【改正育児・介護休業法】「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」が見直しへ

2025年度は育児・介護休業法の大改正が予定されており、各現場で対応準備が進められているところかと思います。今回の改正では「介護休業制度等に関わる周知・情報提供」が事業主の義務となりますが、従業員への説明が必要となる「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」に関する見直しが行われています。介護問題は、いずれの従業員にとっても他人事ではありません。家族がどのような状態になった時に介護休業制度等の対象となるのか、従業員に対して正しくアナウンスできるようにしましょう。

「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」とは?改正点を解説

育児・介護休業法に定める「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障がいにより、2週間以上の期間にわたり「常時介護を必要とする状態」のことを指します。この「常時要介護を必要とする状態」と判断されるのは、対象家族(配偶者※事実婚を含む 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)が、以下の①または②のいずれかに該当する場合です。

① 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること
② 判断基準表の項目①〜⑫のうち、状態について「2」が2つ以上または「3」が1つ以上該当し、
かつ、その状態が継続すると認められること

②における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準表」は、以下の資料の別添1(180ページの次ページ)よりご確認いただけます。

参考:厚生労働省「【通達】育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について(令和7年10月1日)

「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の改正点

今回の判断基準の見直しでは、介護休業制度等に関して、子どもに障がいのある場合や医療的ケアを必要とする場合の適用を想定することが明らかにされました。例えば、表中の項目「⑧ 外出すると戻れないことや、危険回避ができないことがある(注6)」について、「(注6)「危険回避ができない」とは、発達障がい等を含む精神障がい、知的障がいなどにより危険の認識に欠けることがある障がい児・者が、自発的に危険を回避することができず、見守り等を要する状態をいう。」が明記されています。改正の背景には、これまで「常時介護を必要とする状態に関する判断基準表」が主に高齢者介護を念頭に作成されてきたことが挙げられます。今回の見直しによって、障がい児や医療的ケア児の介護も判断基準対象として明確にされました。

常時介護を必要とする状態に関する判断のために、診断書の添付を義務づけるのは望ましくありません

介護休業制度等を利用する場合、前述の「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」に従い、労働者自身が該当の有無を判断し、介護休業等の利用を会社に申請します。会社は、労働者から申し出を受けた場合、労働者に対して対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができます。ただし、この「証明書類」とは「医師の診断書」等に限定せず、要介護状態にある事実を証明できるもので労働者が提出できるものとする必要があります。よく、就業規則等ですべての介護休業制度等の利用申出に医師の診断書の添付を義務づける規定が見受けられますが、こうした取扱いは望ましくありません。よって、書類が提出されないことをもって、直ちに休業させないと判断することはできません。

参考:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)

2025年4月「早期の介護の両立支援に関する情報提供」が義務化

介護休業制度等に関わる情報提供については、2025年4月以降、介護に直面した旨の申出をした労働者に対してだけでなく、介護保険に加入する40歳到達時点で、全従業員に対して書面で行うことが義務付けられます。

<実施時期>

「早期の介護の両立支援に関する情報提供」は、以下①または②のいずれかの時期に実施することとされています。
労働者が40歳に達した日の属する年度の初日から末日までの期間
労働者が40歳に達した日の翌日から起算して1年間
仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、介護に直面した際だけでなく、早い段階(40歳)で介護休業及び介護両立支援制度等に関する内容を網羅的に周知しておくべきとされました。

<情報提供の内容・方法>

「早期の介護の両立支援に関する情報提供」では、「介護休業などの介護に関する両立支援制度の内容」、「介護休業などの介護に関する両立支援制度の申出先」、「雇用保険の介護休業給付金に関すること」、その他「介護保険制度」について、面談 ・書面交付 ・FAX ・電子メール等のいずれかの方法で行うこととされています。

<併せて、介護休業及び介護両立支援制度等を取得しやすい雇用環境整備の措置の義務化への対応も>

2025年度の改正育児・介護休業法では、介護休業と介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければならないこととされました。

① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
少なくとも管理職は、研修を受けたことがある状態にする等
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
相談窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知すること等
③ 自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供
取得事例を収集し、これらを掲載した書類の配布やイントラネットへ掲載すること等
④ 自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知
介護休業・介護両立支援制度等の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを事業所内や
イントラネットに掲示すること等

育児休業制度等への対応の影に隠れがちな介護休業制度等ですが、今後ますます深刻化する働き手不足への対応として、企業における仕事と介護の両立支援への取り組みが重要となります。介護休業制度等の適切な実務対応は、労務管理の専門家である社会保険労務士にご相談ください。

参考:厚生労働省「そのときのために、知っておこう。介護休業制度

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