新型コロナウイルスの新規感染者数は高止まり傾向となり、依然として厳しい状況が続きます。最近では子どもの間で感染が急拡大し、各地で休園・休校が相次ぐ事態に。企業においては、働く保護者の賃金補償として「小学校休業等対応助成金」の活用を進めると同時に、本助成金の適用対象外となる労働者への配慮にも目を向けていく必要があります。
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「小学校休業等対応助成金」とは?コロナ関連の休園・休校、子のコロナ罹患に伴う欠勤に特別休暇を
「小学校休業等対応助成金」についてはすでに報道等でご存知かと思いますが、今一度、概要を確認しておきましょう。「小学校休業等対応助成金」は、新型コロナ関連の休校や欠席等により、子どもの世話のために仕事を休まざるを得なくなった労働者に対し、有給の特別休暇を取得させた事業主に対する助成制度です。助成金の支給要件となる「有給の特別休暇」については、労基法第39条に定める年次有給休暇とは別途付与される必要があります。
小学校休業等対応助成金の活用事例
「小学校休業等対応助成金」は、以下のケースでの労働者への休暇取得支援・賃金補償に活用できます。
- 新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業等をした小学校等※に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇
- 新型コロナウイルス感染症に感染した又は風邪症状など感染したおそれのある、小学校等に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇
2020年中には、分散登校や短縮授業への対応にも活用されていました。
関連記事:『【新型コロナウイルス】小学校休業等対応助成金の短時間授業や勤務時間短縮時取り扱いQ&A、申請方法の動画をご紹介!』
休暇取得期間やまん防適用の有無等に応じて、日額上限額が変わります
「小学校休業等対応助成金」の支給額は「対象労働者の日額換算賃金額×有給休暇の日数」です。「日額換算賃金額」は、労基法上の休業手当ではなく、年次有給休暇取得時の賃金額を基準に設定しなければなりません。
支給額には以下の通り日額上限がありますが、設定した日額換算賃金額がこの上限を超える場合にも、事業主はその全額を労働者に支払う必要があります。
上図を見ると、2022年1月以降、日額上限額が減額となっていますが、申請の対象期間中に緊急事態宣言の対象区域又はまん延防止等重点措置を実施すべき区域であった地域に事業所のある企業については、上限が「1万5000円」となります。
年次有給休暇や欠勤を、事後に特別休暇に振り替えた場合も対象
「小学校休業等対応助成金」を申請できる場合において、労働者の休暇取得をすでに法定の年次有給休暇や欠勤として処理してしまった場合でも、事後的に本助成金の対象となる特別休暇に振り替えることで助成金申請が可能です。その場合には、「労働者に対して説明し、同意を得ること」と併せて、申請時に「振り替えた旨が分かる書類(給与明細等)を添付すること」が必要です。また、年次有給休暇として処理した日数の戻し、欠勤として処理した場合の欠勤控除額の返還等の実務上の処理を忘れずに行いましょう。
参考:厚生労働省「小学校休業等対応助成金のご案内」
コロナ禍で目を向けるべき、すべての労働者への配慮
働く保護者の両立支援に活用可能な「小学校休業等対応助成金」ですが、本助成金に関して、巷では賛否両論あるようです。確かに、保育園や幼稚園がコロナの影響で休園してしまった場合、保護者はその子を家に置いて働くことはできません。しがしながら、本助成金の適用を受けない労働者からは、「コロナに伴う学級閉鎖の場合、高学年であれば、本人がコロナに感染しているのでなければ留守番ができるのでは?」「出勤している者で必死に仕事の穴埋めをしているのに、有給で休むなんてずるい」「ただでさえ、子育て世代には給付金も出ているのに」等の声が挙がっていることも確かです。当然、企業側としては「助成金活用を進めたいが、労働者間の平等性に欠けることになるからできずにいる」といった意見もあるでしょう。「小学校休業等対応助成金」の活用が進まぬ背景には、現場における様々な事情が影響しているものと思われます。
私自身4人の子どもの母という立場から、誤解を恐れずに申し上げますが、コロナ禍においては、子どもを抱えて働く保護者だけが大変なのではありません。家族と同居している方も、お一人で暮らしている方も、すべてが例外なく、それぞれに大変な状況です。こうした事実に鑑みれば、企業においては助成金を活用して働く親の支援をすることと同じくらい、皆に平等に適用される補償制度の設計に目を向けることが肝心だと思います。労働者各人に心のゆとりが生まれれば、今よりももっと、お互いがそれぞれの状況を思いやれるようになるのではないでしょうか?そのためには、現場の不公平感をいかにして払拭するか、このあたりがポイントとなります。現場に応じて対応が異なるためここで詳細に解説することはできませんが、業務量や労働時間等の状況から、「誰に負担がかかっているか」に目を向けてみてください。
もちろん、こうした職場作りに着手する企業にとっては容易なことではありませんが、御社に合った制度設計は、労務管理の専門家である社会保険労務士がお手伝いいたします。各現場で労働者に寄り添った対応ができるようになれば、コロナをきっかけにより良い職場環境の実現につながるはずです。「コロナ禍で、何となく従業員間が上手くいっていないのではないか」とお悩みであれば、ぜひ一度ご相談ください。