【公務員も副業解禁!】どうする?副業・兼業をする社員の労務管理

多様な働き方が目指される働き方改革において、ひと昔前まではご法度だった「副業・兼業」の在り方が見直されつつあります。先日ニュースになった「公務員の副業解禁」の話題に、驚かれた方も多いのではないでしょうか?

参考:日本経済新聞「神戸市、職員の副業推進

副業・兼業という新たな働き方を認める上で、まず必要なのが「体制整備」です。今号では、労務管理の観点から、副業・兼業容認に伴うルール作りを考えてみましょう。

副業・兼業を認める会社が、まず検討すべき3つの柱

副業・兼業に伴う社内ルールを確立する上では、厚生労働省が示す「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が参考になります。ここでは、副業・兼業容認企業が着目すべき具体的な観点を3つ抜粋し、下記に挙げておきます。

✓ 申請フローの確立
労働時間の長時間化や企業秩序への影響を考慮し、あらかじめ副業・兼業の内容の届け出をさせる

✓ 就労・健康の状況把握
総労働時間の把握、必要に応じた健康診断の実施、時間外・休日労働の免除や抑制等に配慮する

✓ 禁止事項の周知徹底
労働者の職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を徹底するため、就業規則の改訂、副業・兼業の関わる規程作成をし、周知する

参照 : 厚生労働省「副業・兼業の推進に関するガイドライン

副業・兼業については、現状、原則禁止とする会社が大半だと思います。副業・兼業によって、社員が本業に支障をきたすようでは困りますし、社員を別会社で働かせることで「情報漏洩」や「競業・利益相反」などのリスクを抱えることにもなりかねません。また、社員の健康管理や労働時間の把握も困難になるでしょう。

一方で、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的に労働者の自由」という考え方もあります。そういった意味では、本業となる会社業務に対し適切に労務提供でき、企業秘密の漏えい、名誉・信頼の失墜を招くなどの問題行為がない以上は、労働者の自由な意思による副業・兼業は認められるべきです。働き方改革の一環として、今後、会社はあらゆるリスクを十分に考慮した上で、労使双方が納得できるルール、枠組みの範囲で副業・兼業を許容する体制を作り上げることが求められます

副業・兼業における社内ルール作りについては、下記からも参考になる資料を入手できます。

参考:厚生労働省「副業・兼業

副業・兼業をする社員の「健康保険・厚生年金保険」はどうなる?

社員の労務管理を考える上で、社会保険関係の手続きについては欠かすことのできない話題です。ここでは、基本的な考え方をご紹介しておきましょう。
健康保険・厚生年金保険については、以下の加入要件を満たす限り、加入義務が生じます。

出典:日本年金機構「社会保険の加入についてのご案内

すでにご存じの通り、平成28年10月からは上記に加え、下記のすべての条件に当てはまる場合には被保険者として取り扱われるようになりました。

1.所定労働時間が週20時間超
2.月給が8万8000円(年収106万円)以上
3.1年以上継続して適用事務所に勤務している(もしくは勤務する見込みがある)
4.学生以外
5.社会保険の対象となる従業員規模が501人以上の事業所に勤務

副業に伴い、2ヵ所以上の事業所で健康保険・厚生年金保険の加入要件を満たした場合には、それぞれの事業所において加入手続きをする必要があります。その際、被保険者本人に「健康保険・厚生年金保険二被保険者以上事業所勤務届」を届け出てもらうことで、どちらの事業所で保険関係の手続きをするのか、どちらの保険者で保険証を発行するのかが決定します(選択・非選択事業所の記入)。選択事業所とされた事業所では、今後、この被保険者に関わる事務を行うことになります。

保険料は、両方の事業所から得た収入から被保険者の標準報酬月額が決定されます。各社は、それぞれの給与額に応じた保険料負担をしていくことになります。各社の具体的な保険料負担については、「健康保険・厚生年金保険二被保険者以上事業所勤務届」の提出後、年金事務所が算定したそれぞれの保険料額が各社に通知されるので、この通知に従って天引きをしていくことになります。

参考:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き

雇用保険は「主たる賃金を受ける事業所」のみで加入

雇用保険は、原則、下記「1」「2」のいずれにも該当する場合に加入義務が生じます。

1.31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。
具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。

 ○ 期間の定めがなく雇用される場合
 ○ 雇用期間が31日以上である場合
 ○ 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
 ○ 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 (※)
※当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。

2.1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。

出典:厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!

ただし、雇用保険は健康保険・厚生年金保険と異なり、複数の事業所で加入要件を満たす場合にも、加入手続きをするのは「一つの会社でのみ」です。具体的には、「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社」で加入することになります。

副業・兼業社員の長時間労働対策に「適正な勤怠管理」は不可欠

副業・兼業を考える上では、社員個々のオーバーワークに配慮する必要があります。そのために必要なのが「労働時間の適正把握」です。会社での労働時間はもちろん、ヒアリング等によってダブルワークとしてどの程度働いているのかも正しく把握し、必要に応じて「時間外・休日労働の免除や抑制」「健康診断の実施」「健康相談窓口の開設」等を検討します。

基本の勤怠管理には、無料のクラウド勤怠管理システムIEYASUをご活用ください!

「副業・兼業を認めると、対応すべきことが増えて大変だな」と感じられるかもしれません。しかしながら、多様な働き方を許容することで労働者にとっての働きやすさを実現でき、今後本格化する人手不足時代においては「人材確保」のカギとなることでしょう。とはいえ、すべての事業所において、副業・兼業に対応ができるかといえば、未だそうとは言えない側面もあります。今号でご紹介した情報を参考に、御社の可能性をご検討いただければと思います。

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