国立大学法人で未払い残業代が続々発覚⇒労基署勧告へ!働き方改革時代に求められる「意識改革」と具体的な「取り組み」とは?

教育現場の労働環境についてはかねてより様々議論されてきたテーマですが、ここにきて先日、国立大学法人での未払賃金に関わるニュースが飛び込んでまいりました。民間企業と足並みを揃え、学校においても2019年から本格的に働き方改革が進められる中、現場において必要なものは「経営陣と教員双方の意識改革」と、改革に向けた「実効性ある取り組み」。「これが当たり前だったから」の考え方から脱し、労働環境改善に向けた最初の一歩を踏み出しましょう。

続々と発覚する国立大学法人での未払い残業代、原因は?

三重大学が、付属小学校等の教員に時間外労働の割増賃金を支払っていなかったとして、2021年11月に労働基準監督署から是正勧告を受けたことが明らかになりました。本件に付随して実施された共同通信のアンケート調査によると、全国56の国立大学法人のうち20法人で同様の未払いが発生、うち18法人が労基署から是正勧告を受けたとのことです。

2004年4月の法人化に伴い、労基法の適用を受けることとなった国立大学

なぜ、国立大学においてこれほどまでに多くの未払い賃金が発覚するのかと言えば、2004年4月の「法人化」に起因します。国立大学法人への移行以前、国立大学に勤務する教員は公務員(教育公務員)として定義され、教職員給与特別措置法(給特法)が適用されていました。給特法については後述しますが、法人化により労基法の適用を受けるようになった後も、教員に対して給特法の給与形態をそのまま適用している国立大学法人では、未払い賃金の発生は不可避となっています。

公立学校の教員に適用される「給特法」における残業代とは?

給特法では、原則として残業は生じないものという前提の元、時間外・休日勤務に係る手当の不支給を明確に記載しています。一方で「教職調整給」という独自の手当を支給することで、臨時的突発的な勤務や教員自身の自発的な時間外・休日労働に係る賃金を担保しています。

文部科学省の「勤務時間等の勤務条件に係る原則」によると、教育公務員については「勤務時間の割振り等により、原則として、時間外勤務が生じないようにする必要があり、勤務時間外に業務を命ずる時には、超勤4項目について臨時又は緊急のやむをえない場合に限られている」とされており、これを受けて給特法には「時間外・休日勤務手当を支給しない」旨が明記されています。ちなみに、「超勤4項目」とは、生徒の実習関連業務、学校行事関連業務、職員会議、災害等での緊急措置等です。超勤4項目に係る勤務や教員の自発的な時間外・休日労働に対する手当として支給される「教職調整給」は月額賃金の4%です。建前として「残業は生じない」とされていても、実態として多くの教育公務員が過労死ラインに限りなく近い、もしくは恒常的に超過するほどの労働時間を勤務している事実に鑑みれば、民間の働き方改革を追い風に給特法改正の声が高まるのも無理はないでしょう。

学校の働き方改革は急務!早期の「意識改革」「実態把握」を

現状、未払い残業が発生している学校においては、ただちに是正に向けた取り組みに乗り出す必要があります。改正民法の施行に伴い、2020年4月1日以降に支払われる賃金については消滅時効が3年に延長されていますが(それ以前は2年)、ゆくゆくはこれが5年となる見込みです。未払い賃金の発生を放置し、将来に向けて何の対策にも取り組まなければどうなるのか、容易に想像できるはずです。このたび報道等で明らかになった国立大学法人の他、本来労基法の適用を受けるはずの私立学校でも、公立に準じた給与体系を採用しているケースは少なくないようです。御校は、適正に労基法を遵守できているでしょうか?

関連記事:『未払賃金に係る時効が「3年」に|2020年4月から変わる労働賃金関係の消滅時効をまとめて確認

教員の「当たり前」を疑問視すべし

未払い賃金への対応を含む、教員の働き方改革を進めていくためには、何よりも「意識改革」が先決です。教育現場で長年活躍されてきた先生方の中には、「子どものために、労働時間など度外視して忙しく働くのが当たり前」「教員の給与体系は、昔からこうだった」といったお考えをお持ちの方も少なくないようですが、皆さんにとって「当たり前」となっている働き方こそが担い手不足を招いていることに目を向けなければなりません。少子高齢化が進行し、業種を問わず人材確保が困難となる今日、民間企業は続々と「長く働きやすい職場作り」に向けた取り組みに乗り出しています。教員の働き方を変えていかなければ、「先生になりたい」と夢見る子どもは減少の一途をたどるでしょう。

先生方お一人お一人が、ご自身の労働時間、これに応じた適正な対価を意識されてみてください。先生方が不満足な職場環境に疲弊する状況は、確実に教育の質を下げます。先生方自身がワークライフバランスを実現しつつ、誇りをもって職業人生を歩んでいく中でこそ、子ども達に魅力あふれる学びを提供できるのではないでしょうか?

学校の働き方改革の第一歩は「適正な勤怠管理」から

学校の働き方改革といっても、「何から手を付けて良いのか分からない」というのが率直なご意見かと思います。まずは「勤怠管理」を徹底しましょう。各人が働いた時間を正しく記録していくことで、現状の働き方における課題把握、さらには労働時間に則した給与計算が可能になるため未払い賃金対策につながります

最近では、未払い賃金だけでなく、「勤務時間管理」に関わる労基署の立入調査事例も増加傾向にありますから、基本的な労務管理のひとつとしてまずは勤怠管理の徹底に取り組んでおくべきです。

関連記事:『【私立学校の働き方改革】労基署による指導・是正勧告の状況は?

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