「カスハラ」とは?企業では、パワハラ防止対策の一環として対応強化を

東京都における全国初の「カスハラ」防止条例制定に向けた取り組みを背景に、報道等で「カスハラ」のキーワードを耳にする機会がぐんと増えています。企業においては、すでにパワハラ防止措置の一環として何らかのカスハラ対策を講じているところかとは思いますが、今一度、「カスハラとは?」を正しく理解し、現場に必要な取り組みに目を向けてまいりましょう。

「カスハラ」の定義を知る

「カスハラ」とは、「カスタマーハラスメント」の略であり、主に顧客等からの著しい迷惑行為を指します。典型としては、「顧客」という優位的地位を利用し、理不尽なクレームを執拗に突きつけるような例が挙げられ、別の言葉では「悪質クレーマー」とも言い換えられます。なお、ここでいう「顧客」とは、「一般客」以外にも「親会社」「発注元」等、企業間取引に起因する関係性も広く含まれます。カスハラは労働者の就業環境を害す行為であると共に、労働者に精神的苦痛を与える悪質な行為です。

企業におけるカスハラは、過去3年間で増加傾向

厚生労働省が2024年5月17日に公表した「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書によると、過去3年間の各種ハラスメントの相談件数について、概ねどのハラスメントでも「件数は減少している」割合の方が高いことが分かります。ところが、唯一「顧客等からの著しい迷惑行為」についてのみ、「件数が増加している」割合の方が、「件数は減少している」割合よりも高くなっています。

出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査_報告書本体

日本においては古くから「お客様は神様」「顧客第一主義」の考え方が根付いていることもあってか、「顧客」という優位性を利用したハラスメントは後を絶ちません。

「カスハラ」対策は企業の責任です

企業においては、「労働者をハラスメントから守る」という観点から、企業はカスハラ対策を講じていく必要があります。というのも、2020年6月のパワハラ防止措置義務化は記憶に新しいかとおもいますが、これに伴い政府が公開したパワハラ防止指針には「顧客等からの著しい迷惑行為により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組」が明記されているからです。現状、未対応の現場では、取り組むべきことを検討しましょう。

参考:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】

厚生労働省公開のカスハラ対策企業マニュアルは必読!

企業におけるカスハラ対策を考える上では、厚生労働省が企業向けに公開するマニュアルが参考になります。カスハラとなり得る顧客からの行為の実例や、現場における具体的対応等が詳しく解説されています。
ここでは、実務対応上特に難しい、カスハラの判断基準について、マニュアルの内容をまとめておきましょう。

○ 顧客等の行為への対応方法は、業種や業態、企業文化等によって異なり、カスハラの判断基準にも企業ごとに違いが出てくる
⇒ 各現場でカスハラの判断基準を明確化し、企業内の考え方、対応方針を統一して現場と共有しておくことが重要

○ カスハラを判断する尺度となり得るのは、以下、①②の観点からの検討
① 顧客等の要求内容に妥当性はあるか

  • 事実関係、因果関係の確認
  • 顧客の要求に根拠があり主張が妥当であるか、自社の過失の有無を検討

② 要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らし合わせて相当な範囲であるか

  • 顧客対応に起因する業務遂行上の支障の程度
  • 顧客の言動に関わる、暴力的、威圧的、継続的、拘束的、差別的、性的な要素の程度

実際にあった顧客対応事例を元に、上記の観点から対応方針を検討し、同様のケースに備えてマニュアル化を進めておけると良いでしょう。その他、取引先との関係性におけるカスハラ対応についても、マニュアルで理解を深め、対策を考えましょう。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル

カスハラは、働く人の心を蝕む他、現場における業務上の支障とこれに伴うその他の顧客へのサービスの質の低下、金銭的損失等、企業にあらゆる悪影響を及ぼします。カスハラ防止策を通じて、従業員が明るく活き活きと働ける職場、お客様が気持ち良くサービスを受けられる環境作りにつなげてまいりましょう!

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事