「休日」の定めは適正ですか?正しい給与計算を行うための「法定休日」「年間休日数」の考え方

就業規則の絶対的記載事項のひとつに「休日」に関わる定めがあります。これは単に、労働者に対していつが休日なのかを示すだけでなく、適正な給与支払いを行う上でも、実態に則した形で定めておくことが重要です。今号では、給与計算を踏まえた正しい「休日」の定目について考えてみましょう。

給与計算上、留意すべき「休日」の定め

就業規則に規定する「休日」とは「会社が独自に定める休日」のことで、これに関して労働基準法上の定めはありません。法律上はあくまで「少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日(法定休日)」の付与を義務付けているのみで、この下限を満たす限り、会社は自由に休日を定めることができます。何曜日を休日としなければならないのか、年間休日数をどの程度にしなければならないか等、法律で具体的に決められているわけではありません。
ただし、給与計算上、就業規則の「休日」がどのように定められているかは「割増賃金」を適正に計算する上で重要です

「法定休日」と「所定休日」

割増賃金の計算では「1時間当たりの賃金」がベースとなるため、対象者が時給者の場合はさほど混乱はないでしょう。時給1,100円であれば、1日8時間・週40時間超の時間外労働分の時給は1,375円(割増賃金率25%)、法定休日労働分の時給は1,485円(割増賃金率35%)となります。
ただし、法定休日労働を考える上では、いつが法定休日なのかが重要になります。例えば、シフト制労働者がシフトに入っていない日に労働したとしても、それが法定休日労働に該当しない場合、その日の労働については通常時給の支払い対象となるか、もしくは週40時間超となる部分に関しては時間外労働の割増賃金の支払い対象となるかのいずれかとなります。

関連記事:『法定休日と法定外休日の違いとは?割増賃金、代休と振替休日の違い、36協定も解説

「年間休日数」と給与計算の関係性

月給者の割増賃金計算では、まず1時間当たりの賃金を算出しなくてはなりません。この計算において、年間休日数が必要になります。月給者の時給算定を、具体例で考えてみましょう。

例:月給 20万円
1日あたりの所定労働時間 8時間
年間休日数 125日

 
365日-125日=240日
240日×8時間=1920時間(年間の労働時間)
1920時間÷12=160時間(1ヶ月の平均所定労働時間)
20万円÷160時間=1,250円(1時間当たりの賃金)

年間休日数が明らかでない場合、月給者の時給換算が正しく行えず、割増賃金計算に問題が生じることになります

就業規則上の「休日」の定めを確認しましょう

御社の就業規則では、「休日」についてどのような定めになっているでしょうか?月給者の場合、休日日数が割増賃金の算定に影響を及ぼすため、実態に合う様に正しく整備しておく必要があります
厚労省公開のモデル就業規則では、変形労働時間制を導入しない場合の規定として、以下の通り「完全週休2日制」の規定例が盛り込まれています(1ヶ月及び1年単位の変形労働時間制の「休日」の規定例は別にあります)。この「完全週休2日制」の規定を土台に、現場に則した「休日」の定めを検討しましょう。


出典:厚生労働省「モデル就業規則(令和3年4月)

年次有給休暇の取得を前提とした年末年始、夏季休日の記載方法

例えば、年末年始や夏季休日として、各々好きな時期に年次有給休暇を取得してもらっている場合、会社の休日に「年末年始」「夏季休日」を盛り込む必要はありません。年次有給休暇の取得を前提とするならば、会社の「休日」ではないからです。また、もしも会社が時季指定をして年末年始や夏季休日として有休を消化させるならば、「休日」に盛り込むのではなく、「計画的付与制度」として年次有給休暇の項目に定めを置かなければなりません。

シフト制の場合、シフトに入っていない日の記載方法に注意

週4日のシフト制の場合、勤務のある週4日以外の週3日を休日と定めているケースが見受けられます。この場合、この他に会社としての休日(全社休業日や年末年始・夏季休日等)を別に定める場合、年間休日数を計算する際には、「年52週×週3日=156日」とは別に、その他会社独自の休日を付与するものとして考える必要があります。しかしながら、実際には週3日の休日とその他の休日が重複することは大いに考えられるため、実態に則した規定とは言えません。
この場合の規定は実際の状況に鑑みて慎重に検討する必要があり、ここで一例をご紹介することはできませんが、以下に基本的な考え方が示されているので参考になさってみてください

参考:厚生労働省「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項

法定休日の定めは適切ですか?

就業規則の「休日」の定めで、法定休日となる曜日を特定していれば、その日の労働については休日割増の支払いが必要です。曜日を特定していなくても、週の起算日(曜日)を特定している場合、その曜日を起算日とした1週間のうち、最後の休日が法定休日となりますので、この日に労働していればやはり休日割増の対象となります。このあたりを考慮して、法定休日が適切に定められているかを確認しましょう。

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