3歳未満のお子さんを育てる従業員に適用したい、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」を解説

育児休業からの復帰後、仕事と育児の両立のために、働く時間をセーブする方も多いと思います。労働時間が減ってしまえばその分お給料も減り、これに伴い将来の年金額算定の基礎となる標準報酬月額も引き下げられることになりますが、このようなケースでぜひご活用いただきたいのが「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。

「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」とは?

「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」とは、3歳までのお子さんを育てる社会保険被保険者が、勤務時間短縮等の措置を受けて働き、それに伴って標準報酬月額が低下した場合、お子さんを養育する前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる措置です。養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないよう、被保険者の申出に基づき、より高い従前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして年金額が計算されます。

短時間勤務に伴い、随時改定により低下した標準報酬月額が決定された後に申し出

育休復帰後に時短勤務に切り替わった場合、多くのケースで固定的賃金に変動が生じます。この変動月からの3ヵ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合は随時改定の対象となり、この手続きによって変動月の4ヵ月目から標準報酬月額が変更されます。

関連:日本年金機構「随時改定(月額変更届)

随時改定による決定のタイミングで、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を年金事務所に提出することで、3歳未満の子の養育開始月から3歳到達日の翌日の月の前月までの間、以下の取扱いとすることができます。

◎ 支払う社会保険料は随時改定により低下した保険料額
◎ 年金額計算時には、従前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして計算

申請様式や添付書類は、以下よりご確認いただけます。

参考:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

養育開始月の前月に厚生年金保険の被保険者でなくなった場合も対象に

「従前の標準報酬月額」とは、養育開始月の前月の標準報酬月額を指します。ただし、子の養育を始める前に退職し、その後養育期間内に再び働き始めた場合も幅広く本措置の対象となります。この場合、子の養育を始めた月の前月より直近1年以内で、最後に被保険者であった月の標準報酬月額が従前標準報酬月額とされます。なお、養育開始月前1年以内に被保険者期間がない場合、みなし措置は受けられません。

申し出が遅れた場合にも2年間以内であれば遡って申請可能

今号で解説した「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」は、子育て中の労働者にはぜひ積極的にご活用いただきたい制度です。会社からアナウンスをして、労働者側から申請希望が出た場合は前向きにご対応いただきたいと思います。
「申請を忘れていた!」というケースでも、被保険者の申出があった日よりも前に養育期間がある場合には、養育期間のうち申出日が含まれる月の前月までの2年間について、さかのぼってこの措置が受けられます
申請は被保険者が事業主を経由して行いますが、申出時にすでに退職して被保険者資格を喪失していた場合は、被保険者であった方本人が直接年金事務所に申出をします。

既存制度を上手く活用して両立支援の拡充を!

子育て中の労働者にとってメリットの大きい「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」ですが、企業のご担当者様にお話しを伺う限り、現場で十分に活用されているとは言い難い現状が垣間見られます。企業における「仕事と子育ての両立支援」の必要性が叫ばれる一方、「人的にも財政的にも余力のない中小企業で対応は難しい」とのお声が聞こえることもしばしばですが、まずは使える制度をフル活用することに目を向けてみてはいかがでしょうか?社労士と共に、「無理なく行える両立支援策」を考えてまいりましょう!

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