新型コロナウイルス感染拡大で増える「時差出勤制度の導入、労働時間の短縮」は正しい手順で実施しましょう

新型コロナウイルスの感染は依然として全国的に拡大傾向にあり、一部地域では三度目の緊急事態宣言が発令、さらに延長されようとしています。企業経営における新型コロナウイルスの影響は多岐に渡るものと思われますが、今号では「雇用」への具体的な影響について、大阪府の調査結果を元に考察し、適切な対応を検討することにしましょう。

中小企業を中心に増える、コロナ禍の「時差出勤制度の導入、労働時間の短縮」

大阪府が府内の民営事業所における労働条件等を把握するために実施した2020年度実態調査では、「新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響」について、「時差出勤制度の導入、労働時間の短縮など」が最多であることが分かりました(2020年7月31日時点)。

調査結果では、コロナ禍における企業の雇用維持努力の現状が明らかに

「時差出勤制度の導入、労働時間の短縮など」に次いで多いのが、「出張・訪問営業などの中止(17.7%)」、「テレワークの実施(12.7%)」「一時帰休・休業(12.0%)」となっています。コロナ禍に特に懸念される「解雇・雇止め等の雇用調整(0.8%)」「希望退職の募集・実施(0.3%)」については比較的低い数字であることが分かり、企業における雇用維持への努力を見てとることができます。

企業規模別では、小規模企業ほど「時差出勤制度の導入、労働時間の短縮など」の割合が高い

企業における影響を規模別に見ると、「10人~29人」の事業所においては「時差出勤制度の導入、労働時間の短縮など(19.0%)」「一時帰休・休業(15.5%)」が多い傾向にあります。一方で、「1000人以上」において高い割合となるのが「特別手当の支給(8.2%)」「コロナ需要による業務量増(6.2%)」であり、中小企業の厳しい実情が浮き彫りとなっています。

時差出勤制度導入や労働時間の短縮には「従業員の合意」が大前提

コロナ禍においては多くの現場で進む「時差出勤制度の導入」や「労働時間の短縮」ですが、いずれも労働条件の変更に該当するため、「従業員の合意」が必要になります。時差出勤制度の導入は始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げとなりますが、必要に応じてフレックスタイム制の導入も視野に入れ、労使間で十分な協議を重ねましょう。なお、介護や育児など、従業員個々の事情によっては、時差出勤への対応が難しい場合もあります。くれぐれも、会社が一方的な判断で時差出勤を命じることのないようにしなければなりません。

また、労働時間の短縮であれば、賃金の減額や労働・社会保険の資格喪失といった労働者への重大な不利益につながる可能性があります。たとえ就業規則や雇用契約書の中で「労働時間の変動」があり得る旨を明記していたとしても、一方的に労働契約の内容を変更することはできません。企業経営の観点から、労働条件の不利益変更が避けられない場合には、従業員に対しては十分に説明を行い、合意を得られるように努めましょう

もっとも、コロナ禍においては、労働時間の短縮が「労働条件の変更」を伴うものではなく、「所定労働時間の一部休業」であることの方が多いかもしれません。その場合には、休業手当の支払いの必要性を正しく判断し、対応する必要があります。一部休業に伴う休業手当の支払いルールについては、以下の関連記事で解説しています。

関連記事:『休業要請で時短営業!休業手当支払いルール&一部休業時の雇用調整助成金活用について解説

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