法定の「安全衛生教育」、事務職に相応しい教育内容とは?

労働安全衛生法上、会社には従業員に対して所定の「安全衛生教育」を実施する義務があります。御社では、適切な教育を実施できているでしょうか?教育の内容や程度については業種や従事する業務によって様々ですが、デスクワーク中心の職場では「どのような教育を施せばよいのか」と頭を悩ませるケースは少なくありません。
今号では「事務職の安全衛生教育」をテーマに、実施頻度や内容を考えてみましょう。

事務職を対象に行うべき、「雇入れ時」「作業内容変更時」の安全衛生教育

安全衛生教育の目的は、労災事故防止を目的に、労働者に対し、安全・衛生に関して業務上必要な知識を習得させることにあります。法律上、事業者は、以下①~④の法定教育の確実な実施、及び⑤⑥に関する努力義務としての対応が求められています。

①雇い入れ時の教育
②作業内容変更時の教育
③特別の危険有害業務従事者への教育(特別教育)
④職長等への教育
⑤安全衛生管理者等に対する能力向上教育
⑥健康教育

これらの安全衛生教育のうち、事務職で行うべきは「①雇い入れ時の教育」「②作業内容変更時の教育」です。正社員や契約社員、パートタイマーといった雇用区分に関係なく、新たに雇い入れられた時、及び従事する作業内容に変更があった時に、確実に実施しなければなりません

事務職を対象とした安全衛生教育項目

安全衛生教育の内容は、以下の事項のうち、労働者が従事する業務に関する安全・衛生のため必要な事項とされています。

出典:厚生労働省「労働安全衛生関係の免許・資格・技能講習・特別教育など

労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる業種(以下「3号業種」)の事業場では、1~4の事項についての教育を省略し、5~8の事項に関わる教育を行えば良いとされています。「3号業種」とは、労働安全衛生法施行令第2条に定める1号、2号以外の「その他の業種」を指します。1号、2号、3号の各業種区分は以下の通りで、事務職については「その他の業種」に含まれるため、図中の赤囲みに関わる教育のみ実施できれば問題ありません

1号:林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業
2号:製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業
3号:その他の業種

一般的な「安全確保」及び「ヒヤリハット」をキーワードに、安全衛生教育内容を検討

これまで解説してきた通り、「事務職を対象とした安全衛生教育の内容」の大まかな柱に関しては、法律に定められています。それでは、その枠の中でどのようなことを伝えていくのが良いのでしょうか。このあたりが、多くの事業者にとっての迷いどころとなるでしょう。

「雇入れ時教育」の基本となる、「従業員の安全確保」に関わる説明

まずは一般的な内容として、従業員の安全確保に関わる教育が想定されます。

✓ 施設内の非常口の確認
✓ 電気・ガス等の設備・器具、備品等の取り扱いに関わる説明
✓ 火災等の事故発生時の対応

これらに関しては、さほど意識していなくても雇入れ時にひと通り説明をされているかもしれませんが、安全衛生教育の範囲となります。

ヒヤリハット事例を織り交ぜて、退屈になりがちな安全衛生教育をブラッシュアップ

併せて、「ヒヤリハット事例集」から職場において気を付けるべきことを検討し、安全衛生教育に盛り込むことで、教育を充実させる方法にも目を向けましょう。「ヒヤリハット」とは、「危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事象」のこと。事務職の場合、「災害」といってもあまりピンとこないかもしれませんが、日常の些細な動作にも大きな事故につながる恐れがあります。実際の職場環境と照らし合わせながらご確認ください。

参考:広島県「ヒヤリハット事例集 一般事務職場編

形骸化しがちな安全衛生教育を、意味あるものに!

法定の「安全衛生教育」は、ともすれば「形だけのもの」になりがちです。しかしながら、せっかく取り組むのであれば、従業員にとってしっかりと意味のある教育にできるのが理想ではないでしょうか。今一度、御社の安全衛生教育の内容を見直し、働く人が「なるほど」と思える様な教育内容を検討してみましょう。

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