2023年4月1日から適用となる中小企業の割増賃金率引き上げ!「月60時間超」のカウント方法

中小企業でも2023年度よりいよいよ適用となる「月60時間超の法定時間外労働に係る割増賃金率の引き上げ」への対応に向け、準備は進められているでしょうか?今号では、適正な賃金支払の基準となる「月60時間超」となる時間外労働のカウント方法について解説しましょう。

いずれの企業でも、「月60時間超」の法定時間外労働には50%以上の割増賃金率を適用

2023年4月1日より、企業規模を問わず、月60時間を超える時間外労働に対して50%以上の割増賃金率で計算した賃金を支払うこととなります。この割増賃金率の引き上げに関してはすでに2010年の労基法改正時に施行され、大企業では同年4月1日より適用となっていますが、現状、中小企業においては2023年3月31日まで適用猶予措置が講じられているところです。
打刻ファースト内にもすでに解説記事を掲載しておりますので、基本的な制度概要に関しましては関連記事をご参照いただけます。

関連記事:『2023年4月より中小企業でも適用!「月60時間超の時間外労働割増賃金率引き上げ」とは?

50%以上の割増賃金率適用となる「月60時間超」の考え方

「月60時間超の時間外労働に係る割増賃金率の引き上げ」に関しては、基本的なルールを理解できていても、いざ給与計算時にこれを加味しようとする段階で、諸々疑問点が生じるようです。ここでは、企業のご担当者様から寄せられるご質問とその回答をまとめておくことにしましょう。

起算日は「賃金計算期間の初日」が原則

「月60時間」をカウントするために、まずは「いつから数えるのか」を決めておかなければなりません。通達によると、「一箇月の起算日については、毎月1日、賃金計算期間の初日、時間外労働協定における一定期間の起算日等とすることが考えられるが、就業規則等において起算日の定めがない場合には、労使慣行等から別意に解されない限り、賃金計算期間の初日を起算日とするものとして取り扱うこと」とされています。つまり、原則としては「賃金計算期間の初日」から残業時間数を累計していくことになりますが、実務を考えても、特段の理由がない限りはこの方法がスムーズであると言えそうです。

賃金計算期間が月をまたぐ場合でも、カウントはあくまで施行日から

前述の通り、起算日を「賃金計算期間の初日」とする場合、賃金計算期間が毎月1日始まりであれば、2023年4月1日施行から問題なく対応可能となります。ところが、賃金計算期間が月をまたぐ場合、2023年4月1日を含む期間については、月60時間超の判断を賃金計算期間全体で考えるのか、それとも2023年4月1日以降の時間外労働だけで見れば良いのか、判断に迷うところかと思います。
この点、あくまで「施行日」である2023年4月1日以降の時間外労働時間を累計して60時間に達した時点より後に行われた時間外労働について、50%以上の率で計算した割増賃金の支払をすれば良いとされますので、覚えておかれると良いでしょう。

法定休日労働の時間数は含まれません

ここからは関連記事で解説した内容と重複しますが、給与計算時に重要な視点となりますので、改めて挙げておきます。
まずは法定休日労働との関係性ですが、月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日の労働時間数を含みません。ただし、所定休日に行った労働時間に関しては、法定時間外労働は含まれますので、週2日以上の休日を設定する現場ではご留意ください。

深夜に行われた月60時間超の時間外労働には、「75%」以上の割増賃金率を適用

深夜(22:00~5:00)の時間帯に月60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合の割増賃金率は、「75%」以上(深夜割増賃金率25%以上+時間外割増賃金率50%以上)となります

具体例で確認!「月60時間超」となる法定時間外労働のカウント

前述の「月60時間超」のカウント方法を踏まえ、いつの労働から引き上げ後の割増賃金率の適用となるかを以下の具体例で考えてみましょう。

  • 賃金計算期間:毎月1日~末日
  • 法定休日  :日曜日
  • 平日は毎日3時間法定時間外労働
    11日(土)に4時間労働
    12日(日)に2時間労働

このケースでは、月の法定時間外労働時間数が「73時間」ですから、月60時間超となるのは「13時間」となります。「賃金計算期間を1ヶ月とする」「所定休日である土曜日の労働時間は累計に含む」「法定休日である日曜日の労働時間は累計に含まない」等が取り扱いのポイントとなります。
現場ごとに判断に迷うことがございましたら、社会保険労務士までお問い合わせください。

出典:厚生労働省「月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません

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