36協定の落とし穴「土曜出勤」に注意!あなたの会社は大丈夫?

36協定について、正しい理解ができていますでしょうか?
実務相談を通じて、「36協定の上限」に勘違いのある解釈をされている方がいると感じています。

特にそれは「土曜日出勤」に関してです。確認してみましょう。

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36協定上、土曜日出勤は休日出勤では無い!?

まずはイメージしやすいよう、次のような事例で考えてみましょう。

<X社>

1日の所定労働時間:8時間
休日:土日祝
36協定: 法定時間外労働 1日3時間以内、1か月45時間以内、1年360時間以内
法定休日労働は、1か月に3回まで

以上のような前提条件のケースです。
このX社で働くAさんのある月の所定勤務日数が22日で、8時間を超える時間外労働を毎日2時間行っていました(この月、祝日は無かったこととします)。

そうすると、1か月トータルの時間外労働は、2時間×22日=44時間
となり、36協定で定めた1日3時間以内も、1か月45時間以内も守り切れています。ここまでの話では、法的な問題点はありません。

* * *

 ところが実は、Aさんはこの月に1日だけ、土曜日に休日出勤をしていました。
 X社はこの点に関して、36協定で「法定休日労働は月3回まで」と届け出ています。ですのでこの休日出勤に対しても、法的問題は無いと考えていました。
 ところが、このX社の考え方は法的に誤っているのです。

というのも、36協定で「法定休日労働」として別枠で扱えるのは、
(1)就業規則で「毎週日曜日」など法定休日が特定されていればその日、
(2)就業規則で特段の定めがなければ、土日両方出勤した場合の日曜日など、
一定の条件を満たす場合の休日出勤に限られるのです。

 土日週休2日制の会社で、土曜日1日だけ出勤したという場合を考えてみましょう。36協定上は、「休日出勤を1日した」ということではなく「時間外労働を8時間行った」というカウントをしなければならないのです。
 ですから、上記のX社のAさんの場合は、平日に44時間の時間外労働を行い、さらに土曜日に8時間の時間外労働を行ったので、この月には合計52時間の時間外労働を行ったことになり、36協定で定められた時間外労働の上限をオーバーしてしまっているのです。

* * *

 このように一般的な会社では、土曜日に休日出勤した場合は、36協定上は休日労働扱いにはなりません。時間外労働の枠の時間数を消化することになるのだということを覚えておいてください。
 土曜出勤が45時間に含むなら、会社によっては45時間の枠を守るのが難しいと感じるかもしれません。
 45時間というのは、厚生労働省の通達で定められた上限時間なので、これを超える時間数で36協定を結ぶことは事実上難しいですから、テクニカルな部分も踏まえ、合法的な労務管理を行うための対策を行わなければなりません。

この点、具体的な対策は2つあります。

対策①:「代休」を活用せよ

 第1は、代休の活用です。
 土曜出勤を36協定の時間外労働枠に入れなければならないのは、1週間の労働時間が40時間を超えるからです(法定労働時間は1日8時間かつ1週40時間以内)。
 たとえば、土曜日に出勤するかわりに、同じ週の水曜日に代休を取得すればクリアです。平日の残業としてカウントされる時間数を除けば、1週間の労働時間は40時間以内に収まることとなります。土曜日出勤分を、36協定上の時間外労働として扱う必要がなくなるのです。
 ただ、ここで注意が必要です。就業規則で何も定めをしなかった場合、労働時間管理上の1週間の開始は日曜日となります。それゆえ「日曜日~土曜日」が1週間の区切りとなります。
 そうすると、週の最後の土曜日に休日出勤が発生したとしても、同じ週内で代休を取得することが物理的に不可能です。それゆえ、運よくその週に祝日があったり、たまたま有給や欠勤があったりした場合を除き、土曜出勤は36協定上の時間外労働にカウントされてしまいます。
 そこで、土曜出勤が多い会社にお勧めしたいのは、就業規則で、労働時間管理上の1週間の開始日を土曜日と定めることです。このような定めをしておけば、「土曜日~金曜日」が労務管理上の1週間となります。土曜日に休日出勤があったとしても、月曜日から金曜日のいずれかで事後的に代休をとれば良いこととなります。それにより、土曜出勤を36協定上の時間外労働として扱う必要はなくなります。

対策②:最終手段、特別条項の活用

 第2は、36協定の特別条項の活用です。
 土曜出勤の代休を取得するのが難しく、さらに平日の残業と土曜出勤を合わせると1か月の所定労働時間が45時間をどうしても超えてしまう場合は、特別条項を利用するしかありません。
 特別条項とは、36協定の余白などに記載をすることで特例が認められる制度です。たとえば「システムにトラブルが発生し、緊急の顧客対応が必要な場合は、1か月の時間外労働の上限を80時間以内とする」というような付記をすることで、36協定における原則的な時間外労働の上限枠を拡大できます。ただしこれは1年に6回までで、やむを得ない事情がある場合に限られます。

 とはいえ、特別条項はやむを得ない場合に例外的に利用するというのが法律上の趣旨です。特別条項があるから年6回までは月45時間を超えて良いと安易に考えるのは間違っています。経営者としては、常に社員の加重労働の防止やワークライフバランスを考えるべきでしょう。

まとめ - 合法な社内制度と仕組み作りを

今回は、36協定と土曜出勤の関係について説明をしました。36協定の上限をオーバーしていたという会社様は、まずは法的なテクニックも踏まえながらでも、合法な状態を作り出すことができるように社内制度や仕組み作りを進めてみてください
しかし、そこがゴールではありません。それが実現できたならば次のステップとして、社員にとって働きやすい会社をつくりため、効率化などにより残業自体の削減を進めていくことを目指して頂きたいものです。

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