【同一労働同一賃金】派遣社員時給の増額目安は1年勤務で16%、3年勤務で30%

派遣労働者への同一労働同一賃金では「正社員との不合理な待遇差の解消」が目指されており、対応として「派遣労働者の給与の底上げ」が盛り込まれています。具体的には、派遣労働者に対し、就労先が変わっても勤続年数や能力に応じた適正な賃金が確保されるよう、厚生労働省が賃金決定に関わる方針を示しています。さっそく概要を確認しましょう。
※ここでご紹介する賃金決定の方法は、「労使協定方式」を採用した場合の例です

派遣労働者の時給「1年勤務で16%、3年勤務で30%増」の背景は?

さて、タイトルにある「1年勤務で16%、3年勤務で30%増」の文言に、驚かれた方も多いのではないでしょうか。なぜこのような数字が出てくるのか、労使協定方式における派遣労働者の賃金決定式から理解することにしましょう。下局長通知が示す「一般基本給・賞与等」の計算式は、下記の通りです。

上記のうち、「(ロ)能力・経験調整指数」とは、賃金基本統計調査の勤続年数別の集計から算出した能力及び経験の代理指標のこと。派遣労働者の基本給を考える上では、勤続年数に応じた能力・経験調整指数が乗じられることになります。こちらの数値は固定的なものではなく、毎年変更します。

〇 2020年度の能力・経験調整指数


出典:厚生労働省「令和2年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30 条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について

上記をみると、初年度を100として1年で116.0、3年で131.9となっていることから、タイトルにある数字の根拠として捉えることができます。

ちなみに、「(ハ)地域指数」とは、文字通り、地域的な賃金乖離を反映する数値です。派遣先の事業所が所在する地域の指数が適用されます。

ただし、必ずしも能力・経験調整指数に準じなければならないわけではない

とはいえ、能力・経験調整指数を用いた賃金決定の考え方はあくまで目安であり、必ずしも該当の勤続年数の指数を用いなければならないわけではない旨、明言されています。

出典:厚生労働省「労使協定方式に関するQ&A

このように、原則は勤続年数を目安としながらも、実態としては労働者の業務内容や難易度を客観的に検討して、勤続何年目相当かを判断することになります。

派遣労働者の賃金決定は、用いる「統計」「地域指数」に注目

前述の通り、労使協定方式の場合の派遣労働者の賃金は、
「(ア)一般労働者の職種別の勤続0年目の基本給×(イ)能力・経験調整指数 ×(ウ)地域指数」によって計算されます。

このうち、「(ア)一般労働者の職種別の勤続0年目の基本給×(イ)能力・経験調整指数」の部分については毎年局長通知によって示されますが、4種類の指標から業務の実態に合った通知職種を選択することになります。

・賃金構造基本統計調査
・職安定業統計(大分類)
・職安定業統計(中分類)
・職安定業統計(小分類)

また、「(ウ)地域指数」については下記の2種類が示されており、派遣労働者の就業場所に応じて選択することになります。

・都道府県別
・ハローワークの管轄別

「(ア)一般労働者の職種別の勤続0年目の基本給×(イ)能力・経験調整指数」と「(ウ)地域指数」の組み合わせについては全8種(「(ア)一般労働者の職種別の勤続0年目の基本給×(イ)能力・経験調整指数」の4種×「(ウ)地域指数」の2種)となり、派遣元で十分に検討することになります。

8つのパターンを試算し検討を進めましょう

職種ごとに職安定業統計の大・中・小分類を使い分ける、より賃金が低くなるように用いる指標を変更する等、派遣労働者の時給引き下げを目的とする取り扱いは認められません。厚生労働省が公開する「一般労働者と派遣労働者の賃金比較ツール」を用いて、あらゆるパターンを試算し、慎重に検討を進めましょう。

参考:
厚生労働省「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編)
厚生労働省「一般労働者と派遣労働者の賃金比較ツール

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