「男性の育児休業取得が義務化される?」
最近、こんなことを聞いたことがありませんか?
実は、2021年6月3日に成立した改正育児・介護休業法の大きな目玉が、男性が育休を取得しやすい職場環境の形成を目指すものなのです。ただし、「1歳未満の子どもを育てる男性社員に対して、企業は必ず育休を取得させなければならないない」といった企業に取得の義務付けをさせたものではありません。
そこで、男性の育休にスポットをあてて改正育児・介護休業法に対して、企業としてどのように対応すべきかご紹介します。
男性の育休の現状
厚生労働省の「令和元年度雇用均等基本調査」によると、育児休業取得率は女性が83.0%と高い数字ですが、反対に男性は7.4%と依然として低い数字にとどまっています。政府は、20025年までにこの数字を30%に引き上げることを目標に、男性の育休取得を促進するために法律を改正したのです。
出典:厚生労働省「男性の育児休業取得推進等に関する参考資料」
男性の育休に関する法改正について
今回の育休に関する法改正は、かなり多岐にわたっていますが、男性の育休にポイントを絞って見ていきましょう。
1.出生時の育児休業を新設(2022年10月施行予定)
「男性版産休」と呼ばれる制度です。子どもの出生後8週間以内に4週間までの育休を取得することができるようになります。産後うつの問題など子どもが生まれたばかりで大変なこの時期に配偶者に寄り添うことができるので、とても重要な制度です。この4週間について2回に分けてとることも可能です。また、労使協定を締結すれば、この期間中にテレワーク等で仕事をすることもできます。
2.休業の申し出期間が2週間前までに(2022年10月施行予定)
従来の育児休業は、1カ月前までに申し出をしなければならず、大変でしたが、2週間前に変更されたことで、休む期間中の仕事の段取りがつけやすくなります。
3.育児休業が2回に分けて取得できる(2022年10月施行予定)
従来は、一度しか育休が取得できませんでしたが、法律が施行後は2回に分けることが可能となります。出産時の育休と合わせると4回に分割でき、仕事に支障がないように短期間ずつ取ることもできます。
4.育児休業制度の周知や個別の取得意思の確認義務化(2022年4月施行)
配偶者の妊娠・出産を申し出た社員に対して、育児休業制度を説明し、周知し、さらに個別に取得するかどうかの意思を確認することが企業に義務付けられました。重要なことは、一人ひとりに対して「育児休業を取るかどうか」の確認をすることが義務となることです。
5.大企業の男性の育休取得率の公表の義務化(2023年4月施行)
従業員が、1001人以上の大企業では、男性の育休取得率を公表することを義務付けます。
男性の育休取得推進のメリット
男性の育休取得が進むと企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか?
1つ目は、男性社員自身が子どもと一緒にいられる時間を楽しむことができることです。会社に対する忠誠心やモチベーションアップにもつながります。
2つ目は、育休中は、育児休業給付金が支給され、社会保険料も免除されます。実質会社の負担はゼロで、その分、休業期間中に人を雇うことも可能です。
3つ目は、両立支援の助成金を受給することができます。
4つ目は、福利厚生が進んでいる、ワーク・ライフ・バランスが図られているということで、会社のイメージアップとなります。特に最近は、新卒者にとって育児休業が習得できる会社かどうかは、高い関心ごとになっていて(子どもの育児を楽しみたい)、優秀な人材を確保することができます。
法改正における注意すべきポイント
法律の施行に合わせて、制度の準備が必要となります。その時に気を付けるべきポイントをあげてみましょう。
- 労使協定を締結すれば、出生時育休中に就業すること(テレワーク等)は可能ですが、それはあくまでも本人が申し出た場合で、会社が強要することはできません。
- 制度の説明で、育児休業中に育児休業給付金が支給され、社会保険料は免除されますが、短期間の育休に関しては、「月内に2週間以上の育休を取得すること」が要件となります。
この箇所の説明は、丁寧にお願いします。後から社会保険料を払わされたとトラブルになることを避けることができます。
まとめ_一番重要なことは会社が育休を取得しやすい職場環境を作ること
男性の育休を推進させるために様々な内容で法改正が行われましたが、一番重要なことは、会社が育休を取得しやすい職場環境を作ることです。今まで男性社員が育休を取らなかった理由として「職場に迷惑がかかる」「職場風土が取得できる雰囲気ではない」というものが多数あげられました。そのため、会社としてはいくら制度を周知しても、長期の休みがとりづらい職場であれば、取得自体が難しいのが現状です。
職場風土を変えることは大変ですが、まずは社員全員の研修をして、育休に対する職場全体の認識を新たにすることをお勧めします。