教職員の働き過ぎやこれに起因する過労死は、かねてより教育現場の労務管理を検討する上で、目を背けることのできない重要課題となっています。現場ではすでに長時間労働の是正や業務量の適正管理に関わる取組みが進められているところではありますが、2021年度に改定が予定される過労死防止大綱素案において、「教職員」は依然として過労死発生の多い職種・業種に位置付けられ、さらなる対策強化が求められることとなりました。
目次
一貫して求められる「労働時間の適正管理」
職場における過労死防止対策の指針となる過労死防止大綱は、2015年の策定以来、3年に一度見直しが行われています。このたび、2021年に2度目の改定が予定されていることから、改定素案が公開されました。
「教職員」という働き方の特性を踏まえた対策を
教職員に必要な過労死防止に係る取り組みとして、過労死防止大綱には以下の通り言及があります。
✓ 教職員の長時間勤務是正に向けた取り組み
ICTの活用やタイムカード等による勤務時間の客観的な把握、業務の役割分担や適正化、必要な環境整備等
教職員の労働時間管理については、他業種に比べて特に遅れをみせている部分であるため、まずは労働時間を正しく把握することで労使双方が時間意識を持って業務遂行にあたることが不可欠と言えます。そのために、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」に則した勤怠管理の徹底が求められるというわけです。
業務の役割分担や適正化については、教職員の仕事内容の見直し、外部人材の活用等が挙げられます。併せて、ICT活用推進による業務改善が期待できます。
公立学校の教職員の働き方改革をさらに推進
また、このたびの改定素案では、これまでの過労死防止大綱において公務員の働き方改革に関わる言及が十分でなかったことが指摘されています。これを踏まえ、以下の通り方針が示されています。公立学校の教職員の働き方改革についても、今後さらに進んでいく見込みです。
・ 公務職場における多様な職種を踏まえ、縦割りではなくそれぞれに関わる関係省庁が連携して対策を講じる
・ 公務員において、勤務条件に関連する各法規についての改正や新規立法の検討を視野に入れる
過労死に係る問題意識について、教育活動を通じた啓発も推進
直接的な教職員の過労死防止対策とは異なりますが、今後は、学校教育の中で労働関係法令に関わる授業や講演会のさらなる実施が目指されます。過労死防止の観点では、国民一人ひとりが過労死等に対する理解を深めるとともにその防止の重要性を自覚し、関心と理解を深めることが重要であり、そのために若い頃からの啓発が不可欠であるからです。
また、こちらも教職員の過労死防止対策とは異なる話ですが、過労死防止大綱では、過労死で親を亡くした遺児や遺族をサポートしていくための相談窓口の拡充に言及しています。学校が相談窓口として対応しなければならないわけではありませんが、過労死問題の一環として、教職員が持っておくべき視点のひとつと言えそうです。
業種を問わず設けられた数値目標も意識
その他、過労死防止の観点から掲げられる数値目標は以下の通りです。
◎ 週労働時間40時間以上の雇用者のうち、
週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下(2025年まで)
◎ 労働者数30人以上の企業のうち、
・勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満(2025年まで)
・勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上(2025年まで)
特に、勤務間インターバル制度の導入率が低い中小企業への導入に向けた取組を推進
◎ 年次有給休暇の取得率を70%以上(2025年まで)
◎ メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上(2022年まで)
◎ 仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上(2022年まで)
◎ ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上(2022年まで)
参考:厚生労働省「第19回過労死等防止対策推進協議会資料」
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