学習塾経営の基本「労務管理」を見直そう|雇用契約書や給与・有給の取扱い

学習塾経営といえば、しばしば講師等の労働条件の確保に関わる不徹底が問題視されています。基本的に、労働基準法の原則は、業種や従業員規模を問わずどんな職場でも共通して守られるべきものです。しかしながら、個人経営であったり、大手であってもフランチャイズのために経営自体は教室ごとであったりする塾の場合、事業者の認識不足から適切な対応ができていないケースが多々見受けられます。今号では学習塾で労務トラブルとなりやすいポイントを3つ、解説しましょう

学習塾の労務管理のポイント①「学生アルバイトにも雇用契約書が必要です」

学生アルバイトを雇い入れる際、雇用契約書や労働条件通知書を交付しているでしょうか?労働基準法第15条に「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」とありますが、これは従業員が学生であっても例外なく遵守しなければなりません。さらに、賃金及び労働時間に関する事項等の労働条件については書面で交付することになっている点にも注意が必要です。

出典:厚生労働省「労働契約締結時の労働条件の明示 ~労働基準法施行規則が改正されました~_事業主向けリーフレット

ただし、2019年4月1日以降は、労働者が希望した場合には、FAXやEメール、SNSメッセージ等で交付することもできるようになりました。ただし、この場合にも印刷や保存がしやすいよう添付ファイルで送信するべきとされています。

学習塾の労務管理のポイント②「従事する業務に合った給与が設定されていますか」

アルバイト講師のよくみられる給与形態に「コマ給」があり、「授業の1コマ」等を単位として賃金額を決定し、担当コマ数を元に給与計算されているケースは少なくありません。コマ給を設定した場合、授業前の準備や授業後の質問応対、または授業時間外の雑務についての報酬が支払われない場合が多く、学習塾の労務管理上、特に問題視されています。

この点、「授業」と「授業以外」の業務範囲を明確に定め、それぞれについて適切な支払いが行われるように業務管理と労働時間の把握を徹底することが求められます。

従事する業務に合った給与を支払うためのポイント

◎ポイント
1.従事すべき業務が具体的に明示されていること
2.コマ給に含まれる業務が明示されていること
3.従事すべきそれぞれの業務に対する時間単価が明示されていること
4.時間単価の異なる業務ごとに労働時間が把握されていること

[業務の明示]
A 授業
B 授業の準備・片付け、生徒からの質問・相談対応、テスト監督・採点、報告書作成、スケジュール作成・管理、システム入力、ミーティング、テキスト等作成、生徒・保護者との面談、保護者への連絡、販売促進活動、講師研修、朝礼・終礼、生徒の出迎え・見送り清掃、戸締まり 等

[賃金の明示]
・授業給 時間額 ◎◎◎円
・業務給 時間額 ◆◆◆円(「従事すべき業務の種類」のBに掲げる業務)
 ※ ただし、生徒からの質問・相談等により授業が延長した場合は、授業給◎◎◎円で支払う。

「授業給」については1コマが1時間を超える場合、実際の授業時間に合わせた記載も可能です。
ただし、この場合でも、1時間当たりの賃金を明記し、授業の延長等、授業に付随する業務についてはその時間分の支払いがスムーズにできるようにしておくべきです。

例)・授業給 1コマ 80 分 ○○○円(時間額□□□円)
・業務給 時間額 △△△円(「従事すべき業務の種類」のBに掲げる業務)
※ ただし、生徒からの質問・相談等により授業が延長した場合は、当該時間に対し時間額□□□円で支払う。

参考:公益社団法人全国学習塾協会「【行政情報】学習塾における講師等の労働条件の確保・改善のポイント[神奈川労働局]

学習塾の労務管理のポイント③「パート・アルバイトにも有休が発生します」

学生の労務管理において、意外と知られていないのが、「有給休暇が発生する」ことです。確かに、個人的には、学生時代に長期に渡りアルバイトに従事した職場でも、有休を取得したことはありませんでした。
しかしながら、労働基準法上、パートやアルバイト等の雇用形態であっても、一定期間勤続した労働者に対しては有給休暇を付与すべきとされています。

◎ 年次有給休暇が付与される要件
1.雇い入れの日から6ヵ月経過していること
2.その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

[週所定労働時間が30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下、又は1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者に適用される有給休暇取得日数]

出典:厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。

塾経営を考える上で、人材とはまさに「礎」です。適切な労務管理を徹底することで、労働者にとっての働きやすさを実現し、人の確保・定着を図りましょう。

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