かねてより検討が進められていた「一般事業主行動計画の策定・変更の仕組み」の改正を盛り込んだ改正次世代育成支援対策推進法施行規則が、2025年4月1日より適用となります。「一般事業主行動計画の策定・変更の仕組み」の見直しについてはすでに打刻ファーストの別記事でも解説しておりますが、今号では2025年度改正の内容を改めて確認することにしましょう。
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目次
一般事業主行動計画の策定・変更時の「数値目標設定項目の追加」と「PDCAサイクルの徹底」
一般事業主行動計画とは、企業が従業員の仕事と子育ての両立を実現するための雇用環境整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備等に取り組むための行動指針です。計画では、期間や数値目標、目標達成のための取り組みやそれぞれの実施時期を定めることとし、現状、従業員101人以上の企業に行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。
2025年度以降の一般事業主行動計画の策定・変更に係る変更点をまとめます。
出典:厚生労働省「第67回労働政策審議会雇用環境・均等分科会_(参考資料1-3) 仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について(建議) 概要」
① 直近の事業年度における仕事と育児の両立に関する状況について、把握義務事項が追加
現状、一般事業主行動計画の策定・変更時に把握義務のある事項は「自社の女性の活躍に関する状況」のみですが、これと併せて2025年度以降は以下に関わる把握も義務化されます。
○ 男性労働者の「育児休業等(※1)取得率」又は男性労働者の「育児休業等及び育児目的休暇(※2)の取得率」の状況
※1 育児介護休業法に基づく、育児休業に関する制度に準ずる措置が講じられた場合の当該措置によりする休業を指す
※2 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性労働者を雇用する一般事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度(育児休業等及び子の看護等休暇を除く。)をいう
○ フルタイム労働者一人当たりの各月ごとの時間外労働及び休日労働の合計時間数等の労働時間(高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者にあっては、健康管理時間)の状況
② 把握義務事項について、適切な方法による分析の実施と数値目標の設定が義務化
一般事業主は、前項に係る状況の把握・分析と、これを踏まえた課題抽出・対策検討に際し、PDCAサイクルを導入・実施した上で、数値目標の設定に取り組むこととされます。PDCAサイクルとは、計画(Plan)、実⾏(Do)、評価(Check)、改善(Action)を主軸としたフレームワークのことで、この循環を繰り返すことで段階的な業務改善が期待できます。
③ 一般事業主行動計画策定指針の見直し
上記①②の他、一般事業主行動計画策定指針が見直され、行動計画に盛り込むことが望ましいとされる以下の事項が具体的に示されます。
- 両立支援制度利用時の業務の分担や業務の代替要員確保に関する企業の方針
- 育休後に復帰するポジションに関する納得感の向上に向けた取組に関すること
- 育児休業取得者や短時間勤務制度利用者、その周囲の労働者に対するマネジメントや評価に関すること
- 育児に必要な時間帯や勤務地に対する配慮に関すること
- 育児中の労働者や育休中の労働者の業務を代替する労働者の心身の健康への配慮(勤務間インターバルの確保
に関することを含む)
参考:厚生労働省「次世代育成支援対策推進法施行規則の一部を改正する省令案について(概要)」
一般事業主行動計画の策定・変更の仕組み見直しにより、より実態に則した目標・取り組みの検討が可能に
2025年度以降の新たな一般事業主行動計画策定・変更の仕組みへの対応は、企業のご担当者様にとっては悩みのタネと感じられるケースもあるのではないでしょうか。しかしながら、より幅広い項目からの状況把握とPDCAサイクルの徹底は、行動計画の目的である現状分析と課題の抽出、対応策の検討に大いに貢献してくれるはずです。御社の両立支援体制の確立や、あらゆる人にとって働きやすい職場環境の実現に向けて、有意義な取り組みにしてまいりましょう。「どうすれば良いか分からない」という場合は、厚生労働省「一般事業主行動計画の策定・届出等について」を参考にしましょう。あらゆる状況を想定したモデル行動計画が大変参考になります。より御社に則した行動計画の策定には、労務管理の専門家である社会保険労務士にご相談いただくのもお勧めです。