「移動中の仕事」を黙認していませんか?知っておくべき「思わぬリスク」と「必要な労務管理」

今や、「移動中の仕事」は当たり前になりつつあります。鉄道会社や航空会社はさかんに無料Wi-Fiの宣伝をし、座席には電源が完備。たいてい、移動中でも仕事ができる環境が整っているのです。
ですが適切な労務管理を施さなければ、移動中の仕事には思わぬリスクが潜んでいることも

本稿では、出先で仕事をする際の注意点を解説します。

移動中は原則「労働時間ではない」、ただし時代に即した対応が必須

厚生労働省や裁判所の見解では、移動中は原則「労働時間ではない」との判断である一方、巷で見かける会社員は移動中も明らかに仕事をしています。出張で移動にまとまった時間が生じれば、少しでもやるべきことを進めておこうと考えるのは当然です。幸いなことに、昨今、どの交通機関でも環境が整っています。
こうした仕事の仕方に対し、会社はなんら対応せずではいけません。IT化の進展に伴い、企業では時代に即した対応が必要になります。このあたりの話題については、すでに打刻ファースト内にて社労士の榊先生が解説されています。

参考:打刻ファースト「【社労士が考える】出張中の移動時間は労働時間なのか?IT時代の新提案

出張中の移動は「労働時間」でなくとも、事故等が起これば「業務災害」に該当します

ちなみに、出張に伴う移動中の仕事については原則「労働時間ではない」としても、労災に関わる保険事故が起こった場合には「業務災害」の対象となり得ます。出張中は、移動も含めてすべて業務命令下にあるものとみなされるため、労災が認定されるとなれば「通勤災害」ではなく「業務災害」の扱いです。この点、「移動中を労働時間とみなすかどうか」とは別の問題として、正しく捉えておく必要があります。

「移動中の仕事」に関わる社内ルールで、定めるべきこととは?

さて、御社では現状「移動中の仕事」についてどのような決まりを設けているでしょうか?これはあくまで私個人の見解ではありますが、特に規模の小さな企業では特段規程を設けておらず、従業員の裁量に委ねているケースを散見します

ですが、移動中の仕事には、思わぬリスクが潜んでいることも事実です。
例えば、御社の従業員が新幹線内で企画書のデータを開いていたとします。そのとき、隣に座ったのが御社の競合企業の社員だったとしたら・・・?
頻繁に出張する従業員から、ある日まとめて移動中の業務遂行に関わる賃金支払を請求されたとしたら・・・?

従業員に対し、移動中に自由に仕事をさせることは、極力避けた方が無難です。しかしながら、どうしても必要な場合を想定して、出先で仕事をする際のルールを整備しておくことを強くお勧めします

以下、社内ルールを定める上でポイントとなる観点を挙げておきます。

大前提

✓ 移動中の仕事は、原則「業務命令によるもの」である

⇒管理者は、移動中に行っても差支えない業務(機密情報を扱わないもの)を指示する
⇒管理者は、従業員が移動中にも業務遂行に追われることのないよう、日頃から業務の進捗や量の管理を徹底する

✓ 業務命令以外の仕事を移動中に行ってはならない

⇒従業員に対し、定期に情報セキュリティ教育を行い、各人に正しい認識をもってもらう
⇒書類やデータの持ち出し対象を制限する

情報セキュリティの観点から

✓ 社外での情報管理を徹底する

⇒業務を中断する際には、必ず書類やパソコンをカバンにしまう
⇒離席時には、書類やパソコンをカバンに入れて必ず携帯する
⇒隣から容易にデータを覗きこまれてしまうような混み合った機内、車内では機密事項を取り出さない

✓ 情報漏洩に関わる罰則規定を整備する

⇒従業員への周知徹底を行う

✓ セキュリティ対策を万全にする

⇒モバイルワークを可能にするためにクラウド上で情報を管理する際には、ウイルス感染やセキュリティ面に配慮し、運用ルールを徹底しておく

労務管理の観点から

✓ 移動中の業務遂行について、申請フローを規定しておく

原則「業務命令によるもの」としつつ、必要に応じて「申請」「承認」による着手が可能となる流れを作っておく
⇒「適正な手順を経た業務のみ労働時間とみなす」旨を定める

✓ 管理者は従業員個々の業務量、労働時間に配慮する

⇒特定の従業員のみに働かせ過ぎていないか、業務過多になっていないかを常に把握する

参考:厚生労働省『脳・心臓疾患の労災認定 -「過労死」

✓ 新たな勤怠管理方法の検討

⇒タイムカードや出勤簿を用いた従来型の勤怠管理では、移動中の労働時間の把握に対応できません。どこにいても労働時間を登録できる様なシステムの導入が急務です

✓ 移動中の仕事に関わる業務報告を徹底する

⇒会社は移動中の労働時間を把握するとともに、どの仕事をどの程度進めたのかを従業員に報告させるようにすれば、労働時間の不正水増しの回避につながります

労使トラブル回避のために、徹底すべき勤怠管理

「移動中の仕事」が決して珍しくはない昨今、「労働時間の適正把握」は、適切な給与支払いの実現、そして労使トラブル回避のために不可欠となります。しかしながら、現状「どのような方法で勤怠管理すべきか」とお悩みの企業ご担当者様も多いのではないでしょうか?

「出先での業務については、いっそのこと、事業場外みなし労働時間制を適用してしまうのはどうか」とおっしゃる方もいます。しかしながら、こちらは原則「使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務」について適用可能な制度であり、実際にはかなりの事例が適用除外に該当します。

参考:東京労働局「事業場外労働のみなし労働時間制

そこで注目すべきは「クラウド勤怠管理システムの活用」です。中でもIEYASUは、スマートフォンアプリでの打刻が可能となっており、いつでもどこでも出勤・退勤時刻を登録できます。会社は、移動中の従業員についても、出先での業務開始・終了の時刻を正しく把握できるでしょう。社内規定と併せて活用することで、移動中の仕事に関わる勤怠管理は万全です。

IEYASUの基本的な機能はすべて無料で利用できます。
まずは使ってみて、IEYASUが御社に合ったサービスかどうかを検討されるのがオススメです。

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ABOUTこの記事をかいた人

HM人事労務コンサルティング 丸山博美

起業したての小さな会社支援を得意とする社労士事務所、HM人事労務コンサルティング代表・丸山と申します。 創業当初の事業主様に不足しがちな「経験」「人脈」「知識」を、 社会保険労務士という立場からサポートいたします。 労務関連の手続きやご相談、就業規則作成、助成金申請・・・等々、どんなことでもお気軽にご相談ください!東京はもちろん、日本全国からのご依頼に対応させていただきます。