
年次有給休暇は「日」単位での取得が原則ですが、労使協定の締結により、年5日の範囲で時間単位での取得が可能となっています。この「時間単位年休」の取得上限について、2025年度中にも制度見直しが予定されていることをご存知でしょうか?現状、時間単位年休を導入している現場においては、見直しの動向を正しく把握すると共に、運用状況について改めて確認をしておきましょう。
目次
時間単位年休「年5日」の上限が見直しへ
年次有給休暇とは、本来、労働者がまとまった日数の休暇を取得するために創設された制度です。しかしながら、日本における取得率の伸び悩みを踏まえ、年次有給休暇のより柔軟かつ有効的な活用を可能にすることを目的に制度見直しが行われ、2010年4月の改正労働基準法施行のタイミングで導入されたのが「時間単位年休」でした。
時間単位年休上限見直しの背景
冒頭の通り、時間単位年休の取得上限は、現状「年5日以内」となっています。この「年5日」というのは、年次有給休暇の本来の目的である「まとまった日数の休暇取得」を阻害しないように定められた上限です。ところが、労働者によっては、通院や育児等のために必要な時に時間単位で有休を取得したいにも関わらず、「年5日」の上限を超える場合には1日又は半日単位で年次有給休暇を取得せざるを得ないといった不都合が生じるため、より柔軟な適用を希望する声が上がっていました。こうした実情を踏まえ、時間単位年休の取得上限について改めて検討がなされていました。
時間単位年休の上限見直し案「付与日数の50%程度への緩和」
政府の規制改革推進会議が公表した2024年12月25日の中間答申には、「厚生労働省は、引き続き年次有給休暇本来の趣旨を踏まえつつも、時間単位年休制度の活用実態も踏まえ、時間単位年休の上限を、例えば年次有給休暇の付与日数の50%程度に緩和することなどの見直しの要否も含め、労働政策審議会にて検討を開始し結論を得る。」と明記されました。こちらについては「令和7年度結論」となっており、今後の動向に注目が集まります。
参考:内閣府「規制改革推進に関する中間答申(令和6年12月25日)」
正しく導入・運用できていますか?時間単位年休
時間単位年休の上限については、引き続き改正に向けた検討がなされますが、少なくとも何らかの形で上限が残ることは明らかであり、企業側の有休取得管理は不可欠であることが分かります。現状、時間単位年休を導入している現場においては、正しく制度を運用できているでしょうか?この機会に、今一度、時間単位年休の制度適用状況について確認をされてみることをお勧めします。
時間単位年休の導入には、「労使協定の締結」「就業規則への規定」が必要
時間単位年休の導入には、労使協定の締結、就業規則を作成している事業場であれば就業規則への規定が必要です。労使協定に定める内容は以下の通りです。
① 時間単位年休の対象者の範囲
対象となる労働者の範囲を定めます。仮に、一部の者を対象外とする場合には、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。
② 時間単位年休の日数
1年5日以内の範囲で定めます。
③ 時間単位年休の1日分の時間数
1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。
1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてください。
(例)所定労働時間が1日7時間 30 分の場合は8時間となります。
④ 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数
2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定めます。
就業規則の規定例に関しては、厚生労働省のモデル就業規則を参考にされると良いでしょう。
参考:
厚生労働省「モデル就業規則について」
厚生労働省「年次有給休暇の時間単位付与」
時間単位年休の取得管理に、「有休管理簿の作成」を
2019年4月以降、企業には「年5日の有休取得義務」と併せて、「年次有給休暇管理簿」の作成・保存義務が課せられています。使用者は、労働者による請求、計画的付与、もしくは使用者による時季指定により年次有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書面を作成し、3年間保存しなければなりません。
時間単位年休導入企業においては、「従業員の有休取得状況を管理しておらず、うっかり上限を超えていた」ということの無い様、くれぐれもご注意ください。
関連記事:「労務管理の基本!「法定4帳簿」を整えましょう」
時間単位年休の活用と適切な制度導入・運用を
今号では、「時間単位年休」をテーマに、制度見直しの動向と導入・運用時のポイントを解説しました。これまで低迷状態にあった年次有給休暇の取得率ですが、2023年の取得率は65.3%と過去最高を記録する等、企業における時間単位の年次有給休暇制度導入率は右肩上がりで推移しています。政府は2028年までに年次有給休暇取得率70%の目標を掲げていることから、現場においてはより柔軟な形での有休取得が可能となるような制度導入が目指されます。時間単位年休については、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の成果目標の1つにも指定されていることから、導入に踏み切った(もしくは今後導入を予定している)企業も多いのではないでしょうか?
現場に新しい制度を導入し、運用する上では、適切な形での管理が不可欠です。時間単位年休の導入・運用なら、ハーモス勤怠のご活用がお勧めです。簡単な初期設定のみで、残日数管理・申請・付与がすべて実現します。2025年は、御社の有休取得率と業務効率をぐんと向上させましょう!