実務上、「遅刻を帳消しにするため、半休利用を認める」という取扱いをしている会社は多いと思います。
半休とは、有給休暇を0.5日分消化することで、直感的に考えれば、所定労働時間が8時間の会社であれば、4時間分の労働義務の免除に相当します。
ここで、次のような疑問を感じている方はいらっしゃいませんでしょうか?
その疑問とは、「1分の遅刻を帳消しにするために、半休を使った場合、残りの3時間59分はどうなってしまうのか?」ということです。
本稿では、半休と遅刻帳消しの関係について、法的に解説をしてみたいと思います。
そもそも半休とは?
まず、「半休」という制度について確認をしておきたいと思います。
実は、半休は労働基準法などで法的に定義された制度ではありません。法律上定めがあるのは、1日単位の有給休暇と、2010年4月からスタートした時間単位の有給休暇のみです。
半休は、法律に定めはないものの、有給休暇を小分けして取得できることは労働者にとって有利な取扱いのため、就業規則等で定めれば、社内制度として導入することに問題はないと考えられています。
半休制度設計の考え方は?
半休制度を就業規則等で定める場合、有給休暇を「0.5日」消化するといっても、絶対に半休時間を所定労働時間の半分にすることまでは必要ありません。
たとえば、9時始業・18時終業(昼休み12時~13時)という会社であれば、午前半休は9時から12時の3時間、午後半休は13時から18時の5時間、という定義にすることも可能です。
ただし、上記の形では「午後半休のほうが明らかに得だ」という不公平感が生じることもありますので、午前半休を9時から14時の4時間(昼休み1時間を除く)、午後半休を14時から18時の4時間(昼休みをとらずに9時から13時まで勤務して、13時から18時の午後半休も可)というような柔軟な制度設計にすることも考えられます。
ですから、半休制度というのは、労働者に不利益を与えない限り、会社がある程度の裁量を持って設計できるということです。
遅刻を想定した半休制度の設計
ここで、半休と遅刻の関係を改めて考えると、就業規則で午前半休を9時から14時(昼休み1時間を除く)と定義したにもかかわらず、1分の遅刻を帳消しにするために、4時間分の半休を利用することは、やはり違和感があります。9時1分から14時までは「半休を取得しながら実働している」という法的に異常な状態が生じてしまいます。「労働義務が無い時間帯に現実的には働いている」ということで、どう考えても合理的な説明が成り立ちません。
では、どうすれば良いのでしょうか?
この問題を解決するためには、午前半休を9時から14時の間の最大4時間(昼休み1時間を除く)、午後半休を14時から18時の間の最大4時間(昼休みをとらずに9時から13時まで勤務して、13時から18時の午後半休も可)というように、「最大」という文言を追加することが考えられます。
こうすることで、半休は、本人の選択により、「1分以上4時間以下」の範囲で取得できるという柔軟な制度設計にすることが可能となるのです。
このような前提があれば、1分遅刻した場合にも、「1分の半休+3時間59分の実働」という法的に矛盾のない状態が成立します。
なお、会社が遅刻をした従業員に強制的に半休を取得させることは違法になりますのでご注意ください。
本人が「遅刻」という勤怠記録が残ったり、給与から1分の遅刻控除をされたりすることのデメリットと、1分の遅刻で有給「0.5日」を消化することのデメリットを比較して、自主的な判断に委ねるということがポイントになります。
遅刻に半休を認める必要は無い
別の考え方としては、有給休暇は法的には遅くとも前日までの申請が必要なので、そもそも論として、遅刻時に、当日や事後の申請を認める必要はありません(当日や事後の有給申請は、会社が恩恵的に認めているという扱い)。
「遅刻をしても半休でカバーすればいいや」と従業員が考え、社内のモラルが緩むことが懸念される場合は、遅刻に半休を利用すること自体を社内制度として認めないことも可能です。このような選択肢があることも、合わせて覚えておいてください。
まとめ_自社の半休制度がどのような設計・運用なのかチェックが必要
なんとなく慣習的に運用されていることが多い、遅刻を半休でカバーする制度ですが、この機会に、自社の半休制度がどのような設計・運用になっているかをチェックしてみてください。