ハローワーク求人でトラブル続出!知っておくべき「固定残業代」に関わる正しい表記

知らぬ間に違法状態?!固定残業代制に潜むリスク

御社は、「固定残業代制」を導入しているでしょうか?

最近では、毎月支給する給与の一部として、一定額の手当を固定で設定する会社を多く見かけるようになりました。この「固定残業代制」を導入することで、会社側には給与計算に関わる業務負担をぐっと減らせる、計画的な残業命令が可能になる等のメリットが期待できます。しかしながら、誤った運用をしてしまうことで、「時間外労働に関わる管理がずさんになっている」「適切な割増賃金を支払っていない」「新たに導入したが、賃金設計に誤りがあり最低賃金を下回っている」等の問題が生じるケースは決して少なくありません。

また、労働者側にしてみれば「どんなに働いても残業代は変わらない」といったネガティブなイメージにつながっていることもあるでしょう。現に、Yahooで「固定残業」と検索すると、キーワード候補に「ブラック」の文字が。求職者の中には、あえて固定残業代制の導入企業を候補から外す人もいるようです。

便利である一方、注意が必要な固定残業代制。今一度、正しい認識を元に、運用方法を見直してみましょう。

「固定残業代制」導入でも、場合によっては別途残業代が必要

既に冒頭で触れたとおり、「固定残業代制」は、毎月一定額を残業代として支給する制度のことです。ただし、“あらかじめ設定した固定残業代さえ支払っていればそれ以上の支払は必要なくなる”ということではありません。

導入に際しては、事前に「ひと月あたりに想定する残業時間数」と「設定した残業時間数に見合った残業代」を定めておき、当然のことながら、設定した残業時間数を上回る時間外労働が生じた場合には別途割増賃金を支給しなければなりません。

この点、誤解されている事業主様も多いようで、就業規則等を見ると「〇時間以上労働しても割増賃金は支給しない」等とはっきり書かれていることもあります。しかしながら、このような取扱いは違法ですのでご注意ください。

「固定残業代」の表記に関わる、ハローワーク求人時の注意点

時間外労働やその賃金については、ハローワーク経由の求人の中でもトラブルの多い事例です。特に「固定残業代制」を導入している求人については、求職者より「想定される残業時間が分かりづらい」「求人票と実態に相違がある」等の申出が多数寄せられています。

このような状況を背景に、ハローワークからは「求人申込書記入上の注意点」として、固定残業代の表記に関わるルールの周知徹底が図られています。

参照:厚生労働省『賃金欄「固定残業代の表示について」』

この点は、2016年10月に施行された青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)の改正項目であることから、人材募集をする雇用主であれば「知らなかった」では済まされません。

参照:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。

固定残業代制を導入する際のルール

固定残業代制を正しく導入するためには、下記のルールを徹底する必要があります。

  • 諸規程の整備と従業員への周知

固定残業の支給がある旨を、就業規則や給与規程に明記しておく必要があります。

その際、あらかじめ設定した残業時間数(固定残業代の対象となる時間数)を超えた場合、休日・深夜労働が生じた場合には、追加で割増賃金を支払う旨の記載も忘れてはなりません。

併せて、具体的な固定残業時間数と残業代は雇用契約書にも記載し、個別に通知しておく必要があります。

例)〇 基本給 200,000円、固定残業代(30時間分)70,000円

× 基本給  270,000円(固定残業代30時間分を含む) ⇒残業代が不明

× 基本給 200,000円、固定残業代 70,000円⇒残業時間数が不明

 

  • 賃金台帳・給与明細への正しい記載

固定残業代については、基本給や他の手当とは別に記載し、分かりやすいようにしておきます。

また、新たに固定残業代制を導入する会社の場合、“総支給額を据え置きにしつつ、その枠の中で固定残業代を設定する”といったケースがほとんどかと思います。それに伴い、基本給を調整(減額)するならば「不利益変更」に該当しますので、従業員への十分な説明が必要になります。

 固定残業代制の導入には「正しい勤怠管理」が必須

ところで、御社では現状、平均して月何時間程度の時間外労働が生じているか、正しく把握できているでしょうか?固定残業時間数を「だいたいの感覚で決めてしまっている」という会社は少なくありませんが、この場合、意図しないところで違法状態となっていたり、実際よりも手厚い残業代を支払っていたりということになりかねず、これでは“百害あって一利なし”です。

固定残業代制を導入する上では、従業員の労働時間数の適正把握が不可欠。ごく基本的な観点ではありますが、意外と疎かにしがちなポイントでもあるため、改めて勤怠管理体制を見直されてみると良いでしょう。

 

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