【学校の働き方改革】労務管理上問題となる非常勤講師の「コマ給」問題

学習塾経営の労務管理に関わる記事で取り上げた「コマ給」は、学校の非常勤講師にも広く適用されており、労務管理上問題視されています。教育業界に広がる「コマ給」問題は、現場において直ちに見直されるべきです。

そもそもコマ給とは?

「コマ給」とは、文字通り、1授業(1コマ)分の報酬を定め、「受け持ったコマ数×1コマの単価」が賃金として支払われる給与形態です。1コマは必ずしも60分というわけではなく、80分であったり90分であったりし、その時間に応じた報酬設定がされています。
考え方としてはシンプルであり、授業のみを受け持つ塾講師や学校の非常勤講師の報酬を考える上では、しっくりなじみそうな仕組みと見てとることができます。

コマ給の問題点を探る|授業時間外の労働時間

しかしながら、労基法上の観点からいえば、この「コマ給」はあらゆる観点から問題視されうる給与形態であると言えます。

大前提として、「労基法上の労働時間=授業時間」ではありません。労基法上の労働時間とは、「客観的にみて、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるかどうか」で判断されます。つまり、生徒を相手に授業をしている時間はもちろん、授業に付随して発生する事前準備の時間、授業後の後片付けや後処理、採点等の時間については、労働時間とみなすのが妥当です。加えて、具体的な作業に従事していなくても、業務が発生した場合に備えて待機している時間も労働時間に該当しますから、生徒の質問応対のためにしばらくその場にいるよう命じられている時間ももちろん労働時間とみなされます。

「コマ給」で問題視されているのは、こうした授業時間外の労働時間が把握されておらず、もちろん賃金支払の対象ともなっていない点です。

コマ給の適切な導入とは|業務給の設定

「コマ給」問題を解消するためには、授業時間についても、授業時間外の業務時間についても適正に賃金が支払われることです。具体的には、「コマ給(授業時間給)」と「業務給(授業時間外の業務に関わる時間給)」を設定し、それぞれの時間数を適正に把握して、給与計算に反映させる方法が有効です。併せて、「業務給」については具体的な業務内容を明記しておくことで、労使間で「業務」に関わる共通認識を持つことができます。
「コマ給」にまつわる賃金形態については、下記の記事でも解説しています。

【参考記事】打刻ファースト「学習塾経営の基本「労務管理」を見直そう|雇用契約書や給与・有給の取扱い

是正されつつある「コマ給」問題

「コマ給」については、私学各校でその在り方が問題提起されており、団体交渉時の争点とされています。すでに学校側が「コマ給」に関わる問題を認め、適正な賃金支払いに応じる姿勢をみせているケースもあるようです。私学ユニオンの公式サイトから、団体交渉の状況をご確認いただくことができます。

参考:
私学ユニオン「【文理開成】部活動が労働時間であることや、非常勤講師の「コマ給問題」を認めました!

私学ユニオン「【小松原学園】非正規雇用教員の待遇差別、一方的な労働条件の変更、残業代不払い等をめぐる戦いが解決しました!

非常勤講師の待遇としては一般的と考えられてきた「コマ給」ですが、徐々にその問題点が認識されてきています。こうした風潮を受け、学習塾や学校といった教育現場では今一度、自校の待遇を見直し、適正な方向へと是正していく必要があると言えます。

労働時間を適正に把握し、「コマ給」問題を解消へ!クラウド勤怠管理システムIEYASUを活用し、授業時間と業務時間をしっかり管理していきましょう

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