【社労士が解説】臨検で指摘されやすいこととは?|指摘の多い法違反と勤怠管理の重要性について

労働基準法とその関係法令の違反を取り締まる労働基準監督署。この労働基準監督署の監督官が事業所を訪ね、法律に則った事業運営が行われているか調査することを臨検監督(臨検)と言います。今回は臨検の調査の中で、特に指摘の多い事項と勤怠管理の重要性について、解説いたします。

臨検で指摘の多い法違反

厚生労働省が労働基準行政の活動状況を収録した「労働基準監督年報」の平成30年のデータによると、監督調査の実施状況は全国で170,192件です。そのうち、労働基準法の違反で一番多い事項は、「労働時間(28,621件)」、次いで「割増賃金(20,987件)」、「労働条件の明示(13,058件)」と続いています。

第一位の「労働時間」は、法定労働時間または36協定で定めた労働時間を超える労働をさせている違反で、第二位の「割増賃金」は、時間外・休日労働及び深夜労働に対する割増賃金が正しく支払われていないという違反です。

「労働時間」(労働基準法第32条)の違反

臨検では、監督官が、労働者名簿、勤怠記録、賃金台帳などを確認するケースが一般的です。勤怠記録を確認した結果、法定労働時間を超える労働、あるいは36協定で定めた時間を超える時間外労働が認められると労働基準法第32条に違反することとなり、是正勧告の対象となります。特別条項で定めた「限度時間を超えることのできる回数(上限6回)」を上回る時間外労働が行われている場合も該当します。

勤怠記録を確認する過程では、手書きのタイムカードではなく勤怠システムを利用した労働時間の記録であっても「適正に労働時間の把握がなされているかどうか」について実態調査が実施されることがあります。具体的には、オフィスビルの入退館の記録、メールの送信記録、金庫の開閉記録、パソコンや警備システムのログ等と勤怠記録の突き合わせを行い、乖離があった場合には、実態調査が行われます。乖離している時間が「新人歓迎会(任意参加)の会場探しで残っていた」、「食事休憩を取っていた」時間などであれば労働時間には含まれませんが、労働時間と認められた時間については、未払い割増賃金を遡って支払う必要があります。

対応策として、時間外・休日労働及び深夜労働を事前の許可制にしておくことで、会社が時間外労働等の時間数を管理することが可能になりますが、臨検では、「必要な残業なのに上司が認めていないということがないか」、「適正な残業申請や承認を阻害している要因がないか、会社はチェック・指導しているか」という点にまで踏み込んで調査が行われます。したがって、事前の許可制を理由として、勤怠記録と実態が乖離している時間のすべてについて、労働時間ではないと認められるわけではありませんのでご注意ください。

「割増賃金」(労働基準法第37条)の違反

厚生労働省によると、平成30年度に時間外労働等に対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した企業数は1,768企業です。そのうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは228企業、支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり704万円、労働者1人当たり10万円との調査結果が公表されています。

厚生労働省では、引き続き、賃金未払い残業の解消に向け、監督指導を徹底していくとの方針を打ち出していますので、引き続き未払い割増賃金の存在は企業経営に大きな影響を及ぼすと言えるでしょう。

出典:厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)

未払い割増賃金が指摘される主なポイントは以下のとおりです。

  • 残業時間の不適切な把握方法
  • 割増賃金の発生についての認識不足
  • 残業時間の集計方法の誤り

一つ目の「残業時間の不適切な把握方法」とは、労働時間の違反の章でお伝えしたとおり、勤怠の記録が客観的でない、あるいは勤怠記録と実労働時間の間に乖離があるようなケースが該当します。

二つ目の「割増賃金の発生についての認識不足」とは、裁量労働制の適用労働者や管理監督者の深夜労働に対する深夜割増賃金を支払っていないようなケースです。裁量労働制の適用対象者あるいは管理監督者であっても、22時以降翌日5時までの深夜労働に対しては、割増賃金の支払いが必要です。また、裁量労働制の適用者であれば、休日労働に対して割増賃金の支払いも必要です。このことを会社が正しく理解をせずに未払いが発生してしまっているケースが見受けられます。

三つ目の「残業時間の集計方法の誤り」とは、1日の残業時間を15分または30分単位等で切り捨てして集計しているようなケースです。労働時間は、原則として、1分単位で計算しますが、労働基準法では、1か月における時間外・休日労働及び深夜労働のそれぞれの時間数の合計に1時間未満の端数が生じた場合、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは認められています。しかし、1日の単位で労働時間の端数の切り捨ては認められていないため、そのような方法は労働基準法に違反することになり、日々未払い賃金が発生することになります。

労働時間の適正な把握の義務

労働時間の適正な把握は「行った方が良いこと」ではなく使用者の「義務」です。使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。把握の対象は一般労働者だけではありません。働き方改革の一環として、2019年4月に施行された改正労働安全衛生法により、医師の面談指導を適切に実施するため、管理監督者を含めたすべての労働者(高度プロフェッショナル制度適用者を除く)について、客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握する義務が事業主に課せられています。

事業主が労働者の労働時間を把握することにより、長時間労働の防止、残業代の抑制が期待できるだけでなく、労働時間の適切な管理を行うことで、従業員も時間に対する意識が芽生えて業務効率が上がったり、長時間労働による労働者の健康被害を防ぎ体調不良による突然の休職や退職を防いだりする効果も期待できます。

長時間労働により労働者の健康が害された場合、労働者の労働時間の管理を怠っていたことが安全配慮義務に違反するとして事業主が労働者から損害賠償を請求されるおそれがあり、本業のビジネスにも大きな影響を及ぼす可能性もあります。

このように、労働者の労働時間を把握することは、企業価値の増大やリスクの軽減につながるという意義もありますので、事業主としては、積極的に取り組むべきポイントと言えます。

「デジタル庁」の創設で、ますます行政のデジタル化が進み、これまでよりも速いスピードでデジタル化が進んでいます。手入力のタイムカードで勤怠管理を続けていると、時代に取り残されている印象を与えてしまうかもしれません。大事な会社、大事な社員を守るためにも、まずは客観的で適切な記録に基づく勤怠管理から始めてみませんか。

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汐留 社会保険労務士法人

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