きちんと出来ていますか?テレワーク時の労働時間の把握義務と実務対応

コロナ禍は長期戦の様相を呈し、多くの企業において、テレワークは暫定対応から恒久的な社内制度へと位置づけも変わりつつあります。

そのような中、テレワーク時の勤怠管理についても、改めて自社の体制に不備が無いかを確認しておきたいところです。

テレワークでも労働時間の把握義務はある

テレワークであったとしても、事業主には労働時間の把握義務があるというのが大前提です。所定労働時間を超えたら時間外割増手当、休日出勤があった場合は休日割増手当を支払わなければならないというのは、通常のオフィス勤務時と同様です。

テレワーク勤務に対しては「みなし労働時間制」が使えるので、労働時間の把握義務は無いのではないか、という質問を受けることがしばしばあるのですが、その考えは、3つの意味で間違いがあります。

1つ目は、テレワークであっても、無条件に「みなし労働時間制」が認められるわけではないということです。たとえば、コールセンター業務を在宅で行う場合のように、在宅であっても離席の自由等が認められず、事業主から時間管理を受けているというような場合は、通常のオフィス勤務時と同等の時間管理を行う必要があります。

2つ目は、合法的にテレワークに対する「みなし労働時間制」が認められる状況であったととしても、支払が不要になるのは勤務日の時間外手当のみで、深夜割増手当や休日割増手当の支払は必要になるということです。ですから、深夜勤務や休日出勤があったかどうかを事業主が把握するために、「みなし労働時間制」が適用される場合においても、事業主は労働時間を管理しなければならないのです。

3つ目は、労働時間の管理は、給与計算のためだけでなく、従業員の健康管理のためにも行うべきものであるということです。過重労働が発生していないかということや、労働安全衛生法で定められた産業医との面談の対象となる労働者がいないかなどを把握するため、テレワーク時に「みなし労働時間制」が適用されても、労働時間管理は必要です。

テレワーク時の労働時間の把握のポイント

以上のように、テレワークでも労働時間の把握義務があることを説明しましたが、続いて、具体的に、どのようなことに気を付けてテレワーク時の労働時間の把握を行えば良いかを説明します。

テレワークの場合は、全社員の自宅に打刻機を置くというのは現実的ではないので、クラウド勤怠管理システムのスマートフォンアプリやデスクトップアプリを用いて始業や就業の打刻をすることが有力な選択肢になります。

しかし、テレワーク時の課題としては、本当に始業時刻、終業時刻に打刻がなされたのかを把握するのが難しいということがあります。

オフィス勤務であれば、残業申請が出ていないのに残業をしている従業員がいれば、直属の上司や人事労務担当者が現認して声をかけ、帰宅をさせるなり、残業申請を出させるなり、といった対応をすることが可能です。

しかし、テレワークにおける打刻の場合は、原則としては従業員が正しく打刻をしてくれているという「性善説」に頼らざるを得ません。

その上で、終業打刻後にメールが送られていないかとか、パソコンを起動したログが無いかといったことを管理者が適宜確認し、クラウド勤怠管理システム上の本人の打刻と乖離があった場合は、理由を確認する必要があります。

この点、企業によっては、従業員のPCの電源のオンオフ情報そのものを、正式な勤怠記録として採用している企業もあります。業務用PCの私的利用は完全に禁止し、PCのオンオフを勤怠記録として打刻する機能を持ったソフトウェアをインストールすることで、このような形での勤怠管理も可能となります。

労働時間の把握ができていないことに対するリスク

テレワーク時に限ったことではありませんが、労働時間の管理が正しく行われていなければ、労働基準監督署の調査があった際には、指導や是正勧告の対象となります。

また、労働時間が把握できていないことは、未払い残業代の温床となります。とくにテレワークでは、上長や人事労務担当者の見えないところで従業員が残業を行っている可能性があります。裁判になると莫大な額の未払い残業代の精算を求められるリスクがありますので、テレワークの場合は、メールの送信時間やPCの操作ログのチェックを行い、気になる点があれば上長や人事労務担当者が本人に確認しましょう。

自分の労働時間を正しく申告できない従業員をテレワークに従事させてはなりません。そのような従業員にテレワークを認めていること自体が、そのまま会社のリスクとなります。ですから、テレワーク対象者には研修(ZOOMなどでのWEB研修を含む)を行い、労働時間管理の重要性を認識してもらいましょう。

それでも労働時間を正しく自己管理できない従業員には、始末書等の懲戒処分を課したり、テレワークを禁止して出社を求めるなどの対応が必要になります。(目下はコロナ禍で出社を求めるのは難しいですが)

勤怠管理のルール整備は、はじめの第一歩

テレワークは、コロナ禍対応としても、業務の効率化やワークライフバランスという視点においても、非常に有効な手段です。有効な手段であるからこそ、労使双方が安心して利用できる社内ルールの整備が必要になります。その中でも、勤怠管理のルール整備は、まさに、はじめの第一歩と言えるのではないかと筆者は考えます。

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