【学校の働き方改革】年間の労働時間総枠との比較だけではダメ!「一年単位の変形労働時間制」の残業代算出方法

改正教職員給与特別措置法(給特法)が成立し、2021年4月から公立学校で「一年単位の変形労働時間制」の適用が可能となります。教員の働き方改革の一環として、「長期休暇」という学校ならではの特徴を活かした変形労働時間制の導入は、私立学校を中心に徐々に進みつつあります。しかしながら、特殊な労働時間制を取り入れることで、「制度の誤運用」「意図せず未払賃金が発生する」等の課題も生じているため、注意が必要です。

「一年単位の変形労働時間制」は制度の作り込みが肝心

一年単位の変形労働時間制とは、年間の業務の繁閑を考慮し、年単位で計画的に労働時間を割り当てていく労働時間制です。学校においては「学期中は多めに働き、長期休暇期間にしっかり休む」を実現するために、給特法改正によって公立学校でも導入が可能となります。

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変形労働時間制は上手く活用すれば残業代の抑制につながることから、学校現場でお話を伺うと、比較的高い関心が寄せられる話題であることが分かります。ただし、「一年単位の変形労働時間制」を導入するためには、入念な事前準備が不可欠です。そのために、制度をよく理解せずに導入した場合、「運用が誤っている」「労務管理が複雑になり管理職に大きな負担がかかることになった」「未払賃金の温床となった」等、思わぬ労務問題を抱えることになります。

導入以前に、年単位での計画的な労働時間の検討が必要になる「一年単位の変形労働時間制」

「一年単位の変形労働時間制」の導入については、政府公開のリーフレットをご一読いただくと、その細かなルールをご確認いただくことができると思います。
その中で、現場で特に注意すべきポイントとしては、

✓ 制度開始(対象期間の始期)の段階で、各月の労働日数と総労働時間数を定めておかなければならない
✓ さらに、あらかじめ定めた各月の労働日数と総労働時間数を元に、30日前までには具体的な労働日と各日の労働時間数を定めなければならない

といった点になるでしょう。そのために、変形労働時間制導入以前に、年単位での職場の労働時間の傾向を把握し、制度導入の妥当性や効果的な労働日数・時間の設定を検討できる状態でなければなりません。

参考:厚生労働省「1年単位の変形労働時間制

「一年単位の変形労働時間制」には、「日・週・年」単位の労働時間ルールがある

また、「一年単位の変形労働時間制」を導入する際には、労働時間のルールを遵守した制度運用が不可欠です。
具体的には、

  • 対象期間(一年)の週の平均労働時間を40時間以内に設定する
  • 上限労働時間は1日10時間、1週間52時間

※ただし、週48時間を超える設定は連続3週以下
対象期間を3ヵ月毎に区分した各期間において、労働時間が週48時間を超える週は、週の初日で数えて3回以下

  • 労働日数の限度は一年間280日(年間休日85日)

※ただし、前年度実績との比較で減じられる場合もあり(厚生労働省リーフレット2ページ参照)

  • 最大連続勤務は6日(特定期間に限り最大連続12日)
  • 年間の総労働時間数は2085.7時間(閏年の場合、2091.4時間)

このように、変形労働時間制とはいえ会社が自由度高く労働時間を調整できる制度というわけではなく、ある程度決まった枠組みの中での活用が大前提となります。こうした実運用への対応に苦戦する現場を散見します。

「一年単位の変形労働時間制」の残業代は「日・週・年」単位で確認

「一年単位の変形労働時間制」導入に伴い複雑になるのは、勤怠管理だけではありません。残業代の支払いが複雑化し、問題となるケースがあります。

変形労働時間制を導入する現場では、単純に「対象期間の総枠からはみ出た部分を清算すれば良い」と考えられているケースが目立ちます。ところが、実際には「日」「週」単位での確認、残業代支払いが必要である点に注意する必要があります。割増賃金の対象となる時間外労働については、下記の通りです。未払賃金が生じない様、年間総枠だけでなく「日」「週」の労働時間を基準にした時間外労働の把握に努めましょう。

[1日]

  • 労使協定で8時間を超える時間を定めた日については、定めた時間を超える部分
  • 労使協定で8時間以内と定めた日については、8時間を超えて労働した部分

[1週]

  • 労使協定で週40時間を超える時間を定めた週については、定めた時間を超える部分
  • 労使協定で週40時間以内としている週については、40時間を超えて労働した部分
  • ※ただし、すでに「1日」の基準で時間外労働とされる部分は除く

[1年]

  • 365日の年については、2085.7時間を超えて労働した部分
  • 366日の年については、2091.1時間を超えて労働した部分
  • ※ただし、すでに「1日」「1週」いずれかの基準で時間外労働とされる部分は除く

もっとも、変形労働時間制を導入したのに恒常的に残業が続き、結果的に年間を通して繁閑を把握できない様な働き方であれば、労務管理を複雑化させるだけで、そもそも変形労働時間制の適用が相応しくないケースもあります。特殊な労働時間制の導入に先立ち、まずは御校における教職員の労働時間の実態を正しく把握し、変形労働時間制が活きるかどうかを分析することから始めてみてはいかがでしょうか?

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ABOUTこの記事をかいた人

HM人事労務コンサルティング 丸山博美

起業したての小さな会社支援を得意とする社労士事務所、HM人事労務コンサルティング代表・丸山と申します。 創業当初の事業主様に不足しがちな「経験」「人脈」「知識」を、 社会保険労務士という立場からサポートいたします。 労務関連の手続きやご相談、就業規則作成、助成金申請・・・等々、どんなことでもお気軽にご相談ください!東京はもちろん、日本全国からのご依頼に対応させていただきます。