2022年4月より安全運転管理者制度が改正され、安全運転管理者の業務に「アルコールチェック」が加わりました。これにより、現状、安全運転管理者選任事業者に対し、運転者の酒気帯びの有無について「目視等」での確認と一年間の記録保存が義務づけられています。2022年10月からはアルコール検知器使用の義務化が予定されていましたが、このたび、施行時期が延期となる見込みであることが分かりました。
目次
社用車の他、マイカーの業務使用でも5台以上なら選任すべき「安全運転管理者」
まずは、「安全運転管理者」の要件と、安全運転管理者選任事業者に課せられる義務について解説しましょう。安全運転管理者とは、一定台数以上の自動車を使用する事業所で選任義務のある管理者で、自動車の安全な運転に必要な業務に従事する者のことです。具体的に取り組むべきこととして、以下が挙げられます。
- 運転者に対して国家公安委員会が作成・公表する「交通安全教育指針」に従った安全運転教育
- 運転者の適性、知識、技能、道路交通法規の遵守状況の把握
- 自動車の運行計画の作成
- 異常気象時や災害時の安全確保に必要な指示や措置
- 運転者に対する健康チェックと日常点検整備の実施確認
- 運転日誌の備付
- 安全運転に関わる指導
- 長距離運転又は夜間運転となる場合、交代運転者の配置
- 運転前後の運転者の状況を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること及び酒気帯びの有無について記録し、1年間保存すること(2022年4月~)
安全運転管理者の選任基準
安全運転管理者は、乗車定員が11人以上の自動車にあっては1台、その他の自動車にあっては5台以上を使用している事業所ごとに1名を選任し、公安委員会に届け出ることになっています。自動車は社用車に限定されず、マイカーであっても業務使用する場合にはカウントされます。原動機付自転車を除く自動二輪車は、1台を0.5台として計算します。
参考:神奈川県警「安全運転管理者制度」
2022年10月から予定されていた「アルコール検知器使用義務」については当面適用なし
安全運転管理者が実施すべき業務は前項に挙げたとおりですが、これらに加え、2022年10月からは「運転者の酒気帯びの有無の確認を、アルコール検知器を用いて行うこと」「アルコール検知器を常時有効に保持すること」の義務化が予定されていました。
参考:警視庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う安全運転管理者業務の拡充について(通達)」
この点、2022年7月15日付でパブリックコメントに付された内閣府令案によると、「最近のアルコール検知器の供給状況等を踏まえ、当分の間、安全運転管理者に対するアルコール検知器の使用義務化に係る規定を適用しないこととすること」とあります。コロナ禍における半導体不足の影響は様々な分野に波及していますが、労務管理に及ぼす影響も決して小さなものではなさそうです。
参考:e-Govパブリックコメント「「道路交通法施行規則及び自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の施行に伴う道路交通法施行規則の規定の読替えに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令案」に対する意見の募集について」
安全運転管理者選任事業者においては、適用時期に関わらず、早めの対応を
今号で解説した通り、安全運転管理者に対するアルコール検知器の使用義務化は当面延期となりそうですが、道路交通安全に鑑みれば、準備が整った事業者では早期に実施を進められるのが理想です。従業員にハンドルを握らせる以上、会社には、事故防止に向けて取り組むべきことに目を向け、着実に対応する姿勢が求められることは言うまでもありません。今一度、会社としての取り組みを見直し、適切な対応を検討しましょう。