「年収の壁・支援強化パッケージ」に盛り込まれた、キャリアアップ助成金新設「社会保険適用時処遇改善コース」

前号では、厚生労働省より公表された「年収の壁・支援強化パッケージ」の全体像をご紹介しました。打ち出された施策のうち、労使双方の関心を集めているのは、新設されたキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」ではないでしょうか?本助成金に関してはさっそくパブリックコメントが実施されておりますので、制度概要や各メニューの助成内容について改めて確認しておきましょう。

新設!キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」

キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コースとは、短時間労働者が社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用による手取り収入の減少を意識せず働くことができるよう、労働者の収入を増加させる取り組みを行った事業主に対して、労働者1人当たり最大50万円の支援を行うものです。いわゆる「年収106万の壁」への対策となります。

「労働者の収入を増加させる取り組み」として、具体的に3つの方法が想定されます。

① 手当等により収入を増加させる取り組み
② 労働時間の延長と賃金の増額を組み合わせる取り組み(現行の短時間労働者労働時間延⾧コースの拡充)
③ ①(手当等による収入の増加)と②(労働時間の延長)を併用する取り組み

以下、上記①~③それぞれの取り組みに応じた助成金メニューを解説します。

① 手当等支給メニュー


手当等により収入を増加させる取り組みを講じた事業主が申請できる「手当等支給メニュー」では、「社会保険適用促進手当」を支給する等して助成金支給対象要件を満たすことで、継続的に短時間労働者の保険料負担軽減に取り組むことが目指されます。向こう3年間の従業員1人あたりの助成額と要件は、以下の通りです。

<1年目>20万円:賃金の15%以上分を労働者に追加支給
<2年目>20万円:賃金の15%以上分を労働者に追加支給するとともに、
3年目以降、以下③の取組が行われること
<3年目>10万円:賃金の18%以上を増額させていること
※大企業における助成額は上記額の3/4

「手当等支給メニュー」の取り組みは、当初に提出するキャリアアップ計画に基づいて行われることとします。1年目、2年目の「賃金」は「標準報酬月額及び標準賞与額」を指し、追加支給については標準報酬月額の算定に考慮されない「社会保険適用促進手当」等の一時的な手当による支給も認められます。3年目の「賃金」は「基本給」を指しますが、1年目、2年目に支給した一時的な手当を恒常的なものとする場合には、当該手当を含むものとします。なお、3年目の取り組みを2年目に前倒しで行い、まとめて助成を受けることも可能となるようです。

② 労働時間延⾧メニュー

「労働時間延長メニュー」とは、以下のいずれかの取り組みを講じて短時間労働者を新たに社会保険被保険者とした事業主の助成金制度です。

・ 短時間労働者の週所定労働時間を4時間以上延長した
又は
・ 週所定労働時間を1時間以上4時間未満延長するとともに賃金(基本給)を一定の割合以上増額させた

各取り組みに関わる助成額は以下の通りです。

※大企業における助成額は上記額の3/4

本メニューは、現行のキャリアアップ助成金「短時間労働者労働時間延⾧コース」の拡充版となります。現行制度は、週所定労働時間を3時間以上延長した、又は週所定労働時間を1時間以上3時間未満延長するとともに賃金を一定の割合以上増額させたことにより当該有期契約労働者等が新たに社会保険の被保険者となった場合の助成制度です。こちらは2024年9月30日までの暫定措置となっていますが、この期限内は現行の「短時間労働者労働時間延⾧コース」を選択することも可能となります。

参考:厚生労働省「『キャリアアップ助成金』を活用して従業員の社会保険への加入を図りませんか?

③ 併用メニュー

この他、①(手当の支給)と②(労働時間延長)を組み合わせる取り組みも助成対象となります。この場合、1年目に①の取り組みによる助成(20万円)を受けた後、2年目に②の取り組みによる助成(30万円)を受けることが可能となります

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は2025年度末までの暫定措置

今号でご紹介したキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、パブリックコメント実施後、2023年10月下旬に公布され、2023年10月1日に遡及して適用となる見込みです。また、2026年3月31日までの暫定措置とされますので、活用をご検討中の事業主様はお早めに社会保険労務士までご相談ください!

参考:厚生労働省「「年収の壁」への当面の対応策
e-Govパブリックコメント「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について

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