緊急事態宣言発出の対象地域が広がり、新型コロナウイルス感染症への警戒レベルがますます高まっています。企業がそれぞれに難しい局面に立たされる中、かねてより新設が予定されていた「トライアル雇用助成金(新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース助成金)」「産業雇用安定助成金」がパブリックコメントに付されており、その概要が明らかになっています。
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人手不足企業の雇用に役立つ「トライアル雇用助成金」
企業業績に直接的な影響を与える要因となった、新型コロナウイルス感染症。報道等では経営危機や倒産といったニュースが目立つものの、一方で業種によっては人手不足に転じる現場も少なくありません。こうした背景を受け、政府はいわゆる「コロナ離職」の労働者を積極的に人手不足企業の雇用につなげていけるよう、「トライアル雇用助成金(新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース助成金)」を新設する予定です。
トライアル雇用助成金(新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース助成金の概要
当分の間、「所定労働時間週30時間以上」又は「所定労働時間が週20時間以上30時間未満」の短時間常用雇用への移行を目的に、対象労働者を試行雇用する事業主に対する助成金
○ 対象労働者
2020年1月24日以降に新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされた者であって、離職期間が3ヵ月を超え、かつ、就労経験のない職業に就くことを希望する者
○ 助成額
・ 所定労働時間週 30時間以上の常用雇用への移行を目的とした場合
⇒ 対象者一人当たり 4万円/月(最大3ヵ月)
・ 所定労働時間週20時間以上30時間未満の短時間常用雇用への移行を目的とした場合
⇒ 対象者一人当たり 2万5000円/月(最大3ヵ月)
具体的な制度については、おそらく職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者を対象とした既存のトライアル雇用助成金制度がベースとなるものと思われます。ルールに則った雇入れが不可欠となりますので、活用を検討されている企業では、制度詳細が公開されてからの取り組むようにしましょう。
出向元・出向先双方に対する助成「産業雇用安定助成金」
新型コロナウイルス感染症の影響による企業の雇用問題解決に、政府は「雇用シェア」を推奨しています。「雇用シェア」というとなかなかピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが、いわゆる在籍型出向のことです。新型コロナウイルス感染拡大の影響で雇用維持が難しくなった企業の労働者を、人手不足企業に一時的に出向させることで、出向元・出向先双方にメリットが期待できます。「産業雇用安定助成金」は、まさに企業間の雇用シェア促進のために創設される助成金です。
産業雇用安定助成金の概要
新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由により、急激に事業活動の縮小を余儀なくされ、労働者の雇用を出向により維持するため、労働者を送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して、一定期間の助成を行うものとする。
○ 具体的な内容
・ 労働者(雇用保険被保険者)を出向により送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して、賃金、教育訓練、労務管理に関する調整経費等、出向中に要する経費の一部を助成する。
⇒ 出向元が労働者の解雇等を行っていない場合・・・中小企業 9/10、大企業 3/4
⇒ 出向元が労働者の解雇等を行っている場合 ・・・中小企業 4/5、 大企業 2/3
※ 上限日額 1万2000円
・ 労働者(雇用保険被保険者)を出向により送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して、就業規則や出向契約書の整備費用、出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先が出向者を受け入れるために用意する機器や備品等、出向に要する初期費用を助成する。
⇒ 出向元・出向先それぞれの事業主に対し、対象労働者1人につき10万円(定額)
※ 出向元・出向先が以下の要件に該当する場合、対象労働者1人につき5万円加算(定額)
・ 出向元事業主:事業活動の縮小規模が一定の基準を上回る事業主であること
・ 出向先事業主:出向労働者を異業種から受け入れた事業主であること
企業に対する雇用シェア促進支援は、全国47都道府県の県庁所在地に設置されている産業雇用安定センターにて無料で行われています。コロナ禍で雇用問題を抱える現場は、助成金活用を含め、相談されてみることをお勧めします。
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出典:パブリックコメント「雇用保険法律施行規則及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案に関する意見の募集について」
コロナ禍で雇用維持が困難な企業も、一方で人手不足に悩む企業も、助成金を上手く活用し、この苦境を乗り越えましょう!