2021年度地域別最低賃金が大幅引き上げへ!全国一律で「+28円」、引き上げ率「3.1%」

すでに報道等でご存知の方も多いかと思いますが、2021年度は地域別最低賃金が全国的に大幅引き上げの見通しとなっています。今秋の最低賃金引き上げに伴い、現場によっては、従業員の賃金額見直し等を進める必要がありますのでご注意ください。

速報!2021年度地域別最低賃金改定額の見通し

各都道府県の最低賃金額は、毎年10月上旬を目安に改定されます。2021年10月以降、順次適用される新しい最低賃金額の目安が、7月16日に開催された第61回中央最低賃金審議会にて示されました。資料によると、今年は「全国一律で28円の大幅引き上げ」の見込みとのこと。最低賃金については例年、都道府県の経済実態に応じて分けられたABCDの4ランクごとに引き上げ額の目安が提示されていますが、2021年度はいずれのランクでも同額引き上げの方針が示されました。

参考:厚生労働省「令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について

最低賃金は全国で800円以上に

最終的な最低賃金改定額は、今後、各地方最低賃金審議会での調査審議、答申を経て、各都道府県労働局長により決定されます。今号でお知らせした中央最低賃金審議会での答申の通り、「全国一律28円の引き上げ」となった場合、最低賃金の全国平均額は「930円」、いずれの都道府県においても最低賃金800円以上となります。最低賃金が最も高額となる東京では「1041円」に改定されることになり、特に今般の新型コロナウイルス感染拡大により打撃を受ける現場においては対応に苦慮することとなりそうです。

業務改善助成金について、要件緩和・拡充措置が講じられる可能性

最低賃金の改定に伴い、事業場内の賃金を見直す際には「業務改善助成金」を活用できます。業務改善助成金は、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される助成金です。「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告」には、今回の最低賃金大幅引き上げに伴い、業務改善助成金の特例的な要件緩和・拡充を早急に行うべき旨を、公益委員会から政府に対し強く要望すると記載されています。

秋以降、最低賃金を下回る従業員はいませんか?

10月以降の最低賃金引き上げに向け、各現場においては必要な準備を進めていくことになります。ひと口に「準備」といっても、人員配置や雇用計画に関わる見直しや生産性向上に向けた取り組み等、様々想定されますが、とりわけ急務となるのが「従業員の賃金額の確認」です。現状の最低賃金を基準に賃金額を設定している場合、28円の引き上げによって、最低賃金を下回る従業員が生じる可能性が高いと言えます

「最低賃金以上か?以下か?」の確認方法について、日給制や月給制の場合の時給換算方法については以前の記事で解説していますので、ご一読ください。この他、固定残業代を採用している場合にも見直しが必要となりますのでご注意ください。判断に迷われる場合は、社会保険労務士にご相談いただくのが得策です。

最低賃金引上げに対応せず、書類送検となった事例も

最低賃金は、老若男女、雇用区分の別を問わず、働くすべての人に例外なく適用されるものです。過去には、「労働者のほとんどが高齢者のため、最低賃金を引き上げなくても良いと思った」という理由から、最低賃金の引き上げを怠り書類送検となった事例もあります。

参考:労働新聞社『「高齢者だから良いと思った」 最低賃金引上げに対応せず書類送検 堺労基署

とりわけ、2020年4月1日以降に発生した賃金請求権の消滅時効期間が「2年」から「3年」に延長されていること、さらに現行の「3年」の消滅時効は経過措置であり原則「5年」であることに鑑みれば、企業において将来に向けた未払賃金の発生には特に慎重になるべきと言えます。

秋以降、大幅引き上げとなる地域別最低賃金への対応に向け、各現場で準備を進めましょう!

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