休業期間中を有効に活用しよう!雇用調整助成金の教育訓練制度とは?

2020年9月末までとされていた新型コロナウィルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置(高助成率、要件緩和など)は、2020年12月末まで延長されています。
売上が回復せず休業させざるを得ない会社においては、ひとまず年内まで、この制度を上手く活用して危機を乗り切っていきたいところです。

しかし、これだけ休業が続くと従業員のモチベーションが心配になります。休業手当の支払によって給料は最大100%補償されるものの、怠け癖がついてきたり、会社への帰属意識が低下したり、中には会社の業績が心配で転職を考える従業員がいても無理はないのかもしれません。

そこで、今回の特例措置で大きく要件が緩和され、使い勝手が良くなった「教育訓練」を有効活用し、従業員のモチベーションやスキルアップの機会にしてはいかがでしょうか。今号は雇用調整助成金の教育訓練制度の特例措置について内容や具体的な活用例についてご紹介します。

雇用調整助成金の教育訓練における特例措置とは?

2020年12月末までに行った教育訓練は、通常より助成率と加算額が引き上げられています。

◆助成率(休業時と同様、日額15,000円が上限)
中小企業:2/3 ⇒ 4/5(解雇等を行わない場合は10/10
大企業 :1/2 ⇒ 2/3(解雇等を行わない場合は3/4
◆加算額
1,200円(1日)⇒ 中小企業:2,400円(1日) 大企業:1,800円(1日)

つまり・・・
解雇等がない中小企業が教育訓練を行った場合、1人1日あたり最大15,000円の人件費と2,400円(合計最大で17,400円)を受給できるということになります。
通常、社内で研修を行ったり、会社命令で外部研修に参加させる場合、その時間分の給与と研修費は会社が負担する必要がありますが、それらの費用をこの助成金で賄うことができます。

雇用調整助成金の対象となる教育訓練の範囲とは?

通常の雇用調整助成金では助成対象外となる、以下のような教育訓練が支給対象となります。

自宅やサテライトオフィス等でインターネットを用いたもの

職業・職務の種類を問わず仕事で必要なもの
例:接遇・マナー研修、IT・パソコンスキル研修、パワハラ・セクハラ研修、メンタルヘルス研修、コミュニケーション研修など

・その企業で通常の教育カリキュラムに位置付けられているもの(自宅など通常と異なる形態で実施する場合に限る
例:自宅でインターネットを用いて行う新人研修、管理職研修、営業研修、マーケティング研修、コーチング研修等々…

・自社の従業員で、一定程度の技能、実務経験、経歴のある者が講師として行うもの(自宅など通常と異なる形態で実施する場合に限る

・繰り返しの教育訓練が必要なもので 、過去に行った教育訓練を同一の労働者に実施する場合(ただし、 同一の対象期間における再訓練は認められない)

教育訓練の具体的活用例は?

・タクシー運転手、飲食業、宿泊業の従業員に対する業務上必要な教養以上の英会話研修を行う。または、業務上必要な教養程度の英会話研修を自宅からオンラインで行う。(自宅等通常と異なる形態であれば通常業務で行うものも可)

・各種研修機関が行うオンライン研修(職業に関する知識、技能、技術の習得や向上を目的とするものであることが必要)を受講させる。

・法律で対策が義務化されたパワハラに関する社内研修を行う。
(厚生労働省では、無料の研修コンテンツを用意しています。PCやスマホで受講できるオンライン研修講座もありますので活用しやすくなっています。)

・管理職や社内の研修担当者が営業力、業界や商品の理解度向上に関する研修をオンラインで行う。

コロナ禍の今、テレワークが急速に普及し、受講する側も、研修を提供する研修機関側もオンラインが一般的となりました。また、ハラスメント研修やリーダー研修ほか、普段忙しい等の理由で実施できずにいるものもあるかと思います。幅広い内容が当助成金の教育訓練に該当するため、この機会に今、会社にとって必要なことを考え、上手く活用しましょう。実際、対象となる訓練なのか労働局に確認の上、導入していただくことをお勧めします。

半日訓練も申請可能

所定労働時間、フルで訓練をした場合は1日カウントとなりますが、3時間~所定労働時間未満の訓練を半日カウントとして訓練を行うことが認められています。また半日訓練、半日就労も可能です。(通常は教育訓練実施日に就労は認められません)

例えば所定労働時間が9時~18時(休憩12時~13時)の場合

・9時~12時:教育訓練 13時~18時:就業 ⇒ 教育訓練0.5日分+加算額1,200円
・9時~12時:教育訓練 13時~18時:休業 ⇒ 教育訓練0.5日分+加算額1,200円+短時間休業5時間分

で申請し、その間の人件費と加算額を受給できます。
終日研修は、ちょっとハードルが高くても半日研修を複数日行うという方法もとれます。

雇用調整助成金の教育訓練を申請するときの提出書類は?

・実施主体(自社で行っているか、研修講師によるものなのか等)、対象者、科目、カリキュラムおよび期間を確認できる書類
・各受講者の受講を証明する書類(受講者本人が作成したレポートなど)
・指導員や講師が確認できる書類(必要な知識や経験が確認できるもの、プロフィールなど)

(社外研修を受講する際など)
・受講料の支払を証明する書類
・支給申請合意書(教育訓練機関に記入していただく書類)

厳しい状況を乗り越えるための手段として制度の活用を

会社の経営対策、売上回復に向けた対策等、考えるべきことは多いかと思いますが、それと同じくらい大切なのは従業員のこと。休業中の従業員にいつ辞めると言われるか不安なので、定期的にランチを取ってコミュニケーションを取るようにしているという社長もおられましたが、この厳しい状況を一緒に乗り越えるための一つの手段としてこういった制度を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

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ABOUTこの記事をかいた人

社会保険労務士 南里有紀(ナンリユキ)事務所

1985年生まれ。大学卒業後、コンサル会社(東証JASDAQ上場)にて中小企業向け財務・労務コンサルティング業務に携わる。 終電・休日出勤を厭わず楽しく夢中に働いた20代を経て、目まぐるしく変わる社会情勢の中、労働者の大きな意識の変化を感じています。 なんとなくやってきた労務管理が通用しなくなりつつある今、人の気持ちに寄り添った実現可能な良い会社作りのお手伝いをします。