改正育児・介護休業法が成立!注目の「男性版産休制度」は2022年10月の施行予定

インパクトあるキーワードで注目される「男性版産休」ですが、このたび改正育児・介護休業法が成立し、子の誕生直後の父親の柔軟な育休取得を可能にする「出生時育児休業」が新設されました。今後、2022年10月にも施行され、企業における導入が進んでいきます。男性版産休制度の導入に際して、社内体制の整備や就業規則の改定が必要となりますが、まずは制度を正しく理解することから始めましょう。

男性版産休といわれる「出生時育児休業」の制度概要

男性版産休については、昨年末開催の労働政策審議会分科会の資料をベースに、別記事にて概要を解説しています。今一度、重要なポイントを振り返っておきましょう。

出生時育児休業とは・・・
子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組み

✓ 休業の申出期限については、原則休業の2週間前までとする
※現行の育児休業(1ヵ月前)よりも短縮
✓ 分割して取得できる回数は、2回とする
✓ 労使協定を締結している場合に、労働者と事業主の個別合意により、事前に調整した上で休業中に就業することを可能とする

参考:厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案(令和3年2月26日提出)

子の誕生直後の休業ルールがより柔軟に

出生時育児休業では、以下の点で柔軟な休業が可能となっています。

  • 原則的な休業の申出期間を2週間前までに短縮
  • 産後8週間の中で2分割までの取得が可能

現行の育児休業制度でも、子の出産後8週間以内の男性労働者の休業は可能です。パパ休暇を取得すれば、育休の再取得が可能になります。

ところが現状ではルール上、原則として育児休業開始の1ヵ月前までの休業申請が必要となっており、仮に出産時期が早まった際、男性労働者には「子どもが生まれてもすぐに休暇を取得できない」といったタイムラグの問題が生じることも少なくありませんでした。

こうした課題を解消すべく、さらには男性の育休をより使い勝手の良いものにするために、このたび新たに出生時育児休業制度が設けられたのです

育児休業中の就労には一定のルール

出生時育児休業は、「休業中の就労が可能となる」という点に特徴があります。ただし、これについては衆議院・参議院から以下の通り付帯決議がつけられており、実務上の取扱いには注意が必要です。育休取得中の労働は、労使の個別合意が大原則となります

  • 育児休業は労働者の権利であって、その期間の労務提供義務を消滅させる制度であることから、育児休業中は就業しないことが原則であり、事業主から労働者に対して就業可能日等の申出を一方的に求めることや、労働者の意に反するような取扱いがなされることのないよう指針に明記するとともに、違反が明らかになった場合には事業主に対して厳正な対処を行うこと
  • 育児休業中の社会保険料免除要件の見直しに関し、労働者が育児休業中に就業した場合には、休業中の就業日数によっては社会保険料の免除が認められなくなり、労働者に想定外の経済的な負担が発生する可能性があることについて周知徹底すること

出典:衆議院「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

保険料免除ルールはより厳正に

前項後段に記載した「育児休業中の社会保険料免除要件」については、2021年6月4日に成立した改正健康保険法に以下の通り盛り込まれました。

✓ 短期の育児休業の取得に対応して、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料を免除する
✓ 賞与に係る保険料については1ヵ月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象とする

出典:厚生労働省「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(令和3年2月5日提出)

育休中の社会保険料免除については、以下の記事でも解説していますのでご参照ください。

関連記事:『「2週間以上の育休取得」で社会保険料免除へ。現行の保険料免除基準「月末時点の育休取得」を見直し

企業においてはまだまだ進まぬ男性の育児休業取得ですが、男性版産休制度の新設により、今後は各現場におけるより一層の意識改革、さらに労働者の両立支援が可能となるような体制整備が求められます。ここ数年のたび重なる法改正によりますます複雑化する育児・介護休業法への対応は、社会保険労務士までご相談ください。

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