人材開発支援助成金に新設された「人への投資促進コース」!今後活用が進みそうな「定額制訓練」とは?

前号で解説した通り、2022年4月、人材開発支援助成金に新たなコース「人への投資促進コース」が設けられ、注目を集めています。今号では、「人への投資促進コース」として設置された5コースの概要を確認すると共に、すでに私たちの生活に深く浸透する「サブスクリプションサービス」による職業訓練・研修を幅広く助成対象とする「定額制訓練」について解説しましょう。

人材開発支援助成金「人への投資促進コース」に設置された全5コースの概要

「人への投資」は、昨年末より、岸田首相が施政方針の中で一貫して強調してきたテーマです。具体的な方針として「人への投資を抜本的に強化するため、3年間で、4000億円の施策パッケージを提供すること」「デジタルなど成長分野への労働移動の円滑化、人材育成」が掲げられ、これを加速化する取り組みの一環として国民から幅広く意見を募っていました。このたび人材開発支援助成金に新設された「人への投資促進コース」の各助成対象となる取組みは、まさに国民から寄せられた需要を反映した訓練コースといえます

「人への投資促進コース」として助成金対象となる訓練は、以下の5コースです。

デジタル人材・高度人材の育成

① 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
高度デジタル人材の育成のための訓練や、海外を含む大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成
※ ITSS(ITスキル標準)レベル4・3となる訓練または大学への入学(情報工学・情報科学)

② 情報技術分野認定実習併用職業訓練
IT分野未経験者の即戦力化のための訓練を実施する事業主に対する助成
※ OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練

労働者の自発的な能力開発の促進

③ 長期教育訓練休暇等制度
働きながら訓練を受講するための長期休暇制度や短時間勤務等制度(所定労働時間の短縮及び所定外労働時間の免除)を導入する事業主への助成の拡充(長期休暇制度の賃金助成の人数制限の撤廃等)

④ 自発的職業能力開発訓練
労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主に対する助成

柔軟な訓練形態の助成対象化

⑤ 定額制訓練
労働者の多様な訓練の選択・実施を可能とする「定額制訓練」(サブスクリプション型の研修サービス)を利用する事業主に対する助成

各コースの詳細については、以下の参考URLよりご確認いただけます。従来の雇用関係助成金にはなかった取り組みへの助成が盛り込まれており、今後、現場における活用が期待されます。

参考:厚生労働省「令和4年度版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版

サブスクリプション型の研修サービスを対象とした「定額制訓練」

前述の5コースの中でも、個人的に特に注目しているのが「定額制訓練」です。従来の助成金制度では認められなかった、柔軟な実施形態の職業訓練・研修が助成金対象の取り組みとなることで、企業においては現実的に助成金活用を進めていきやすくなるのではないかと思います。

どんな訓練が対象となるの?

定額制訓練では、定額受け放題研修サービス(サブスクリプション)を助成対象としています

定額受け放題研修サービス(サブスクリプション)とは・・・

1訓練当たりの対象経費が明確でなく、同額で複数の訓練を受けられるeラーニングで実施されるサービスのこと。ここでいう「eラーニング」は、コンピュータなど情報通信技術を活用した遠隔講習であって、訓練の受講管理のためのシステム(LearningManagement System.「LMS」)により、受講者および支給対象事業主に雇用される訓練担当者との双方により訓練の進捗管理が行えるものをいいます。

対象訓練となる要件

定額制訓練の助成を受けるためには、以下の要件を満たす訓練を選択・実施が必要です。

✓ 定額制サービスによる訓練であること
✓ 業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること
✓ OFF-JTであって、「事業外訓練」に該当する内容であること
✓ 各支給対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であること
✓ 受講を修了した教育訓練が一の職務関連訓練でないこと(事業所全体で複数の異なる職務関連訓練の受講を修了すること)

要件の3項目に挙げた「事業外訓練」とは、OFF-JTであって公共の職業能力開発施設、学校教育法上の教育機関、各種学校、専修学校、認定職業訓練施設、他の事業主団体等が企画し主催している訓練を指します。前号でも触れたとおり、以下の施設については対象から除外されます。

・ 申請事業主(取締役含む)の3親等以内の親族が設置する施設
・ 申請事業主の取締役・雇用する労働者が設置する施設
・ グループ事業主が設置する施設で、不特定の者を対象とせずに訓練を実施する施設
・ 申請事業主が設置する別法人の施設
・ 申請事業主の代表取締役が個人事業主として設置する施設

この他、インターネット上で、広く国民にサービスを提供していない施設や訓練は、支給対象外になることがあるため注意が必要です。
要件の4項目に挙げた「受講時間数」について、合計に含めることができる時間数は、計画時に提出する「訓練別の対象者一覧(様式第4号)」に記載されている者であって、その修了した訓練の時間数の合計が1時間以上の者が実施した訓練に限ります。また、趣味教養に関わる内容の訓練は対象とならず、「職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練(職務関連訓練)」に限られます。
受講時間数は、実際の動画の視聴等の時間ではなく、標準学習時間(訓練を習得するため通常必要な時間として、あらかじめ受講案内等によって定められている時間)により時間数をカウントする点にも注意が必要です。

定額制訓練の助成額

定額制訓練の助成額は、中小企業で「45%(生産性要件を満たした場合+15%)」、大企業で「30%(生産性要件を満たした場合+15%)」となります。
ただし、受講者1人あたりの経費助成の限度額、及びの支給回数の制限は設定されておらず、サービスの「基本料金」と、次に挙げる訓練に直接要する「オプション経費」を支給対象経費とします。

・ 初期設定費用
・ アカウント料
・ 管理者ID付与料金
・ 修了証の発行
・ IPアドレス制限機能
・ データ容量追加料金
・ LMSの管理者研修

注目の新設助成金の活用に目を向けましょう

その他、「定額制訓練」の助成を受けるための申請手続きの流れや申請書類、サービス契約時の注意点、よくある質問等、詳細はパンフレットをご確認ください。

参考:厚生労働省「令和4年度版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版

新設された人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の活用を検討されているなら、社会保険労務士にご相談ください。現場ではなかなか難しい新設助成金への対応も、スムーズに進みます!

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