【同一労働同一賃金】どうする?派遣労働者への退職金制度導入|2020年派遣法改正に向けて

改正派遣法の施行に伴う派遣労働者への同一労働同一賃金適用は、企業規模を問わず2020年4月からとなります。派遣元、派遣先において、対応に向けた準備は進んでいるでしょうか?
派遣労働者の待遇改善を考える上で、重要な要素となるのが「退職金制度の導入」です。待遇決定に労使協定方式を導入する場合、派遣労働者にも退職金制度を導入しなければなりません。本稿で、派遣労働者の退職金制度に関わる理解を深めましょう。

2020年同一労働同一賃金による派遣労働者への退職金制度導入の概要

そもそも長期雇用が前提ではない派遣労働者に退職金を支払う必要が生じることに、違和感を覚える方も少なくないでしょう。しかしながら、厚生労働省が公表した派遣業界向けの「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」では、「労使協定の対象となる派遣労働者の賃金には、基本給、手当、賞与(特別給与)、退職金が含まれる」旨が明記されています。

併せて、派遣労働者への退職金支給の方法について、具体的に下記の3つの選択肢が挙げられています。
① 退職金制度に基づいて退職金を支給する方法
② 退職金の費用を毎月の賃金等で前払いする方法
③ 中小企業退職金共済制度や確定拠出年金等に加入する方法

退職金制度に基づく派遣労働者の退職金額は?

対象者、退職金額について、同マニュアルでは
✓ 「勤続3年以上の派遣労働者」から退職金の対象とし、
✓ 「退職時の基本給額に勤続年数に応じた支給率を乗じた額」を支給する
ことを目安としているようです。
支給率については、「平成28年中小企業の賃金・退職金事情」(東京都)等の資料を勘案して一般労働者の退職金支給率を算出し、決定しています。

退職金前払制度、中小企業退職金共済制度等の場合の退職金額は?

前述の退職金支払い方法の選択肢②③の場合の退職金額について、同マニュアルでは下記の通り、「一般基本給・賞与等の6%」という具体的な数字が挙げられている点に注目しましょう。

2020年4月1日をまたぐ派遣契約の締結時に、派遣元から提示される派遣料金にこの「6%」が加算されて請求された派遣先企業も多いのではないでしょうか?

出典:厚生労働省「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~改正労働者派遣法への対応~

退職金制度未導入の企業においても、派遣労働者への退職金支払いが必要

同一労働同一賃金への対応として、待遇決定に労使協定方式を導入する場合、派遣労働者への退職金支払いが必要となることはお分かりいただけたと思います。しかしながら、現状、正社員にも退職金を支給していない企業ではどのように対応すべきなのでしょうか?厚生労働省の統計では、実に2割ほどの企業で退職金制度が導入されていないことが明らかになっており、対応に頭を悩ませる派遣業者は一定数生じるものと予想されます。

結論からいえば、「正社員に退職金がないのに、派遣社員には退職金制度を設けざるを得ない」といった例も出てくると言えます。とはいえ、これでは正社員の就労意欲に悪影響を及ぼすことは目に見えていますから、今後は正社員にも退職金制度を導入することとなるでしょう。また、派遣労働者に退職金が支給されるとなれば、パートやアルバイト、契約社員への対応も必要となり、そうなれば必然的に企業経営は厳しいものとなります。

ちなみに、派遣先均等・均衡方式を導入した場合には「派遣先正社員の待遇との比較」となるため、派遣先に賞与、退職金がない場合、派遣労働者にも賞与・退職金は支給しないとすることができます。とはいえ、安易に均等・均衡方式とするのではなく、各方式のメリット・デメリットを十分に理解した上で慎重に判断する必要があります。

【参考記事】
【同一労働同一賃金対応】2020年派遣法改正に向け実務をマニュアルから学ぶ|労使協定方式と派遣先均等均衡方式

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