「SOGIハラ」を知る!ハラスメント防止措置の一環としてLGBTへの配慮を

「LGBT」というキーワードはここ数年でずいぶん一般的なものとなり、いわゆる性的マイノリティに対する理解が進んできているなと感じられる機会はぐんと増えたように思われます。しかしながら、実態として性的マイノリティへの無理解や差別的な見方が完全に取り払われたわけではありません。当事者が思い悩み、苦しまざるを得ない場面は、依然としてあらゆる空間に存在しますが、「職場」もまた例外ではありません。すでに義務化されているハラスメント防止措置と併せて、企業において必要な配慮を考えてみましょう。

ご存知ですか?職場におけるハラスメントの一類型「SOGIハラ」

企業における問題意識の高まりを背景に、ハラスメントの類型は年々確実に増えています。ハラスメントの典型といえばパワハラやマタハラですが、コロナ禍のテレワークに起因して広がったリモートハラスメント(リモハラ)や、タバコや香水の匂いによって生じるスメルハラスメント(スメハラ)等、今日では様々な形態のハラスメントを見聞きするようになっています。今号で解説する「SOGIハラ」もまた、職場で起こるハラスメントのひとつに数えられ、少しずつ知られるようになってきています。

SOGIハラ根絶を目指す有志「なくそう!SOGIハラ」実行委員会」は、「SOGIハラ」を以下のように説明しています。

好きになる人の性別(性的指向:Sexual Orientation)や自分がどの性別かという認識(性自認:Gender Identity)に関連して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせを受けること。また、望まない性別での学校生活・職場での強制異動、採用拒否や解雇など、差別を受けて社会生活上の不利益を被ること。 それらの悲惨なハラスメント・出来事全般を表す言葉です。

具体的に、個人の性的指向や性自認に関する侮辱的な言動、及び個人の性的指向や性自認について本人の意思に反して勝手に他人に暴露すること等が、SOGIハラの典型的な事例です

増加傾向にある、「SOGIハラ」による労災認定

近年、職場におけるSOGIハラ被害の当事者は、少しずつ声を上げ始めています。さかのぼれば2021年2月、性別変更した看護助手が精神障害を発症したケースでは、職場で変更前の性別で扱われ続けたSOGIハラが直接的原因であるとされ、大阪府の茨木労働基準監督署が(おそらく全国で初めて)労災認定しました。また、2021年9月14日にも、トランスジェンダーの女性が上司のSOGIハラによりうつ病を発症したとして、労災申請に踏み切っています。この他、2022年6月には性自認が女性の会社員に対し、上司が「彼」と男性的呼称で呼び、戸籍を性別変更しなければ女性と認められないという旨の発言をしたことで当該会社員がうつ病を発生し、労災認定されたことも記憶に新しいところです。

「SOGIハラ」対策は、義務化されたパワハラ防止措置の一環として取り組みましょう

2022年4月より、すべての企業においてパワハラ防止措置が義務化されています。このパワハラ防止措置の一環として、現場においては「SOGIハラ」にも適切に対応すべきことを忘れはなりません。パワハラ・セクハラ関連の政府指針には、「SOGIハラ(相手の性的指向や性自認に関する侮辱的な言動)」や「アウティング(労働者の性的指向・性自認などを本人の了解を得ずに暴露すること)」等の行為はパワハラに該当する旨が明記されています。また、労災認定時の評価基準項目「心理的負荷」における「精神的な攻撃」の事例に、「性的指向・性自認に関する侮辱的な言動」が挙げられていることも心得ておくべきです。

LGBTやSOGIハラといったテーマに関わる理解は未だ不十分。理解を深めることが、対応に向けた第一歩

LGBTやSOGIハラといったテーマに関わる理解は、ひと昔前と比較すれば少しずつ進んでいるものの、職場における理解は未だ不十分と言わざるを得ません。現場によっては「あまりピンとこない」「うちには関係ない」と感じられるテーマかもしれませんが、日本におけるLGBTの割合はおよそ10%という調査結果もあることから、人を雇用する企業においては適切な対応が求められます。事業主や労務管理担当者はもちろん、働く人々がSOGIハラに関わる知識を正しく持ち、理解を深めることが、対応に向けた第一歩となるでしょう。

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