の安全や健康を確保するために会社がつくらなければならない体制のことです。

業種や事業規模によって、選任しなければならない安全管理者、衛生管理者、産業医の人数や、その他の細かい要件も異なっていますので、どのような会社がどのような体制をつくらなければならないのかが労働安全衛生規則と一体となって細かく定められています。
なお、建設業においては、多重の請負構造があることに鑑み、独自の安全衛生管理体制が定められています

第4章:労働者の危険又は健康障害を防止するための措置(第20条~第36条)

この章では、業種や作業内容ごとに危険や健康障害を防止するために使用者等が行わなければならないことが定められています。

危険物を扱う場合、高温または低温の場所で作業を行う場合、重量物を扱う場合のルールが定められていますので、職種がデスクワークのみの会社の場合は、直接は関係のない項目と考えて良いかと思います。

第5章:機械等及び有害物に関する規制(第37条~第58条)

ボイラー、クレーン、デリックなど危険性の高い機械、あるいは、黄りんマッチ、ベンジジン、ベンゼンなどの有害物を扱う場合の検査・届出・許可などの基準について定められています。

この章の内容も、上記のような機械や物質を扱う業種に限られますので、デスクワーク中心の会社の場合は直接的には関係しないと考えられます。

第6章:労働者の就業に当たつての措置(第59条~第63条)

この章の内容は程度の差はありますが、全ての業種に関係します

労働者を新たに雇い入れたときや作業内容を変更したときは、業種を問わず安全や衛生のための教育を行わなければならないことが定められています。

デスクワークの場合も、目の疲れ、腰痛などへの注意や、事務所内の危険な場所などについての教育が必要になります。
上記に加え、危険な業務や有害な業務に従事する労働者については、更に厳しい教育の義務が定められています。

第7章:健康の保持増進のための措置(第64条~第71条)

この章の定めは非常に重要です。入社時の健康診断や、1年毎の定期健康診断の実施義務について定められています。

健康診断を行った後のアフターフォローや書類の保管、労働基準監督署への届出(50名以上の場合)についても定められています。
ストレスチェックの実施義務についても本章の中に定められています。

第7章の2:快適な職場環境の形成のための措置(第71条の2~第71条の4)

この章においては、努力義務になりますが、快適な職場環境を形成するために、使用者は職場環境や業務手順の維持改善を図ったり、労働者の疲労を回復させるための福利厚生施設や設備を導入することが望ましい旨が定められています。

具体的な義務を定めた章ではないですが、昨今の採用難の時代においては従業員満足度の向上も重要な施策の1つですから、努力義務とはいえ、積極的に検討をしていくべき内容でしょう。

第8章:免許等(第72条~第77条)

労働安全衛生法で定められている免許等に関する詳細や試験の実施方法などについて定めています。事業主に直接関係する内容はほとんどないと思います。

第9章:安全衛生改善計画等(第78条~第87条)

重大な労働災害を発生させた事業主に対する再発防止のための計画や、重大な労働災害を発生させる恐れがある事業主に対してそれを未然に防ぐための計画を作成することを、厚生労働大臣が命ずることができる旨が定められています。

また、上記のような計画の作成の支援等を行うことができる労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントの資格要件についても定めています。

第10章:監督等(第88条~第100条)

労働安全衛生法の実効性を担保するための行政側の監督体制について定めています。

第11章:雑則(第101条~第115条)

掲示や書類の保管義務など、細々としたことを定めています。

第12章:罰則(第115条の2~第123条)

労働安全衛生法に違反した場合の罰則について定められています。たとえば産業医の選任を怠ったり、定期健康診断を実施しなかったりした場合には50万円以下の罰金となります。

労働安全衛生法のポイント

デスクワークを含めたすべての業種の会社に影響があり、一般的な意味で重要度が高いのは、第3章「安全衛生管理体制」と第7章「健康の保持増進のための措置」と考えられます。

次回の記事では、この2章の内容について掘り下げ、詳しく説明をしていきたいと思います。
今回の記事では、その前提として、労働安全衛生法の全体像についてイメージを持っていただけたならば幸いです。

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そして、その勤怠管理を整えるのと同時に、本稿のような「労働安全衛生」についても積極的に取り組み環境改善に勤めることが大切です。

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