短時間労働者の社会保険加入希望に、企業はどう対応する?

短時間労働者の社会保険適用拡大を2022年10月に控え、パート・アルバイトとの面談を通じて、今後の働き方に関わる意向聴取や労働契約内容の見直しを進めている現場も多いのではないでしょうか?社会保険加入を巡っては、「労働時間を減らしてでも、できれば加入したくない」という労働者がいる一方で、「契約の労働時間を伸ばしてでも加入させてほしい」という希望をお持ちの方も少なくありません。今号では、後者のパターンにおける、短時間労働者の社会保険加入希望への企業対応を考えてみましょう。

会社の社会保険適用拒否を巡り、パワハラ提訴へ

某大手寿司チェーンで、「社会保険適用拒否」というパワハラを受けたとして、勤続11年の現役従業員が会社と上司の二者を相手取り、訴訟を起こす意向であることが発覚しました。この会社が示す社会保険適用要件は「週20時間以上の勤務」等であり、従業員は入社当初から「勤務時間を延ばして社会保険に加入させてほしい」と会社に伝えていたとのこと。採用サイトには「希望すれば社会保険に加入できる」と明記され、同種の業務に従事する他のパート従業員の大半は社会保険に加入していた実態があったそうです。上司からは「社会保険には“枠”があり、今それが一杯だからあなたを加入させることはできない」と説明されましたが、労務担当の部署からはそのような“枠”の設定はないと言われたとのことです。

社会保険適用拒否はパワハラ?

本件について、細々とした事情に不明な点は残るものの、従業員の社会保険適用拒否がパワハラと判断される可能性は大いにあります。例えば、以下のような背景の場合、前述の従業員が「パワハラを受けた」と考えても無理はないでしょう。

  • この従業員の所定労働時間が「週20時間以上」の基準にわずかに満たない状況
  • この従業員の勤務時間延長(及び社会保険加入)の希望を拒否する理由を会社が説明していない(もしくは特段の理由がなく拒否している)
  • 当初、この従業員と同様の労働契約で雇い入れられたパート従業員の大半が労働時間を延長し、社会保険に加入している

一方で、以下の場合、パワハラの有無に関わる判断はまた変わってくるのではないでしょうか?

  • この従業員の所定労働時間が、そもそも「週20時間」を大幅に下回っている
  • この従業員の勤務時間延長(及び社会保険加入)の希望を拒否する理由を、都度会社が説明しているが本人が納得しない(会社には勤務時間延長の希望を拒否する理由がある)

この従業員は「勤務時間を延長して社会保険に加入したい」とおっしゃっているので、おそらく週20時間未満の労働時間で雇用契約を締結していたであろうことが予測されます。従業員が社会保険に加入するとなれば保険料は労使折半となりますし、そのために労働時間を延長するとなると他の従業員の勤務との兼ね合いもあります。雇用管理上、特定の従業員の労働時間の延長に会社が慎重になることは何ら不思議ではありません。

このように、社会保険適用拒否がパワハラとなる可能性はあるものの、実際のところは事の詳細によると言わざるを得ません。今後、訴訟が提起されてからの展開に注目したいところです。

短時間労働者から社会保険加入の希望が出た時の対応法

それでは、実際に短時間労働者から労働時間延長・社会保険加入の希望が出された時、会社ではどのように対応すべきでしょうか。

まずは会社の雇用管理上、それが可能かどうかを十分に検討

まずは会社の雇用管理上、それが可能かどうかを十分に検討しましょう。労働時間を延長するだけの仕事が見込まれるのか、他の従業員との兼ね合いはどうか、採用計画や人件費予算に鑑みて問題ないか等、経営上の観点から考えます。併せて、その従業員の勤務態度や仕事ぶりと照らし合わせ、労働時間の延長や社会保険加入の適正性を検討しましょう。

会社としての方針を決めたら、従業員に対して丁寧に説明を行います。労働時間の延長・社会保険加入に対応できるのであれば、延長後の労働時間や社会保険適用を明記した労働条件通知書を改めて交付します。労働時間を延長することで業務内容・量が変わるのなら、それらについても労使双方で確認します。

難しい場合は、なぜそのような判断になったのかを十分に説明

一方で、労働時間の延長・社会保険加入の希望に応えることが難しい場合は、なぜそのような判断になったのかを十分に説明しましょう。「社会保険に加入して働きたい」という従業員であれば、少なくとも「この会社で腰を据えて働きたい」という気持ちを持っています。だからこそ、基本的には従業員の意向に沿えることが理想ですが、会社としてやむを得ないケースもあるでしょう。会社の雇用管理上の問題であれ、本人の仕事ぶりに起因する事柄であれ、従業員には希望に沿えない理由を誠実に伝えましょう。誤っても「社会保険には“枠”があるから」等という適当な説明をしてはいけません。

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