働き方改革推進支援助成金とは?|注目すべきポイントや支給要件の変更の変更等を解説

2020年4月からは中小企業にも時間外労働の上限規制が適用となり、2019年4月から始まった働き方改革が本格的に進められています。働き方改革を支援する助成金は多く用意されていますが、その中の一つである「時間外労働等改善助成金」は今年度より「働き方改革推進支援助成金」に改称され、支給要件も変更されました。本稿では、働き方改革を進める上で多く利用されている働き方改革推進支援助成金の概要と今年度からの変更内容をご紹介します。

働き方改革推進支援助成金の概要

働き方改革推進支援助成金の支給対象となる事業主

働き方改革推進支援助成金の支給対象は中小企業事業主です。働き方改革に取り組むためには様々なコストがかかりますが、経営体力が十分ではない中小企業を対象とすることで、その名の通り働き方改革を行うことを支援する助成金です。
対象となる中小企業事業主とは、以下のAまたはBを満たす事業主となります。

働き方改革推進支援助成金の対象となる成果

助成金の対象となる働き方改革の具体的成果としては、労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバルやテレワークの導入が挙げられており、目標とする成果によって下記の4つのコースが用意されています。

1.労働時間短縮・年休促進支援コース
2.勤務間インターバル導入コース
3.団体推進コース
4.テレワークコース

※4.テレワークコースは申請多数のため交付申請の受付が締め切られました。ただし、働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)については、新たに募集が開始される予定です。(2020年8月12日時点)。
※新型コロナウイルス感染症対策として、労働者が利用できる特別休暇の規定を整備する職場意識改善特例コースも用意されています。交付申請期限は2020年9月30日までです。

働き方改革推進支援助成金の対象となる取組

成果目標を達成するために行った取組にかかった費用が助成対象となります。各コースによって対象となる取組は異なります。

※労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コースの場合

  1. 労務管理担当者に対する研修
  2. 労働者に対する研修、周知・啓発
  3. 外部専門家によるコンサルティング
  4. 就業規則・労使協定等の作成・変更
  5. 人材確保に向けた取組
  6. 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  7. 労務管理用機器の導入・更新
  8. デジタル式運行記録計の導入・更新
  9. テレワーク用通信機器の導入・更新
  10. 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

働き方改革推進支援助成金の支給額

取組の実施に要した費用の一部が、成果目標の達成状況に応じて支給されます。
例)費用の合計額×3/4(上限額100万円)

働き方改革推進支援助成金の注目すべきポイント

多くの事業主の働き方改革の課題は、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得促進ですが、これらの課題への取組のために「労働時間短縮・年休促進支援コース」「勤務間インターバル導入コース」が広く利用されています。ここからはこの2つのコースに絞ってポイントをご紹介します。

幅広い取組に利用可能

注目すべきは対象となる取組です。
上記の通り「労務管理用機器やソフトウェア」「労働能率の増進に資する設備・機器等」の導入や更新にかかる費用が、助成対象として認められます。
手書きのタイムカードからデジタルな記録を残せる勤怠管理システムに移行することも助成対象になりますし、このような労務管理用ソフトウェアに限らず、労働能率の増進に資する設備や機器等が対象となっていることにより、メインのビジネスの業務を効率化するソフトウェアや機器も助成対象となります。
例を挙げると、次のような業務負担を軽減する、あるいは生産性の向上により労働時間の縮減に資する取組も助成対象となります。

  1. 小売業においてPOS装置を導入して在庫管理の業務効率化を上げる。
  2. 医療現場においてバイタルセンサーを導入して血圧測定の時間を縮減する。
  3. 設計現場において高性能なCADシステムを導入して作図に要する時間を短縮する。
  4. 美容業で美容機器を購入して複数の施術時間を短縮する。

厚生労働省のHPには他にも多くの助成金活用事例が掲載されています。自社の課題にあわせて、取組内容を選択しやすいのが大きなポイントです。

支給要件の変更

2つのコースについて、変更となった支給要件は次の通りです。

  • 全ての対象事業場において、36協定を締結・届出していること
  • 全ての対象事業場において、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること

→就業規則等への記載(常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合)
→年次有給休暇管理簿の作成(常時10人未満の労働者を使用する事業場の場合)

2019年4月から年5日の年次有給休暇取得義務化が始まりましたが、同時に年次有給休暇管理簿の作成と保存(3年間)も義務化されました。助成金の要件としても、この義務を果たしているかどうかが確認されることとなります。就業規則の作成義務がない常時10人未満の労働者を使用する事業場の場合であっても、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者全員分の年次有給休暇管理簿を提出することが必要となりますので注意が必要です。

年次有給休暇管理簿はエクセルや手書きでも問題ありませんが、法律で定められた記載事項もありますので、勤怠管理システム等を導入して自動的に作成できる環境を整えていただくのがお勧めです。

年次有給休暇に関する内容だけでなく、36協定や残業代未払いがないか等、その他の労働関係諸法令の違反がないかどうかも審査されますので、専門家に確認いただきながら進めていただくのが一番です。

助成金は、国の「こうありたい」という方針が反映されます。働き方改革推進支援助成金には、少子高齢化や日本の労働生産性が低迷していることなどの重要課題に手を打つ取り組みを推進したいという国の想いが託されています。
うまく活用して、働きやすく、いきいきとした職場づくりに役立てていただければと思います。

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事