どうする?マスクを着用しない従業員に対する会社対応

新型コロナウイルス感染防止対策として、今や当たり前となっている「マスク着用」。一歩外に出れば、大人から子供までほとんどの人がマスクを着用していますが、ごくたまに、マスクを着用せずに街を歩いていたり、公共交通機関を利用したりする方を見かけることがあります。マスク未着用者に対する感じ方は人それぞれかと思いますが、不安・不快に感じるという方も多いのではないでしょうか。

「マスク着用・未着用」を従業員に委ねていませんか?

「マスクをつける・つけない」の問題は、日常のあらゆる場所で想定され、職場においても例外ではありません。職場といえば、多くの方にとって一日の大半を過ごす場所ですから、なるべく快適な場であって欲しいもの。ところが、ひとたびマスク着用・未着用を巡る見解の相違が生じれば、いずれの立場の労働者にとってもストレスとなるでしょう。マスク問題にまつわる職場トラブルを解決するためには、「会社が明確にコロナ対策の方針を定め、従業員に周知徹底すること」が肝心です

安全配慮義務の観点から、職場でのマスク着用は原則として必要

職場において、従業員にマスクを着用を求めるか否かについて、会社としての考え方を分かりやすく従業員に伝えているでしょうか?また、マスク着用を始めとするコロナ対策全般について、会社が方針を示しているでしょうか?コロナ対策に対する考え方は、従業員各人で異なります。よって、取り組みを従業員に委ねるような会社の姿勢は望ましいものとは言えません。早急に、会社としてのコロナ対策指針を検討しましょう。

職場でのマスク着用の有無を巡る問題について、会社は安全配慮義務の観点から、従業員に対するマスク着用の指示が可能と考えることができます。新型コロナウイルス感染症拡大防止するためにマスクを着用することは、厚生労働省を始めとする行政機関から一般的に要請されていることであり、感染症対策が事業活動の円滑な遂行にも繋がるといった側面もあることから、従業員に対するマスク着用指示には合理的な理由があると言えるからです。

ただし、熱中症対策を目的とする場合など、周囲の人と距離を確保できることを前提として、マスクを外すことが推奨されるケースもあります。御社の業務内容や作業環境に応じて、ある程度柔軟に方針を定められると良いでしょう。

マスク未着用者への配慮も忘れずに

職場でマスクを着用しない人がいると、従業員から「あの人にマスクを着用させてほしい」「会社から注意してほしい」等の要望が挙がるでしょう。会社は、前述の安全配慮義務の観点から、従業員に対し、勤務中のマスク着用を促すことになりますが、同時に「なぜマスクを着用しないのか」にも目を向ける必要があります。

社労士あてに寄せられる労働相談では、「マスク未着用者に対する不安感」「マスク未着用者に適正な指導をしない会社への不信感」といった事項が多くを占める中、マスク未着用者側から「会社にマスク着用を強要された」等の相反するお声を耳にすることもあります。後者においては、よくよくお話を伺ってみると「金銭的に余裕がなく、消耗品であるマスクの購入が難しい」「感覚過敏のためにマスクを着け続けることができない」といった、やむを得ないご事情を抱えるケースも少なくありません。もちろん、個人的に「コロナ対策にマスクなど無意味だ」と強く思われている方もいらっしゃいます。会社側から一方的に、「マスクを着用しなさい」「マスクを着用できないなら懲戒処分にする、解雇する」と言い放つことは不当な取扱いとなり得る他、労使紛争の火種ともなります。安心安全な職場環境の整備については、常に労使間で十分に話し合って取り組んでいくのが大原則であり、慎重な対応が求められます。

十分な話し合いを通じて、マスク未着用者への対応を検討しましょう

まずは従業員に対し、「なぜマスクを着用しないのか」をよく聞き取ります。そして、その理由に則した対処法を前向きに検討しましょう

マスクの購入が困難というのであれば、会社がマスク着用を指示する以上、職場にマスクを常備して誰もが着用できるような体制を整えておかなければならないでしょう。

また、感覚過敏やその他の症状・病気、もしくは個人的な心情によってどうしてもマスク着用が難しい場合には、テレワークで業務対応をさせる、席の配置を変更して人と距離をとる、業務内容を調整する等の対応が考えられます。もちろん、こうした対応について会社が一方的に命令するのではなく、マスク未着用者に対する他の従業員や取引先、顧客の感情を理解してもらうとともに、会社として安全配慮義務を担っていることにも触れながら、労使がしっかりと話し合いを重ね、双方にとって納得のいく落としどころを見出せるように努めます。

やむを得ず、マスク未着用の従業員の就業を拒否することとなる場合、会社には休業手当の支払いの可能性が生じます。このあたりは、休業命令に至った経緯が、労基法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」と照らし合わせてどう判断されるべきなのか等を中心に、専門家を交えて適切な取り扱いを検討する必要があります。

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