【キャリアアップ助成金正社員化コース】2022年10月1日以降の転換では「労働者要件の変更」にご注意を

非正規雇用労働者のキャリアアップ促進を目的に、正社員化や処遇改善等の取り組みを実施した事業主に対して支給されるキャリアアップ助成金。企業においては比較的幅広く活用される助成金ですが、制度見直しに伴い、2021年度、2022年度と2年連続で内容変更があり、支給申請時には注意が必要です。
今号では、キャリアアップ助成金正社員化コースでの大きな変更点となる「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」それぞれの定義について解説しましょう。

キャリアアップ助成金正社員化コースで変更となる「労働者要件」

キャリアアップ助成金正社員化コースは、無期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者を含むいわゆる「非正規雇用労働者」を「正規雇用労働者」に転換または直接雇用した場合に、事業主に対して助成を行う制度です。対象となる労働者について、転換前には「非正規雇用労働者」の、転換後には「正規雇用労働者」の要件をそれぞれ満たしている必要があります。
各労働者の要件は、2022年10月1日以降転換または直接雇用実施分より、以下の通り変更となります。

正規雇用労働者は「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員であること

9月30日までの定義:同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者

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10月1日以降の定義:同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る
※正規雇用労働者としての試用期間中の者は、正規雇用労働者から除く

 

正社員に適用されるべき「長期雇用を前提とした待遇」について、2022年10月以降、具体的な基準(「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」の適用)が要件化されます

要件を満たすかどうかを判断するためには「就業規則でどう規定されているか」が重視されますが、例えば、以下のような規定がある場合は支給対象外とみなされますのでご注意ください。

▢ 退職金制度がなく「賞与あり」とする場合
× 原則不支給としている
(例:賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある。)
× 原則として賞与を支給することが明瞭でない
(例:賞与の支給は会社業績による。)

▢ 昇給について
× 客観的な昇給基準等ではなく、賃金据え置きや降給の規定がある
(例:会社が必要と判断した場合には、会社は、賃金の昇降給その他の改定を行う。)

退職金については、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、 額の計算及び支払の方法、支払の時期等が記載されている必要があります。

なお、「正規雇用労働者として試用期間中の者」については、2022年10月1日以降、正社員転換したものとみなしません。よって、正社員転換後に試用期間を設けている場合には注意しましょう。(この点、2022年9月30日までの転換では、正社員として試用期間中であっても、賃金の低下等がなく通常の正社員と同様の待遇を受けていれば正社員とみなされていました。)

非正規雇用労働者には、「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されていること

9月30日までの定義:6ヵ月以上雇用している有期または無期雇用労働者

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10月1日以降の定義:賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6ヵ月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者

 

「賃金の額または計算方法が正社員と異なる就業規則」とは、具体的に基本給、賞与、退職金、各種手当等のうちいずれか一つ以上で、正規雇用労働者と異なる制度(額の多寡や支給の有無等)を明示的に定めていることが必要です

就業規則上で、正社員と非正規雇用労働者の別が明らかになっていない場合、そもそも本要件を満たすかどうかを確認することができないため、支給対象外となります。小規模事業場の場合、正社員もパートもすべて共通の就業規則を適用しているケースも少なくありませんが、「雇用形態」等の条文で「正社員」「契約社員」「パート」を区別した上で、各条文において雇用形態ごとに適用される内容が明記されているかどうかを確認しましょう。

また、有期雇用労働者から正規雇用労働者の転換であっても、就業規則において契約期間に係る規定がない場合、転換前の雇用形態は「無期雇用労働者」として取り扱われます。この場合、支給決定されても、支給額に影響がある点に留意します。

就業規則を改定する場合は、正社員転換時期にご留意ください

2022年10月1日以降に転換又は直接雇用を実施してキャリアアップ助成金の支給申請をされる場合、対象労働者について、新たな労働者要件を満たすかどうかを十分にご検討ください。
なお、キャリアアップ助成金正社員化コースの対象となる非正規労働者は、「正社員と異なる雇用区分の就業規則」の適用を6ヵ月以上受けて雇用されている必要があります。労働者要件の変更に伴い就業規則を改定した場合、改定版の施行日から6ヵ月以上の雇用期間がなければ、当該労働者は支給対象となりません。

参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金パンフレット(令和4年度)
関連記事:『2022年4月以降の取り組みから変更あり!キャリアアップ助成金正社員化コース|変更点まとめ

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