再度の緊急事態宣言発出で、今一度見直すべき「職場の感染防止対策」

一都三県に対しいよいよ発令された二度目の緊急事態宣言を受け、企業においては諸々対応に追われているところではないでしょうか。即時に「全社在宅勤務」とできれば良いのでしょうが、すぐに体制を整えることが難しい現場では、職場の感染防止対策強化を図りながら、並行してテレワーク制度の整備に取り組んでいかなければなりません。今号では、職場で講じるべき新型コロナウイルス感染症対策を検討する上で、役立つ資料をご紹介します。

職場の新型コロナウイルス感染拡大防止の役立つガイドブックを要チェック

職場における感染症対策を講じる際には、一般社団法人日本渡航医学会と公益社団法人日本産業衛生学会が公表した「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド 第4版」が参考になります。新型コロナウイルス感染症の流行の兆しが見え始めた2020年2月17日の初版掲載後、度重なる更新を経て2020年12月15日に第4版が公開されたばかりです。もちろん、今後も随時必要な情報が追加されていくことが予想されますので、企業においては定期的に確認したい資料となります。

ガイドブックには、事業所における消毒の正しいやり方や換気の方法、従業員の行動変容強化に必要な事項、在宅勤務における健康管理、出張に関わる考え方等の感染症対策の他、実際に従業員の中に感染者が出た際の対応、事業者の法的対策のポイント等が網羅されています。

「消毒」の基本を知る

新型コロナウイルス感染症対策の基本として幅広く取り組まれている消毒について、心得ておくべき基本的な考え方をガイドラインより抜粋します。
ウイルスや菌の除菌に有効として市販されている次亜塩素酸水を事業所の消毒に利用するケースもあるかと思いますが、使用には注意が必要のようです。一方で、次亜塩素酸水と名称が似通っている次亜塩素酸ナトリウムについては使用が推奨されています。「消毒剤に何を用いるか」について、正しい知識を備えなければならないことが分かります。

日常的な消毒作業を見直す

加えて、通常の環境消毒の方法として取り組むべき方法についても以下の通り明記されています。

  • 不特定多数が触れるドアノブ、手すり、エレベーターのボタンなどを定期的に消毒する
  • 不特定多数が利用するトイレ(床を含む)を定期的に消毒する
  • 消毒は最低でも1日1回行うこと(複数回実施することが望ましい)
  • 机や椅子、パソコン、電話機などは、退社直前に(共用であれば使用前後にも)毎回各自でアルコールで清拭消毒することが望ましい

新型コロナウイルス感染症対策としてすでに行っていることでも、ガイドラインの中で改めてその妥当性が確認できれば安心ですね。ちなみに、フリーアドレス(座席自由制)を導入している事業場では、座席や備品の使用前後の消毒の他、「行動履歴の記録」も必要になります。

[行動履歴の記録]

  • 従業員は使用したデスクや立ち寄った場所を記録(行動履歴の記録)し、感染者が発生した際に接触者を常に確認しやすい状態にしておく
  • 接触者のトレースを確実にするための対策として、従業員の執務場所(階やエリア)を可能な範囲で限定することは有効である

対面業務における感染症対策

不特定多数の人と対面する窓口業務やレジ業務では、原則的な感染症対策である「マスク着用」「手指衛生」「3密の回避」に加えて、以下の追加対策を講じるべきとの記述があります。

  • 飛沫防止のための不燃性透明シートやアクリル板などの設置を行う
  • 必要に応じて、フェイスシールドを着用し目からの感染を予防する
  • 換気を徹底する、大声で会話をしない、人と人との距離を確保する(店舗等で列に並ぶ場合はできるだけ2m 距離をおく)などの対策を行う

街中では「フェイスシールドを着用してマスクはつけない」等の姿を見かけることがありますが、フェイスシールドはあくまで飛沫による眼粘膜からの感染を防止するものであり、マスクのように吐き出しおよび吸い込み飛沫量を抑えるものではないことを理解しなければなりません。そう考えると、フェイスシールドとマスクは「併用が原則」となります。ただし、息苦しさ等の問題がありますから、従業員がマスクを外した休憩をなるべくこまめにとれるようにする等の配慮が必要です。

また、ガイドライン内の「マウスシールドについては吐き出しおよび吸い込み飛沫量を防ぐ効果は期待できないので、感染予防の目的でマウスシールドを使用してはならない」という記述にも驚かされます。間違った感染症対策が、いかに巷に蔓延しているかがよく分かりますね。

ガイドラインで細かな点を確認していくことで、事業場内での感染症対策が確実なものとなります。思い込みや「みんなそうしているから」といった曖昧な基準で考えることのないよう、くれぐれもご注意ください。

参考:一般社団法人日本渡航医学会・公益社団法人日本産業衛生学会「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド 第4版

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事