かねてよりその必要性が叫ばれてきた学校の働き方改革について、この春から、また一歩進展がありそうです。教員の長時間労働の温床となっていた部活動に関して、いよいよ2023年度以降、改革に向けて動き出します。
具体的な取り組みについては、自治体・学校ごとに異なることとなりそうですが、現場においては部活動改革の趣旨を踏まえ、適切な対応を検討してまいりましょう。
目次
2023年度から始まる部活動改革の概要
出典:スポーツ庁「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革(令和2年9月)」
部活動改革については、2020年9月に開催された学校における働き方改革推進本部の中で、休日の部活動の段階的地域移行の方向性が示されました。ただし、すでに前段階として、2017年の学校教育法施行規則改正時に部活動指導員制度が創設され、教員の部活動時間増加や競技経験のない教員が指導することによる負担への対応が進められてきていました。
2023年度以降はいよいよ、外部の部活動指導員の活用を始めとするより一層の地域連携強化を前提として、教員のさらなる負担減、生徒にとって望ましい部活動環境の構築が具体的に目指されることになります。
部活動改革の主な内容に関しては、すでに別記事にて解説している通りです。今一度、部活動改革の概要をご確認いただいた上で、改めてポイントを掴んでまいりましょう。
今後進められる、「学校部活動から地域部活動への転換」
2023年度以降の部活動改革でカギとなるのは、「学校部活動から地域部活動への転換」。改革の第一歩は、従来当たり前とされていた「学校教育の一環としての部活動」といった捉え方を改めることにあります。具体的な指針としては、平日に行われる「学校部活動」、そして休日に地域で担われる「地域部活動」を区別した上で、教員の休日を確保しつつ、生徒の要望にもできる限り応えられる体制の構築が目指されることになります。
もっとも、長く部活動運営に携わってきた先生方にとって、「地域部活動」という考え方はなかなか受け入れ難いものかもしれません。しかしながら、今までの「当たり前」を見直すことで、教育業界がより一層働きやすいものとなり、その延長上で次世代の担い手が増えていくことは言うまでもありません。学校現場での深刻な人材不足が問題視される中、「教員」という職業をより魅力的なものとして発信していくために、現役でご活躍中の先生方が今、積極的に動いていく必要があるのではないでしょうか?
教員に「休日の活動に携わる・携わらない」の選択の自由を
「地域部活動」を前提とすることで、休日に部活動に携わることを希望しない教員が部活動に携わる必要がない環境が構築されます。これにより、教員の休日確保が実現し、学校の働き方改革の大きな前進につながります。
一方で、休日の活動でも指導を希望される先生に関しては、教員としての立場で従事するのではなく、兼職兼業の許可を得た上で、地域部活動の運営主体の下で従事することとなります。
つまり、それぞれの教員が部活動への携わり方を主体的に選択できるようになることが目指されるというわけです。とても前向きな改革であると捉えることができますね。
学校の働き方改革の最中、変化する「部活動」の運営体制
2023年度から本格的に動き出す部活動改革ですが、すでに数年前から少しずつ、部活動の運営体制について従来の常識が覆されつつあります。
2019年7月、東京都の中央労働基準監督署が私立高校に対して行った残業代不払いに関わる是正勧告は、「部活動などで月に50時間前後残業しており、過去2年間で約600万円の残業代の不払いがある」とし、適切な対応を求めるものでした。
関連記事:『【学校の働き方改革】「部活動は労働時間」私立高校に対し是正勧告が行われました』
また、2022年11月には、茨城県の私立学校で「部活顧問への就任を任意」とする労働協約が締結されたことが話題となりました。
参考:弁護士ドットコム「東洋大附属中高で「部活顧問任意制」、労働協約を締結 男性教員「本当は授業のために時間を使いたい」」
いよいよ始まる、部活動改革元年。御校では、どのような取り組みで現場を変えていきますか?変化を恐れることなく、これからの学校教育の在り方に目を向けてまいりましょう!