【学校の働き方改革】非常勤講師に適用される無期転換ルールは適正な運用を

2013年4月より有期労働者に対する無期転換ルールが導入されて以来、全国各地で「無期転換逃れ」が問題視されています。こうした動きは教育業界においても例外ではなく、非常勤講師を抱える学校や学習塾等で無期転換直前の雇い止めに関わる労使紛争の発生が後を絶ちません。

本記事ではそんな「無期転換ルール」について詳しく解説します。

「無期転換ルール」とは?

そもそも「無期転換ルール」とはどのような制度なのでしょうか?
まずは大前提となる制度概要について、正しく理解しておきましょう。

無期転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
有期労働者の雇止めの不安の解消、処遇の改善を目的に、2013年4月に施行された改正労働契約法に盛り込まれました。

無期転換ルールの具体的なイメージ

どのような場合に無期転換申込権が発生するのかは、図で理解すると分かりやすいでしょう。

出典:厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト_事業主・人事労務担当者向け無期転換ルール

いずれも2013年4月1日以降に開始する有期労働契約が対象となるため、1年契約を主流とすると、5年後である2018年4月より順次、無期転換申込権が発生しています。

「無期転換逃れ」は労使紛争、そして学校等の経営危機の火種に

ところが、実際に無期転換ルールが適用される2018年4月以降、各地で「無期転換逃れ」の問題が浮き彫りとなっています。学校においても、契約期間が5年超となる直前に突然契約を切られるケースが各所で起こり、学校名の公表を伴う不当な雇い止めや解雇に関わる報道が見聞きされるようになりました。

無期転換逃れは、学校側と労働者側との争いの元となるだけでなく、ひとたび浮き彫りになれば学校等の信用にも関わる問題となります。
今後ますます進展する少子高齢化を鑑みれば、子どもやその保護者から「選ばれる学校」となれなければ、経営はますます厳しいものとなっていくでしょう。教員を使い捨てるような悪しきイメージのある学校は、まずふるい落とされることは言うまでもありません。

「無期転換ルール」にまつわる3つの誤解

現状、有期労働契約の非常勤講師を抱える学校では、今一度「無期転換」について対応を検討しておく必要があります。
なぜ巷には、これほどまでに無期転換を消極的に捉え、結果として雇い止めや解雇という暴挙に出るケースが多いのかといえば、その根底には「無期転換」に関わる誤解があるように感じられます。

◇ 無期転換にまつわる誤解その1.「無期転換後は正社員化しなければならない」

無期転換に関わる誤った認識として、労使共に最も多いのが「無期雇用=正社員化」の思い込みです。
無期雇用労働者とは、一概に正社員のことのみを指すのではありません。原則としてこれまでの雇用契約にあった「期間の定め」が撤廃されるだけであり、雇用形態を正社員とするか、もしくは無期労働者とするかは各校の規定によります。
この点、有期労働者とも正社員とも異なる「無期労働者」をどう位置付けるかといった問題はありますが、この機会に人事制度を整備し、人材確保や定着率の向上につなげていけることが理想です。

◇ 無期転換にまつわる誤解その2.「無期転換したら給料をアップしなければならない」

前述の通り、無期転換によって必ず変えなければならないことは「期間の定めをなくすこと」のみです。もちろん、長期雇用を前提に処遇改善を図るべきという考えもありますが、法対応としては賃金や雇用期間以外の待遇面まで変更する必要はありません。

無期転換権を持つ労働者が主体的に自身の働き方を選択していける様、まずは会社として「無期労働者」という雇用形態をしっかりと定め、周知することが大切です。

◇ 無期転換にまつわる誤解その3.「無期転換したら簡単に辞めさせることができない」

無期転換をすれば、有期雇用の時にあった「契約期間満了による退職」という選択肢がなくなるため、この点をネックと感じる現場も多いのではないでしょうか?とはいえ、学校は無期労働者を定年まで必ず雇用し続けなければならないわけではありません。「適正な手順を踏んだ正当な理由による解雇」が認められるケースもあります。

今一度、御校の就業規則にある「解雇事由」を見直しておきましょう。実際に解雇として扱う際には、就業規則上の規定、妥当性、手順を重視する必要があります。

参考:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール

もっとも、5年以上契約更新を続けている労働者が大きな問題を抱えているといったケースは稀であり、すでに御校の戦力として活躍されているものと想定されます。
万が一の際には、学校は適正な手段として解雇を検討することができるわけですから、「契約満了で辞めさせることができない」ことにばかり捉われるのは得策ではありません。
また、有期雇用である以上、学校はいつでも「優秀な人材の流出」というリスクを抱えることになることも忘れてはなりません。
雇用期間の撤廃は、深刻化する人手不足への対応策ともなり得るのです。

無期転換ルールを正しく知り、適正な運用を心がけていきましょう!

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