企業におけるパワハラ防止対策義務が閣議決定され、大企業では2020年4月から、中小企業では当面の間努力義務とされ、2022年4月を目途に義務化となる見込みです。こうした流れを受け、今後は学校でも例外なく、パワハラ対策を講じるべき流れとなってくることは言うまでもありません。
現場におけるパワハラ対策として、御校ではどのような対応をされているでしょうか?
「ハラスメント対策の強化」が法制化 学校ではどんな対応をすべき?
2019年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が参院本会議にて可決・成立し、職場のハラスメント対策の義務化が盛り込まれました。職場における「ハラスメント」というと代表格はパワハラですが、セクハラ、マタハラ等のあらゆるハラスメントが法律上「行ってはならないこと」とされ、事業主には防止に向けた具体的な取り組みをすることが義務づけられました。
「ハラスメント対策の強化」に関わる概要は、下記よりご確認いただけます。
出典:厚生労働省「第15回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」
現場では、事業主主導の元、社内体制の整備に取り組むことになります。
また、当然のことながら、ハラスメントに関わる相談をした労働者に対し、事業主は不利益取扱いをしてはならない旨も明記されています。
こちらは一般企業だけでなく、公立私立の別を問わず、学校においても同様の対応が求められると考えて良いでしょう。
より具体的な実務対応については、今後、厚生労働省から出される指針に示されるようです。
学校におけるパワハラ 具体事例
一般企業同様、教育現場においてもパワハラは深刻な労務課題です。
東京都公立学校教職員組合の調査によると、回答者の2割近くの教職員が「自分はパワハラを受けている」と感じているとのデータが明らかになっています。
参考:東京都公立学校教職員組合「東京の学校のパワハラ」
パワハラの特徴として「加害者側が無自覚な場合が多い」ことが挙げられますが、これは学校においても例外ではありません。パワハラは、意図せぬところで起きている可能性が非常に高いといえます。
例えば、御校でこのような事例は見受けられないでしょうか?
・児童・生徒の前で他の教員を強めに注意したり、大きな声で命令したりする
・一つの些細なミスを何度も非難する
・校務を進めるにあたり、担当者を無視して物事を進める
・終業時刻後にもかかわらず、家庭や通勤事情を考慮に入れず「もう帰るんだ」と言う
・困難な保護者の対応を「自己責任」として一個人でさせる
・教職員からの相談等を拒絶する
上記の行為は、悪意の有無にかかわらず、された側はパワハラと感じる可能性が高いといえます。
また、パワハラ対策は学校長のみが取り組むのでは意味がなく、すべての教職員がパワハラを正しく理解し、防止に取り組んでいくことが不可欠であることも忘れてはなりません。
参考にしたい、都道府県や市区町村の「学校版パワーハラスメント防止マニュアル」
学校におけるパワハラ防止策を考える上では、都道府県や市区町村が策定している指針や要項、事例集等が参考になります。
ただし現状、全ての自治体で要項等が策定されているわけではなく、またその内容の程度も様々ですので、具体的に検討を進める際には他の自治体が作成するマニュアルも含めて参考にされると良いと思います。
以下は、比較的詳細に書かれているマニュアルの一例です。
参考:
長野県「パワー・ハラスメント防止マニュアル~学校での根絶に向けて~」
富山県「富山県学校教職員 パワー・ハラスメント防止マニュアル」
働き方改革の一環として、今後、学校でも取り組んでいくべき教員のパワハラ防止対策。
パワハラが是正され、現場における働きやすさが実現することで、長時間労働や進まぬ有給消化等の労務課題にも改善が見られてくるのではないでしょうか?
「ウチの学校に限ってパワハラなんて・・・」という思い込みを捨て、教職員個々がパワハラを正しく知ること、そして学校長主導の元、現状把握・防止対策の徹底に努めることが求められます。