2021年の人事労務関連法改正情報総まとめ|年度末に再チェック!

3月も最終週となり、今週4月1日には多くの企業で新年度を迎えるのではないでしょうか。
今号では2021年に施行される人事労務関連の法改正について改めて確認をし、新年度を迎える際にきちんと対応できるよう準備をしておきましょう。

2021年4月以降施行の法改正

まず、2021年4月以降に施行されるものについてです。施行日はもう目前ですが、改めて対応する準備ができているか確認していきましょう。

中小企業も同一労働同一賃金の対象に

施行日:2021年4月1日
対象:中小企業

2021年4月からは中小企業でも、パートタイム労働者・有期雇用労働者への同一労働同一賃金適用となるわけですが、現場においては以下2つの観点からの取り組みが求められます。

  1. 不合理な待遇差の禁止
    同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
  2. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
    非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになります。事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。

関連記事:『2021年4月より中小企業でもいよいよ始まる同一労働同一賃金!実務に役立つ説明文書例を総チェック

中途採用比率公表の義務化

施行日:2021年4月1日
対象:常時雇用する労働者が 301 人以上の企業

2021年4月1日より、常時雇用する労働者が 301 人以上の企業において、各事業年度に一度「正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合」を公表することが義務づけられます。

対象となるのは「国及び地方公共団体以外の労働者を雇用して事業を行う全ての事業主」で、個人事業主であればその事業主個人、会社その他の法人組織の場合はその法人そのものを指します。

関連記事:『労働者数301名以上の企業で義務化される「中途採用比率の公表」!2021年4月1日から

70歳雇用延長が努力義務に

施行日:2021年4月1日
対象:定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主 

高齢者雇用については、現状、65歳までの希望者全員の雇用確保措置として「定年延長」「定年廃止」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講じるべき旨が高年齢者雇用安定法第9条に定められています。

さらに2021年4月からは、働き方改革における人材活用の一環として、70歳までの雇用・就業機会の確保に向けた取り組みが、努力義務として企業に課せられることになります。

措置としては次の①~⑤のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じるよう努める必要があります。

  1.  70歳までの定年引き上げ
  2.  定年制の廃止
  3.  70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
    ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む
  4.  70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5.  70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

※ ④、⑤については過半数組合等の同意を得た上で、措置を導入する必要があります(労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、そして労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の同意が必要です。)。

出典:厚生労働省「パンフレット(簡易版):高年齢者雇用安定法改正の概要
関連記事:『企業に義務付けられる70歳雇用延長|労災防止に「健康や体力の状況の把握」を【2021年4月高年齢者雇用安定法改正案】

36協定の様式変更

2021年4月1日以降届出分の36協定は、以下2点について変更された新様式での届出が必要になります。

✓ 36協定届における押印・署名の廃止
労働基準監督署に届け出る36協定届について、使用者の押印及び署名が不要となります

✓ 36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設
36協定の適正な締結に向けて、労働者代表についてのチェックボックスが新設されます

関連記事:『【2021年4月】またまた、36協定届が変わります!ポイントは「押印・署名廃止」「労働者代表に関わる適格性の確認」

2021年1月~3月施行済みの法改正

上記では2021年4月からの改正されるものを中心に確認してきましたが、これらとは別にすでに1月~3月に改正されたものの中でも人事労務関連で重要な改正があります。これらについても、きちんと対応できているか改めて確認しておきましょう。

子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得

施行日:2021年1月1日
対象:全ての企業

子の看護休暇・介護休暇は、すでに2017年1月1日より半日単位取得が可能となっていますが、2021年1月1日からは時間単位取得が可能となります。

時間単位取得は原則として全ての労働者に適用されますが、一部、時間単位取得が困難な業務がある場合は、労使協定を締結することにより、その業務に従事する労働者を除外することが可能となります。

適用除外とする業務の一例として、厚生労働省は「国際線等の客室乗務員、操縦士、副操縦士等」「長時間の移動を要する遠隔地で行う業務」「交代制勤務による業務のうち夜勤の時間帯に行われる業務」を挙げています。

関連記事:『【2021年1月改正】⼦の看護休暇・介護休暇の時間単位取得が義務化に。よくある事例をケーススタディ

障がい者法定雇用率の引き上げ

施行日:2021年3月1日
対象:常時雇用する労働者が43.5人以上の企業

企業における障がい者の法定雇用率は、2018年4月1日施行の改正障害者雇用促進法で、民間事業主2.3%、国・地方公共団体2.6%まで引き上げられましたが、現状は民間事業主2.2%、国・地方公共団体2.5%とする経過措置がとられています。

このたび、本経過措置については2021年2月末日までとされ、同年3月1日以降は原則通り、民間事業主2.3%、国・地方公共団体2.6%が適用されました。

関連記事:『2021年3月1日以降、障がい者の法定雇用率は民間企業で「2.3%」に

正しい労務管理のためにも法改正の確認を

今号では、2021年(令和3年)の人事労務関連の法改正情報をまとめてご紹介いたしました。
コロナ禍で今までにはなかったような労務問題や、対応しなければならないこともあるかとは思いますが、法改正は順次施行されていきます。
様々な問題に対応しながらにはなりますが、きちんと労務管理を行うためにも、情報収集を行い法改正に対応できるよう準備をしていきましょう。

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事