36協定の更新忘れに要注意!有効期限が3月末日なら2月中の更新準備を

数ある労使協定の中でも、「時間外・休日労働に関する協定届(以下「36協定」)」はおそらく大半の企業が締結・届出をしている協定届でしょう。しかしながら、この労使協定には有効期間があり、定期に更新の必要があるため、「一度締結をすれば安心」というものではありません。多くの会社が、4月から翌年3月を有効期間とする一年更新としているため、2月を迎え、そろそろ更新の準備が必要になってくる時期です。御社では、ご対応いただいているでしょうか?

法定労働時間超、もしくは休日の労働がある場合、会社規模にかかわらず締結必須

36協定とは、法定労働時間(原則「1日8時間、1週40時間」)を超えて、又は休日に従業員を働かせる事業所において、時間外・休日労働が生じる業務範囲や従事する労働者数、発生する時間外労働時間数、休日労働の頻度等を所轄労働基準監督署長に届け出るものです。法定労働時間超や休日における労働は、原則として労働基準法違反となりますが、36協定で届け出る範囲においては、罰則の適用から外しましょうという趣旨の協定です。
ここでは、36協定との締結にあたり、注意すべき点をいくつか挙げておくことにいたしましょう。

参照:東京労働局「時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)

複数の事業所がある場合、それぞれの事業所で締結・届出の必要あり

36協定届は、事業所単位での締結・届出が必要です。よって、支店や営業所等を有する場合には、それぞれの場所で所轄労働基準監督署への届出が必要になります。ただし、本社と各事業所で協定の内容が同一の場合、例外的に本社一括で届け出をすることも可能です。以下のリーフレットにて本社一括届出の概要を確認し、対象となる場合には業務効率化にお役立てください。

参照:厚生労働省「就業規則・36協定の本社一括届出について

「時間外労働の上限規制」により、特別条項付36協定にも上限設定あり

36協定を締結したとしても、無制限に時間外・休日労働が可能となるわけではありません。事業場の時間外・休日労働の想定は、厚生労働大臣の告示(限度基準告示)が定める労働時間延長の限度の範囲で検討しなければならず、原則として「月45時間・年360時間」を超えることはできないとされています。ただし、この上限には特例措置があります。臨時かつ特別な事情により、やむを得ず上限を超えた時間外労働の延長が見込まれる場合、あらかじめ「特別条項付36協定」を締結することができます。しかしながら、臨時かつ特別な事情がある場合でも、以下の「時間外労働の上限規制」の要件を満たすことが大前提となります。
時間外労働が年720時間以内
時間外労働と休⽇労働の合計が月100時間未満
時間外労働と休⽇労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」
「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1月当たり80時間以内

時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度

出典:厚生労働省「 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

従業員代表者の選出が不適正であれば、協定は無効

36協定を締結していても、締結の方法に不備があればその協定は無効となります。例えば、適正な手順によって選出された従業員代表者との間で締結した協定であることが必要です。従業員代表者となることができる者は、以下の要件を満たさなければなりません。
✓ 労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと
✓ 使用者の意向に基づき選出された者でないこと
しばしば「使用者が従業員代表者を決定してしまう」といった例を散見しますが、こうした選出方法では従業員代表者とは言えません。投票(無記名、秘密投票)や挙手・起立・回覧などによる信任等の民主的な方法により、適正に選出しましょう。

関連記事:「不適正な36協定で書類送検!今一度見直したい、従業員代表選出ルールと時間外・休日労働の実態

36協定届が協定書を兼ねる場合は、従来通り、押印・署名が必要

現在、36協定届では「押印・署名廃止」が認められていますが、これは36協定届とは別に、「協定書を作成し、労使協定を締結している場合」の取扱いであり、実際には多くのケースで依然として36協定届への押印・署名が必要です。
36協定の届出とは本来、労働者代表と使用者で合意の上で36協定(労使協定)を締結し、協定書(労使協定)の内容を36協定届(様式第9号等)に記入して労基署に届け出るものです。この場合、協定書にて押印・署名がされているので、重複して協定届にも押印・署名をする必要はありません。ただし、実務上、別途協定書を作っておらず、協定届が協定書を兼ねる形で対応している場合、労基署に届け出る36協定届に押印・署名が必要です。今回の法改正ではあくまで「行政への届出書類に関わる押印・署名の廃止」が認められたのであって、労使協定そのものに対する押印・署名は廃止対象外となっているためです。

関連記事:「【2021年4月】またまた、36協定届が変わります!ポイントは「押印・署名廃止」「労働者代表に関わる適格性の確認」

36協定の有効期間は「1年間」が望ましい

冒頭にて「36協定には有効期間がある」と申しましたが、その有効期間はどう設定するのが適切なのでしょうか?この点、東京労働局「時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引」によると、以下の通り記載されています。

36 協定の有効期間については、時間外労働の協定においては必ず1年間についての延長時間を定めなければならないことから、短い場合でも1年間となります。また、定期的に見直しを行う必要が考えられることから、有効期間は1年とするのが望ましいものです。

業務上、私が関与させていただいている事業場では、有効期間が「4月1日より一年間」とされているケースです。このような現場では3月末日が有効期間ですので、年度末に間に合うよう、忘れずに更新をしましょう。なお、会社によっては、労使協定上、この36協定を自動更新とする旨を定めている場合もあるでしょうが、その場合にも「労使双方から異議の申し出がなかった事実を証明する書類」の提出が必要になりますのでご留意ください。

参考:東京労働局「時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引

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